南 紗南
テスト期間はなかなか書けない!!!
トントントントントン
グツグツグツ…
南家の厨房からはいつも通り料理を作る音が聞こえてきた。普段と違うところがあるとすれば…
「こんなでかい厨房で料理するのは初めてだな。」
そう、今回料理しているのはこの男〜
料理のニューウェーブ、雲乗竜変!!
〜時は少し遡り…
「しょうがないじゃないですか!私料理苦手系メイドなんですよ!」
目の前のいかにも掃除がきちんとでき、美味しい料理も作れて、なんでも完璧にできそうな見た目をしているメイドは堂々ととんでもないを言いやがった。
「美味しいお肉…食べたい…ここ数日カップ麺…」
「え、数日カップ麺生活してるの…俺と一緒じゃん」
「というか一ついいか?」
「えぇ…いいわよ。どうしたの?」
とてつもなくがっかりした顔でそう聞いてきた。彼女の目は死んだように濁っている。だが…それが変わるのはすぐだぜ…
「俺料理できます。毒抜きもいけます。」
パアァァァって効果音が鳴ってそうなくらい目がキラキラしてる!眩しっ…笑顔が眩しっ
メイさんからの嫉妬の眼差しが痛ぇ
「あと、腕治してくれたのって紗南さん?」
装甲を砕かれ、斧をモロにくらってバキバキに折れてると思っていた腕が料理できるくらいには治ってるのだ。
「そうよ。私は朱雀様の力を使えるるの。朱雀は不死の炎を纏う鳥、不死鳥フェニックスと同一視されることもある存在。だから不死には及ばないけど回復能力があるの。」
「まだ朱雀様に認められてないのだけどね…」
「すげぇな!」
「え…?」
「まじ俺もう何ヶ月か腕使えないかと思ってほんとビビってたからさ、喧嘩売ったのこっちからなのにここまで助けてもらっちゃって…ありがとう!」
「わ、私なんてそんな…まだまだ未熟で…」
「未熟な状態でこんな事できるとか最強じゃん。」
―――――――――――――――
この人はどうして会ってすぐの私に、真っ直ぐ目を見て、心からの言葉で、ずっと欲しかった言葉をくれるのだろうか。
南家の次女として生まれてきた私には長男と長女の双子の兄妹がいた。
「お父様!見て!手から炎でるの!」
「おぉ、すごいな紗南。紗南もいつかはお兄ちゃんとお姉ちゃんみたいにもっとすごいのも出せるようになるかもだな。」
兄と姉は優秀だった。若くして朱雀に認められ、神都で騎士団の一員として様々な功績を残していた。それに比べて私は…
「あの子達神都に行っても頑張ってるわね。」
「そうだな。南家の次期当主を務めることになるかもしれないんだ。今でもすごいが、もっと頑張ってもらわんと。」
「お父様、お母様、見てください。ついに私も飛べるようになりました。また一歩、兄上や姉上に近づきました!」
「あぁ、そうだな。これからも訓練に励みなさい。」
この頃にはお父様はもう私に目を向けてくれることもなくなって、でもお母様は私の事を見てくれていました。その瞳は愛する娘を見る目というよりかは…力のない子供を憐れむような、そんな目だったけど。
そして現在から数ヶ月前
エイス国との貿易海路に出現した強大なモンスターの討伐のために南家に出撃命令が出て、従者含むほとんどの人を連れていくことになった。
「お父様、私も連れて行ってください!私も南家の人間です!」
力が足りない、足手纏いになるのはわかっている。それでも、どうしても南家の人間として対等に…いや、私自身を見て欲しかったんだ。
「だめだ。紗南にはまだ早い。家で待っていてくれ。メイ、紗南を頼んだ。」
「……了解しました、ご主人様。」
嫌だよ、私だけ除け者にしないでよ…
「まだ早いとか…そんなの…そんなの知らないよ!」
「父さんはお前のことを考えて…」
「私が弱いから!だから連れて行ってくれないんでしょ!お兄ちゃんやお姉ちゃんみたいには戦えないから!私だって毎日修行して、色々できるようになってきたのに…最近のパパは私の事は見てくれてないじゃん!私の事なんて全然考えてないくせに…パパなんて大っ嫌い!」
「紗南!」
タッタッタッタ…
私はお父さんと喧嘩して自分の言いたいことだけ全部言って、その後のお父さんの言葉は聞かずにさっさと部屋に戻ってしまった。
この時の私はまさかこれがお父さんとの最後の会話になるとは思っていなかった。
「え…船が沈没…?」
嘘…そんなわけないそんなわけないそんなわけ…
「お…お母様以外は飛べるはずでしょ…?なら沈没しても生き残って…」
「お嬢様、残念ながら…生存者は見つかっていません。それどころか沈んだはずの船とモンスターの残骸も、何もかもが最初からなかったかのように消えています…」
「何よそれ…大嫌いなお父様がいなくなってせいぜいする…はずなのになんで…あれ、私なんで泣いて…私のこと見てくれない家族なんて嫌いなはずなのに…」
「お嬢様「見てくれないから嫌い」、それは「好きだから見て欲しい」の裏返しでもあるんですよ。」
「…お父様、お母様、お兄ちゃん、お姉ちゃん、会いたいよ…置いてかないでよ…」
少しして…私の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。
メイはずっと私を抱きしめてくれていたから顔は見ていないけど泣いていたと思う。
泣き声だけがする中最初に言葉を発したのはメイだった。
「紗南お嬢様!泣いちゃダメとは言いません。でもあなたは残されたものをちゃんと守らないといけない。私はこれからも紗南お嬢様の側にいますから!あなたのことをずぅっと見てる。だから…だから2人で託された南家を守っていきましょう。」
自分も辛くて、まだ立ち直っていないはずなのにこの子はもう未来の事を見れているんだな…私も…私も頑張らないと!
「うん…うん!これからもよろしくねメイ!いつかお兄ちゃんお姉ちゃんもお父様も超えた歴代最強の当主になって冥府で自慢してやるんだから!」
傷が完全に癒えたわけではない。それでも背負っている立場が、急なことで困惑はしていたけど支えてくれた人達が、傷を一緒に背負って癒してくれる人がいたから、私は少しだけ前を向いて歩き出すことができた。
そこからは「代理」当主としての引き継ぎとか、残っていた従者達の今後の相談とかで毎日忙しかったけど修行を怠ることはなかった。
そして昨日〜
「煙的にもバーベキューじゃないでしょうか。」
「バーベキュー…また大人数でやりたいわね。」
――――――――――――――
「この能力の事をそんなに褒めてくれるなんて…褒められ慣れてないから照れるけど……」
目の前の少女は少し照れているが、今日1番のまっすぐな明るい笑顔で
「その…ありがとう!」
傷を癒してくれた人に精一杯の感謝を述べたのだった。
シリアスをぶち込むからと言って書いた最初のおふざけ(クッキング)、まさかの次回への持ち越し…
脳内紗南ちゃんが可愛すぎて幸せ