第6章 ─前編 女性は変わる。男は驚く。
ユキコに“女性としての変化”が訪れる章です。
未来では戦士として生きてきた彼女が、
この時代の文化──メイクや洋服に触れ、
少しずつ「普通の女の子」の姿を取り戻していきます。
ヨシヒコの優しさ(?)と、
ユキコの戸惑いと赤面をお楽しみください。
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食後のテレビを眺めながら、俺はふと画面に映る女性タレントたちに見入った。
鮮やかなメイク、華やかな服。
──なるほどな。
横を見ると、ユキコはソファに正座してテレビを凝視している。
バラエティなのに笑いもせず、完全に情報収集モード。
未来の戦士の顔だ。
でも肌は驚くほど綺麗で、若い娘そのものなのに──
彼女は、自分が“女性”であることを理解していない。
(……少しぐらい、おしゃれさせてやりたいな)
その瞬間、衝動的にスマホを手に取っていた。
「明日の午後、体験メイクをお願いします。はい、予約は大槻です」
通話を切ると、背後から声がした。
「ヨシヒコ? いまの電話は……?」
振り向くと、不安げなユキコが立っている。
俺はなぜかワルガキのような笑顔になった。
「まあ、明日分かるよ」
その答えが余計に不安を煽ったらしく、ユキコの眉が寄った。
***
翌日、俺たちはショッピングモールにいた。
「しょ……ショッピング?」
「ちょっと付き合ってくれ」
化粧品フロアに足を踏み入れた瞬間、ユキコは固まった。
そりゃ、未来にこんな場所はなかっただろう。
「いらっしゃいませ〜!」
店員の明るい声。俺はまっすぐカウンターに向かう。
「予約した大槻ですが、メイク体験を」
「は〜い! 彼女さんですね! ……あら可愛い!」
ユキコは完全にフリーズ。
「ちょ、ヨシヒコ!? これなに──」
「まあ座れ」
店員は手際よく測定器をユキコの頬に当てた。
ピッ。
「……え!? 肌年齢……十六歳!?!?」
「じゅ、十六……?」
ユキコは意味が分かっていない。
(行水とドラム缶風呂しか知らんのにな……)
そこから店員のテンションはMAX。
次々とメイクが施されていく。
化粧水、下地、ファンデ、アイライン、シャドウ──
ユキコはされるがまま、でも鏡越しに変わっていく自分に釘付けだった。
「お待たせしました。鏡をどうぞ」
ユキコはそっと鏡を覗いた。
「……え」
息をのむ音が聞こえた。
戦士でも、逃亡者でもない。
どこに出しても恥ずかしくない“若い女性”。
「これ……私……?」
「うん。似合ってる」
耳まで真っ赤にして固まるユキコ。
「このセット全部ください。チークとシャドウも追加で」
「ちょ、ヨシヒコ!? だめ、こんな──!」
「必要なものは揃えておかないとな」
会計を済ませ、俺は次の売り場へ向かった。
「今度は服な」
「ふ、服……? この前買った……」
「女の子らしいのはまだだろ。行くぞ」
ユキコはまだ頬を赤くしたまま、
小さな鏡をそっと覗き込んでいた。
俺はそんな彼女を横目に、
次のフロアへと歩き出した。
──後編へ続く。
読んでくださりありがとうございます。
戦うためだけに育てられたユキコにとって、
メイクも服選びも“未体験の世界”です。
そんな彼女が少しずつ変わっていく姿を
ヨシヒコがどう受け止めるのか。
二人の距離が縮まるのか、それとも……?
次回もどうぞよろしくお願いします!




