英雄への一歩目
学マスCM復刻で死亡俺氏、絶望しながら執筆
「俺が…従者に?」
驚くのも当然だろう。俺はこの前まで村で過ごしてた一般市民で、本来ならば国内有数の名家である南家との関わる事なんてなかったのだ。
「そうよ。見ての通り…今屋敷には私とメイしかいないわ。今いないのは色々と忙しかったから正月休暇を出しているだけではあるけど、全員で大体10人しかいないの。」
「事情はわかりましたが…逆に俺でいいんですか?特にこれといって何かに優れているわけでもありませんし…」
「竜変さんは気づいてないかもしれないけど…あなたかなり強いわよ。全力じゃなかったとはいえうちの従者の中で1番強いメイと互角にやり合って相打ちまで持ってったんだもの。」
あれで手加減されてたのか俺は、殺さず捕えることが今回の目的だったからか。もし最初から殺す気で来られていたら…考えるだけでも悪寒がする。
「私のスピードにもついて来れていましたし、咄嗟の判断力も私と同レベル。能力の応用性を高めれば私と互角かそれ以上の戦力になると思います。」
メイさんもそんなに評価してくれてたんだ。能力の応用性…かあとで考えてみよう。
「ね?メイもこう言ってる事だし、とりあえず戦闘には優れているのよ。それに…美味しい料理も作れるじゃない!」
「そこまでいうなら…でも……」
考えがまとまらない。いきなりな事だし認められているのはわかったが本当にこの先もやっていけるのか…
「それに…四方守護家の従者の仕事は国とも深く関わることになるわ。実力も磨けるし、竜変さんの夢「英雄」を叶えることにもつながるんじゃないかしら。」
英雄…俺がここまで来た理由もそれだもんな。
なら、答えは一つ
「紗南さん、いや…紗南お嬢様!その話受けさせてください!」
膝を突き、手を前で組んで続ける。
「いつか英雄になる男、雲上竜変。あなたを守る騎士となることをここに誓います!」
「わかりました。南家代理当主、南紗南。汝、雲乗竜変を従者として南家に加えることをここに宣言します。」
なんだ…?暖かい…何か少しだが力がみなぎってくるような気がする。
「…これにて契約完了です。あとは書面での契約ですね。冒険者カードの用意をお願いしますね。」
冒険者…カード……
「あの…契約が終わった直後で申し訳ないんですけど、俺冒険者登録してないです…」
「スゥー…と、とりあえず、書面は今度にして、従者として最初の仕事を与えるわ!」
「任せてください。なんでもやってみせます。」
「メイと2人で麓の村の食糧倉庫を調べ、村の一件の首謀者を捉えてきなさい!今日は遅いからここに泊まって、明日、日が昇る前に作戦開始よ!」
「わかりました!あ、そういえば契約が終わった時になんか変な感じしたんですけど何かわかりますか?」
「それは朱雀の加護ね。炎関係の魔法の適正と魔力が少し上がるわ。」
朱雀の加護…魔力の増加はありがたいな…魔法も使えるようになれば戦いの幅も広がる。
「ありがとうございます。それじゃ俺は今日はもう寝てきます!お嬢様おやすみー!」
明日から初仕事じゃぁ!今日はさっさと寝よう。
この日はふかふかのベッドでいつも以上の良質な睡眠を得ることができた…
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「お嬢様、どうして私も指名したのですか?彼の実力なら余程の手練が関わってない限りは1人でもやれそうですが、」
「その万が一に備えてよ、なんだか嫌な予感がするの。従者は明日の夜に帰ってくるから私がここを離れるわけにはいかないわ。それに「神都」からの使者も明日着く予定だからね。」
「絶対に無事に帰ってきなさい。主人からの命令よ?」
「お任せください。」
嫌な予感が当たらないといいのだけどね…
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1月3日夜
村から少し離れた山の中にある食糧倉庫では何人かの話し声が響いていた。
「南紗南が村へと行く姿が見られたようです。人がここに来るのも時間の問題かと、」
「心配することはない、あそこは今人手不足で来ても2、3人だろう。我々が負けることはない、そうでしょう?冷さん」
「あぁ…その通りだな。皆の者!聞け!」
そう、言葉が発された瞬間その場にいた全員の視線がその男へと集まった。彼こそがこの集団のトップなのだと誰が見てもわかるほどの統率力だ。
「おそらく明日中には南家の者が攻めてくるであろう。しかし!奴らは我々「冷槍会」の敵にあらず!報酬は南の土地の半分、必ずこの任務を達成して見せよう!」
「「「おおー!!!」」」
歓声が倉庫の中をこだまする。ざっと数えて20人はいるであろう集団は来る輝かしい未来を夢見て明日への志気を高め合うのだった。
用語解説コーナー
物語中でなかなか描写しなそうだけど知っておいて欲しいものの紹介
これやると後で設定バグった時死ぬんだけどね!()
・能力
持っている人がそこそこいるくらいの認識で全員が持っているわけではない。与えられた状態から変化しないわけではなく、使い続ける事で成長する。
【なんとか術】というのは能力とはまた別のものである。
・加護
神と契約を交わす事によって得られる特殊な力。
今回は神獣である朱雀を守る南家との契約であり、間接的な物なので本来の加護よりは効果が弱まっている。
ようやく一章も折り返し地点!
そろそろまた戦闘になりそうやね、描写を学ばなくては…