捨てられない憧れ
南家現当主ちゃんに性癖を詰め込みたい。
「痛てて!!!」
え?俺…生きてる…夢…?
いや夢ならこんな痛く無いだろ。
でも絶対生きてられる高さじゃなかったよな。
というかここどこだ!?
目を開けると知らない天井…病院かな。
あいにく病院って感じの見た目じゃ無いんだよな。
「てかベッドめっちゃふかふか…このままもっかい寝れそう。」
ガチャッ
「起きてるかしら。」
「え、あ、おはようございます?」
誰だこの人。俺と年は同じぐらいに見える…黒髪に若干の赤メッシュが混ざった小柄な女の子が俺の寝ている部屋に入ってきた。
もう1人、彼女の後ろから入ってくる人物がいた…
美しい長い髪を後ろで一本に束ね、腕に包帯を巻き、メイド服に身を包んだ少し長身な女性…
「……シニタクナイ」
「……」
「あんな戦闘した後だしそりゃこうなるわよね…」
「あなたから仕掛けて来ない限り、これ以上攻撃をするつもりはないわ。安心して。
まずは自己紹介ね。私の名前は南 紗南!南家の現当主よ!」
「ほら、メイも名乗りなさいよっ!」
「…小間使メイです。」
「俺も自己紹介しといた方がいい流れかな?俺は雲乗 竜変!…で早速聞きたいんだが、状況から見て俺を助けてくれたのは紗南さんだよな?どうして俺を助けたんだ?」
「それはね…メイ」
「いつのまに!?」
気がつくとメイさんに背後を取られ、
「動かないでくださいね。」
首に斧を押し付けられていた。
「事情聴取のためよ。悪く思わないでちょうだい。
あなたが村の混乱に乗じて私たちを襲撃しにきた可能性はまだ捨てきれないのよ。あなたがメイと戦っている間に村の現状を確かめに行ったからデタラメを言ったらすぐにわかるわ。正直に話してちょうだいね。」
くそっ…油断していた。だが正直に話せばここは切り抜けられるはず。メイさんと押し問答したときのような高揚感はない、冷静に応答しよう。
「まず一つ目の質問よ。あなたはどうしてここにきたの?」
「俺は1月1日、初詣のために神社に行ったんだ。そしたら異常に人が少なかったから何があったのか少し調査したんだ。」
「そしたら食糧難になってる事、その原因が代替わりした南家の当主にあるかもしれない事がわかった。
だからここに来た。」
「嘘は無さそうね…二つ目の質問よ。なぜ1人で乗り込んできたの?」
その質問がされることは予想できていたがいざその話を持ち出されると息が詰まる。
「なぁ、あんた「龍神大戦記」って知ってるか?」
「えぇ、もちろん。我が南家は英雄様に協力した4体の聖縦の一角、朱雀を祀っているんだもの。それで?今回の話となんの関係があるのかしら。」
答えたくないは通用しない。心臓の鼓動が相手にも聞こえてるんじゃないかってほど大きくなる。
「1人で来た理由はその…一緒にくるような友達が…いないから…と……「龍神大戦記」に出てくるような…英雄になりたかったからだ!!」
言ってしまった…きっと笑われる、呆れられる、失望される。こんな歳になってまでこんな幼稚な夢語ったんだからしょうがない。それはわかってる!わかってるけど…諦められないんだよ…今までの俺は何もしてこなかった。英雄になりたいと思い続けるだけでなんの行動もしなかった。
「あなたは英雄様に憧れてるの?」
でも今回…やっと一歩踏み出せたんだ。
もしここで否定したら、俺は今の自分も今までの自分も全てを否定することになる。
たとえ笑われたとしても、今なお燃え続けるこの憧れに嘘をつくことはできない。
「英雄は俺の憧れで…夢だ!いつか彼のように多くの人を救える人間に俺はなりたい。」
あぁ…口角が上がって来てる。また馬鹿にされる…やっぱり理解してもらえ…
「いい夢じゃない!私も好きよ英雄様!」
目の前の少女は笑顔で話している、しかしその笑顔は人を馬鹿にするようなものではなく…
「笑わないのか…?」
「彼の自分よりも圧倒的に強大な存在に怖気付かない精神力、多くの人、そして人以外も勇気づけるカリスマ性を持ってるお方だもの!憧れるのも無理ないわ。」
とてもまっすぐで尊敬の念すら持っていそうなそんな笑顔であった。
「……私も早くそうならないとね…」
「ん?今何か言ったか?」
「いえいえ!気のせいよ!そんなことより、メイ。」
「…承知しました。」
俺の後ろで今にでも俺を殺してやろうというような雰囲気で立っていたメイドは彼女の一声で、俺から離れ主人の側に戻って行った。
「まずは謝罪を受け取って頂戴。あなたの言葉に嘘偽りがないことはわかったわ。疑ってしまってごめんなさい。これから私たちはあなたのことを敵としてではなく、客人として扱うわ。」
「こちらこそ急に押しかけてきてしまった非礼を謝らせてくれ。ごめん。」
「ふふっ、これでお互いチャラということにしてここからは対等に話しましょ。そして一つ提案があるのだけど…」
ぐぅ〜…
豪快な音が部屋に鳴り響いた。ついさっきまで元気よく話していた少女は顔を赤らめ硬直している。
「…話の続きはご飯を食べながらでもいいかしら…」
「それで大丈夫ですよ。ww」
「笑わないでください…」
真面目な対応をしてきたと思ったら急におてんばな雰囲気になって、お腹なっちゃうとか面白すぎるからしょうがないだろう。
あ、メイさんから殺気が…ゴメンナサイ。
「俺道中で狩ってきたアルマジロみたいなやつの肉あるんで!それ食べませんか?」
「あ、一人BBQしてたやつですね!私も食べたかったのよ。」
「その…竜変様…大変お聞きしにくいのですが、」
「どうかしましたか?」
「食べる前に毒抜きはなさいましたか?」
このメイド主人の前ではちゃんと丁寧に喋るのか。
というか…毒?
「やって…ないですね…」
「この辺のアルマジロ、おそらくメタルアルマだと思いますが若干の興奮作用がある毒が含まれていますよ。」
「え…」
あの時の高揚感これのせいかぁぁ…
「じゃあ私たちはお肉食べれないってこと…?」
さっきまで当主ではなく1人の少女ときて満面の笑みを浮かべていた紗南の顔が一気に暗くなった。
「うちには…毒抜きをするための道具があります。」
紗南の顔がパッとまるで花が咲いたかのように笑顔になる。メイさんこうなるのわかっててやってるな。
これは…俺もその立場だったらやりたくなるわ。
「あ、ちなみに私は毒抜きできませんよ。」
「「え、」」
究極の上げてから落とす。その行動に驚きと悲しみ、2つの意を持つ言葉が部屋に響き渡るのだった…
実際のアルマジロの肉を感染症かなんかで危なかったらするらしいよ!!!