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過労死には気をつけましょう


職場である、とある介護施設の廊下で、両目を瞑って仰向けに倒れている結衣。

酸素が十分に回っていないふらふらする頭の中で、22年間のこれまでの人生を振り返る。


結衣<私は介護士。だから、人のお世話をするのが好き。その人のために尽くすことが仕事>

結衣<めちゃくちゃ怒鳴られても、理不尽なことを言われても、たとえ会社が安月給の人材不足で超過労働へっちゃらなブラック会社でも……>


上司に怒鳴られたり、不眠不休で施設内を走り回ったりしている自分を回想する結衣。


結衣<……って、そんなわけあるか!>


目を開けて、薄暗い廊下で唯一眩しさを放っている天井の蛍光灯を睨みつける。


結衣<自分の天職だと思っていたけれど、間違ってた。この4年間、最悪なことばっかり。先輩に仕事は押しつけられるし、必死で走り回っても時間内に仕事は終わらないし、ご飯を食べるヒマもないし、夜もがんがん呼び出されるし、休みももらえないし……>


シクシク痛む自分の心臓に、右手を重ねる。


結衣<これもう死ぬんだろうな……過労死ってやつかな。そしたら、この会社も訴えられて、これ以上の犠牲者が出なくて済むかな……あ、でももみ消されるかも。世の中って理不尽なことばっかりだから>


再び目を閉じて、家族の顔を順に思い浮かべる。


結衣<お父さん、お母さん、ごめんなさい。お兄ちゃん、ゲームばっかりしてないで2人をよろしくね>

結衣<次に生まれ変わるときは、私はぜったい介護士にならない。もっと華やかで、オシャレな仕事をするんだ……>


すーっと、深い眠りにつくように意識が薄くなっていく。

どこか遠くから、ぼんやりとした声が聞こえる。


グレル(声のみ)<頼む……助けてくれ>


結衣<だれの声……? ああ、きっと305号室の長嶋さんだ。解熱剤を持って行く途中だったんだ>


グレル(声のみ)<苦しい………>


結衣<長嶋さん、ごめん、ごめんね。私も動けなくて……限界なの>

 

結衣の頬に、一筋の涙が流れる。


グレル(声のみ)<助けてくれ……!>


結衣<本当にごめんなさい。私には助けられないのー>


突然、廊下の中に吸い込まれて、暗い穴に落ちていく感覚に襲われる結衣。


結衣<ああ。私、死んじゃった……>

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