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光煌めくガラスの箱と黴臭い桐箱

作者: しろかえで

今日は黒い“しろかえで”です(^^;)

見つめていた天井が徐々に光を映し始めた。


レースのカーテンの向こうの、もう久しく見なくなった32階の眺望……

富士山が浮かぶ空は紺色から朱色へと染め替えられて行くのだろう。


そんな風に私も自分を染め直せるのだろうか?……

こんな言葉が頭に浮かんだ時、

裸のお尻をオトコの膝頭に蹴られた。

ムダ毛処理でもしているのか?ツルツルの体だけが救いだった叶夢(とむ)と言う名のこのオトコは、鼻に掛かるいびきを『んがっ!』と噛んだ。


 私のベッドに友久さん以外の男が来る事になろうとは……ほんの半年前までは想像だにしていなかった。


 そう! 去年の花火大会の時は……誰にも見られる事は無いからと、友久さんと二人ベッドを抜け出し窓に体をくっ付けて、()()の火照りをクールダウンさせながらはじける花火を眼下に眺めた。


 例えこの部屋を離れて、どこまで見渡そうとしても大河内家の土地しか見えないつまらない田舎暮らしになっても、私の傍には友久さんが居てくれる……


疑いながらも信じていたこの未来は、やって来ない事が確定した。

薄々感じていた私の懸念通りに……


この世でたった一人の“愛する人”友久さんは……自ら歩くべき“道”を見つけたのだ。

私が一緒にその道を行く事は不可能だ!!

かと言って、彼を引き止め“殺す”事は出来ない。

そして、この事で彼や彼のご家族にご迷惑をお掛けしたり、負い目を背負わせたりする事も絶対にできない。


ただただ、私が不実で至らない事として、彼と彼の夢を守ろう!!


私が彼に恋をして、彼が私を受け入れてくれた時から心に決めていた事。


今は単に、それを発動するだけ。


それには、この叶夢と言うオトコは好都合だった。


友久さんの友人関係の中で一番チャラい奴!


どう考えても、友久さんは袂を分かつべきと思えるクズ男!!


“しがらみ”を二つ下ろせば友久さんの自由度は随分と増すだろう。


友久さんには友久さんしかできない事を成し得て欲しい。


それが……“夢を持つ事の無い”私の夢なのだから。


友久さんを傷付ける罰は、すべてこの身に引き受ける!!



 数日前、ふと目に留まった記事がある。パピーミル(子犬工場)についての記事だ。


その内容は背筋が凍るような悲惨な物だったが、それとは別に、私に『我が身の立場』を思い起させた。



とある田舎に隠然と蔓延る力


それが私の実家だ。


 古から一貫しての“支配者”である大河内本家は、分家の人間ですら、その意に反すれば生首が野ざらしとなる……さすがに明治以降はそこまで表立った事は出来なくなったが、決して“闇”が晴れた訳では無い。大河内の“領内”の民草はすべて大河内の物。意に反するものは家ごと炭にしてしまうという“恐怖政治”が“村八分”レベルになった位の事だ。

 

“産めよ殖やせよ”は大河内家の力と血筋の維持の為に、女に課せられた重要な役目であり、一人娘の私は本家隆盛の要とならざるを得ない。

“私の一存”が通る世界では無いのだ!!


それゆえ私は4年間の大学生活を“自由な時間”として与えられた。


それは単に“学び”の時間では無く、優秀な遺伝子を探す期間としてだ。


大河内家の家訓に“家柄”の二文字は無い。

そう言ったしがらみや先入観に目を曇らせる事無く伴侶を選び取る能力をも求められていて……現に、遊郭の太夫が正室となったり、卑しい身分ながらその才覚を見初められて婿になった者もご先祖の中にはいらっしゃる。


 私が初めて好きになった友久さんは祖父母両親からも信頼を得て……半同棲生活を送るまでになっていた。友久さん自身もゆくゆくは大河内姓を名乗るつもりであった事も間違い無かった。

かくして私は400年以上続く大河内家の歴史の中でも“幸せ”な部類に入るはずだった。


でも、人と人の出会いは思いもよらない事がある。

人生の流れを変えてしまう出会いは何も恋愛だけでは無い。


大学4年になって、たまたま友久さんが選択した講座……

その講義を務める非常勤講師の加藤さんが友久さんの人生を変えてしまった。


そして私も……それが本来の彼の人生だと心から思う。


その人生へ彼を迷いなく送り出す為に、私は“不実を行う”事にした。


彼との縁を切る為には、私が不実を行うしか無いのだから……


何も大層な事では無い。


この自由な4年間に何事も無ければ、私は“家”が選んだ男性と結婚し子を成す。


この不実は、その予行練習の様なものだ。


予めドラックストアで必要な物を買い整えて置いてから私は“クズ男”を呼び出した。


少なくとも十人並みの私の容姿を差し引いてもタワマンの眺望と“主の居ないベッドでその恋人を犯す”と言う猥雑な征服欲に押されて、クズ男は難なく私を押し倒した。


押し倒された私の方はひたすら体と心を刺されるだけで、その痛みで一晩中まんじりともしなかった。

私の「未来」はこんな毎日なのだろうか?

それともこんなクズ男よりは多少はマシであろう「伴侶」に情愛が湧いて、穏やかな朝を迎える事ができるのだろうか……


いずれにしても……今、私は体に擦り付けられた“オス”を洗い流したくで仕方がないのだけど、あとしばらくの辛抱だ。


もうすぐ友久さんが帰って来る。


この有様を見せつけて、私は友久さんから“売女”のそしりを受ける。


ふふふ


ある意味、素敵だ!


『姫在中』と表書きされたかび臭い桐箱に押し込められた私が、遠い昔のご先祖様とシンクロできる。


そしたら私はみそぎをして


大河内のバカでかいお墓を訪れて、その前で手を合わせようと思う。




              おしまい


どうでしょうか??


意味わかりました??


う~ん 不安だぁ(^^;)




ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!<m(__)m>

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― 新着の感想 ―
[一言] ……なんでしょーねー。「黒い」とは思わなかったですが、……バカだなぁ、と切ない気持ちになりました。  主人公は前作の真帆とは生まれ育ちの境遇は似ているけれども、対照的な性格に思えました。 …
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