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ユキコPSC事務所 ~俺の同居人は可憐なアサシン~  作者: サトルン


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9/9

第8章 闘争と 母性と

初めて長編連載に挑戦します。


◆SF/現代ドラマ/少しハードボイルド

◆未来から来たアサシン × 古物商の男

◆非日常と日常のギャップ

◆戦闘力MAXの女 × 庶民的な男

◆“救われない未来”から漂着した女が、生まれ直す物語


今回は前章の戦闘シーンを受けて、

ヨシヒコの心が静かに波立ちます。


日常の中で見せるユキコの穏やかな一面に、

ほっとする一方で、

彼女の中に

穏やかさと熾烈さが同時に存在している

その危うさにも、

少しずつ気づき始めます。


どうぞよろしくお願いします。

軽い気持ちで昨夜はユキコと食事を楽しもうとしただけだった。

だがあんなことになるとは思わなかった。

ユキコが3人の悪漢をあっという間に沈黙させた。

その時見たユキコは冷徹な機械のような狂いのない素早い動き。

俺は呆けて見ていただけだったが訓練された戦闘員だということは

今回はっきりとわかった。

あの動きはただの格闘家の動きではない。

スポーツの感覚は全くない。

対象を倒すためだけに訓練された冷たい戦闘だった。

少なくても俺にはそう見えた。それを思い起こし

身震いしながらユキコを見た。


「ユキコ。もう。あんなことはやめてくれ。」


俺はマンションに戻ったあとではっきりとユキコに言った。


「・・・・ごめんなさい。言いたいことはわかっているつもり。

 だけど。助けを求める声が聞こえてしまった。

 気が付いた時は体が動いていた。」


 ユキコが項垂れながら目を伏せていた。


俺はその様子をみてちょっと彼女が可哀そうになった。

彼女のとった行動自体はなにも悪くない。

むしろ人助けをしているんだ。


 しかし‥‥あぁ。

 これではユキコのために言っているのか

 自分の保身のために言ってるのか

 ちょっと自分でもわからなくなり苦虫をつぶしたような顔をした。


「・・・・ユキコ。

 今日はもう休もうか。お風呂に入ってスッキリしてね。」


 俺は優しく笑いかけて言った。


ユキコの項垂れた肩を軽くさすって

立つように促してバスルームに押していった。


「俺は今日の仕事の整理が残ってるから。先に寝ていて。」

「ええ。ありがとう。ヨシヒコ。」

そう言ってユキコは笑顔で

小さく手を振ってくれた。


そのユキコの笑顔を確かめると

おれは脱衣場のカーテンを閉めて

自分の仕事部屋に向かった。



その次の日は休日。

朝。起きてダイニングに向かうとユキコがベーコンエッグを作っていた。

「ヨシヒコ。

 おはよう。パンも焼けるから。すわって。」


彼女の料理のレパートリーは徐々に増え始めていた。


朝はここのところユキコがお決まりメニューの

ベーコンエッグとトーストを二人分用意してくれている。

頼んだわけじゃないけどユキコは

レンジの使い方やコンロの使い方を覚え

朝食の支度はユキコがほとんどやっている。

「お湯は若し直す?」

ユキコが言った。

「うん。お願い」

俺が言うとユキコは電気ケトルの電源を入れる。

俺はそれを確認すると


ベーコンエッグを作っているユキコの隣に立ちながら

いつものルーティーンを始める。


棚からドリップとフラスコを取り出し。

ペーパーをドリッパーにセットして

その上からミルでコーヒー豆を挽く。

ガリガリッと軽い音がキッチンに響く。

いつもの朝の音。


ユキコは皿を出してベーコンエッグをのせた。

焼きあがったトーストに今日はママレードジャムをのせ。

カウンターテーブルにそれらを用意した。


ユキコのその様子を見ながら沸いた湯をドリッパーにゆっくりと

お湯を注ぎ込む。

湯気を嗅ぎながらコーヒーの豊潤な香りを堪能する。

湯気の向こうには

その顔をみて向こうにいたユキコが微笑んだ。

いつも俺がこの顔をするのが可笑しいらしい。


俺は構わず香りの堪能を続けながら

マグカップにフラスコの液体を注ぎ込んだ。

今日もいつもの儀式が終わりゆくコポコポという軽やかな音がする。

俺はマグカップをもう一つ出し次はインスタントのコーンスープを用意した。

コーンスープのマグを座ってるユキコの右側に置く

俺ははす向かいの椅子に座り

手を合わせる。

ユキコもそれに合わせて手を合わせた。

「いただきます。」

二人で同時に言って朝食をはじめる。


「・・・・昨夜のこと」

俺が言うとユキコはピクリと肩をすぼめた。

その様子を見て俺は頬を緩める

「怒ってない。でも。行動する前に考えてほしい。

 俺のためじゃなく。ユキコ自身のために。

 どうしても行動したかったら。一度俺の顔をみてくれ。

 それだけでも安心するから。」


「ええ。そうする。ヨシヒコの顔をみるのね」

「そうそう。落ち着くだろ?」

「そうね。たぶん」


俺は頷いて食事を続けた。

ユキコもトーストにかぶりついていた。


朝食のあと

食材や生活用品の減りが目についたので

二人でスーパーに行くことにした。

マンションの通りを国道とは反対側に行く

道沿いに面した少し大きなスーパーだ。

駐車場もあって結構大きい。

 ちょっと早い時間だったので客はまばらだ。

毎日が特売日。

曜日ごとに何かが特売になっている。

今日はたまご、バナナ、パンの日だ。

パンは消費が多いのでこの日に買うようにしている。

そして野菜も切れかけていた。

特売日ではないがここのスーパーはもともと安いのであまり気にならない。


二人で一回りしながら買い物をしていく。

生鮮コーナーで魚や肉を見て食べたいものを吟味していく。

「今夜はサーモンのソテーがいいか?」

「それいいわ。」

好き嫌いがないのは助かる。

カゴがある程度うまったころ

ユキコが俺の袖を引っ張った。

「なに?」

ユキコが俺の顔をみて目配せした。

その方を見るとそこに小さな女の子。

生鮮コーナーとお菓子の棚をいったり来たりしながら何かを探してるような素振りだった。小さな子供が一人でウロウロしている。そんな様子は大抵は迷子。

ユキコはそれに気が付いたようだ。

「小さい子よ。一人なのは変でしょ?」

「迷子だな。」

俺たちは女の子のところに近寄った。

スッと近寄ったユキコは屈んで女の子に声をかけた。

「どうしたの?お母さんは?」

その声は優しく穏やかで笑顔で女の子を見つめていた。

「探しているのおかあさんを」

たどたどしくはあったがしっかりした物言いだ。

「はぐれたの?」

「お菓子を取りに行ってたらいなくなっちゃった。」

「お母さんに声をかけた?

 お菓子を取りに行くって?」

ユキコがそう聞くと

女の子は首を横に二回振った。

「おかあさん。

 あなたが付いてきてると思って先に行ってしまったのね。」

あらら。最悪だ。完全にはぐれてしまったようだ。

「どこらへんではぐれたの?お肉売り場のあたり?」

ユキコがそう聞くと女の子は小さく頷く

そして、どうやら自分が迷子になったことを覚ったようだ。

だんだんと表情の雲行きが怪しくなってきた。

「お名前。おしえてくれる?」

ユキコが女の子に優しく問いただす。

「メイ。」

「メイちゃんか。良いお名前ね

 いっしょにお母さんを待とうか。」

ユキコはどうやら子供の扱いに慣れているようだ。

落ち付いた声で困惑する様子もなく

終始柔らかく微笑みながら女の子に話しかけていた。

俺はどちらかと言えば小さな子供は苦手だ。

話しかけることすらやりたくない方だ。

必然的にユキコに任せるように控えていた。

俺はユキコがしたいようにさせることにした。

余計なことを言ったりしたりして

女の子が泣き始めることの方が心配だった。

女の子が急に俺の顔を見た。

俺の顔を見て少し驚いた顔をして顔を曇らせた。

(うわぁ~泣かんでくれよぉ~。)

顔は平常心を装い心の中でそう祈った。

「この人は私のお友達。いっしょにお母さん来るまで待っててくれるって。」

ユキコはそう言うと俺に目配せをする。

相槌を打つことにする。

女の子の話を聞く限り親は付いてきていると思い先に行ったようだ。

ユキコの言うようにはぐれ始めたところで一緒に待つ方が安全だ。

親が子供がはぐれたことに気が付いて探しに戻る可能性がある。

しばらくすると約一名の女性が血相を変えてこちらに駆け寄ってくる。

「メイ~っ!もう。ちゃんとついてこなきゃダメでしょ。あらぁすみません。

 うちの子を見てもらって。」

女の子はここで、初めて泣き始めた。安心したのだろう。お母さんにしがみついていた。

「ほら。メイ。お姉さんたちにちゃんとお礼を言いなさい。」

母親が女の子を俺たちに向かわせながらそう言った。

「・・・・おねぇちゃん。お兄ちゃん。ありがとうございます。」

「よかったねぇ。メイちゃん。じゃぁね。」

小さく手を振った。

俺も合わせて手を振る。

母親はお辞儀をして娘とその場を離れていった。

「・・・・一件落着か。

 買い物も一通り済んだから。

 俺たちも帰ろうか。」

ユキコは頷き俺の腕を取って歩き出した。


こういう時のユキコは物腰が柔らかい。女性を感じさせる。

ユキコが現代に来て2週間ぐらいが経っているか?

最初の居心地の悪さのようなことは今の様子では感じられない。

自然に女性らしさを出しているように見えた。

だが、昨夜のあの激しい。格闘は今のユキコから想像が出来なかった。

あれが夢であってほしいとも思う。

だが、考えてみればその二つの出来事の根本は困った人を見ると黙っていられない。

という思いから来ていることには相違がなかった。


ユキコを見る俺の眼は次第に

彼女の心に同居する穏やかさと

熾烈な闘争の本能を

洞察するようになっていた。


「なんか。怖い顔してる。」

ユキコが俺の顔を不安げに見上げてそう言った。

「・・・・そうだったか?気のせいだろ?」

「何考えてたの?」

「気にしないでくれ。

 俺だってたまに考え事ぐらいする。」

俺が切り捨てるように言うと

ユキコはそれ以上追及しなかった。














ここから先は、

ユキコの任務に関わる“非日常”が

より色濃くなっていきます。


その前段階として描いたこの話で、

ヨシヒコは

ユキコという存在を

以前よりも冷静に観察するようになります。


彼女に向ける感情は、

安心だけでなく、恐れや戸惑いも含んだものへと変わり、

それでもなお──

その危うさから救いたい、

そう思い始めているのです。

ここまでお読みくださり本当にありがとうございます。

次回もどうぞおたのしみに。


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