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女の戦場と夢と希望

 さて、政さんのとこを出てから俺達は来た道を逆走するように、また暫く歩く事になった。


 昼時ということもあり、先程はまばらだった人影も徐々に増えており、飲食店には昼休憩を迎えたスーツ姿の人や、着飾った格好のマダム達がちらほらと散見しており、商店街の方も活気が出始めていた。


 当面の目的地はとりあえず、腹の虫が満足するような飯…もとい、コンのお眼鏡にかなったらしいバケツプリンパフェなるものがあるカフェを目指し、歩いていると先程の肉屋のおっちゃんがサムズアップしてにっこりと笑っていたのを見て、コンが真似をしてサムズアップで八重歯を見せてニコリとほほ笑んでいた。


「なにやら不思議なポーズをとっておったが…あれでよかったのじゃろうか?」


 と、何故か疑問形でこちらに質問してくるコンだったが、まあ挨拶の一種だと伝えると短く「そうか」と、呟き花奈と手を繋いでルンルン気分で先を歩いていた。


 来る時とは逆で、俺が最後尾に居て樹と花奈とコンが最前列でウキウキと楽しそうに話しながら歩いている。


「コンちゃん、あの大きさ…一人でいけるっすか?」


 花奈がそう尋ねると、コンは胸を張ってポンと手を当てて鼻から息を吹き出すと、ドヤ顔で言う。


「なにを言うのじゃ花奈!ワシなら軽く二杯くらいは余裕じゃ!」


 そんな様子を見て、花奈はニコリとほほ笑むとコンと手を繋いで更に先へ進んで行く。


 それに続いて樹がコンへ提案する。


「ふふ、流石コンちゃんね!でも二杯も食べちゃうとお腹ぽんぽんになっちゃうから、一個にしときましょう?ほら、ハンバーグも美味しそうだったし、色んなもの食べた方がもっと楽しい気分になるわよ?」


「うおおおお!熱々の肉汁が…じゅんわりと…というやつじゃな?ふへへ、それもそうじゃの!ふぁぁ…ばけつぷりんぱふぇ…そして、はんばぁぐ…二つとも食えるとはお得なのじゃぁ~…じゅるり!」


 ピシっと人差し指を立てて、片目をつむりウィンクをするように樹がそう言うと、ハンバーグを想像したのか、だらしなく頬を緩ませて涎を垂らす。


「ああ、コンちゃん涎、よだれ!ほら、これで拭きなさい」


「ずず…おお、すまぬのじゃ…樹」


 と、樹が慌てて持っていたハンカチで涎を拭っている。


 そんな様子を見ていた花奈も何やらワントーン声の調子が上がっており、ウキウキと笑顔でいる辺り、心底楽しみにしている様子が伝わってくる。


「ふふ、あー…ホント楽しみっすね!やっぱパフェは女の子の夢と希望が詰まってるっす!ダイエットは明日からっす!」


「だいえっと?とはなんじゃ?花奈、それは美味しいのか?」


 聞きなれない言葉にコンはそれを聞き返しただけだったが、花奈は先程とは打って変わって、遠い目をしており、胸の辺りで拳を強く握りしめ、唇を噛み締めると苦々し気に答える。


「いいえ…ダイエットとは、辛く苦しい道のりを乗り越えて、過酷なその先にあるのは空しい自己満足という結果しかない…いわば、修行みたいなもんっす…女の子は日々、それを実践してるんっすよ…」


「ぬぉっ!そんなに過酷なのか…だいえっと…とは恐ろしいのじゃぁ…でも、その修行と食べる事に何か関係があるのかの?」


 花奈は若干涙目になりながら、ダイエットの事を思い返している様子だ。


 普段そんな様子を見せたりはしないが、やはり白鳥が水面下で必死に足を動かすかの如く、常に意識して今の体形を維持しているのだろうか?


 まあ、男の俺にはあまり分からない苦労があるのだろう。


 そんなことを考えていると、花奈はコンに逆に問いかける。


「ぐぬぬ…コンちゃんは太らないっすか?」


 あ、確かにそうだ。


 一昨日からの付き合いだが、あれだけ暴飲暴食していれば多少なりとも太ると思うのだが…見た目上は何も変わっていない様に見える。


 そこんとこ神様はどうなんだろうか?確かに気になる所ではある。


 俺もコンへと視線を向けて、返事を待っていると、コンはきょとんとした様子で首を傾げ、尻尾と左右にゆらんゆらんと揺らしながらあっけらかんとした態度で答える。


「ん?太る?なんじゃそれは?ワシはほれ、土地神じゃから…その、よく分からぬ…」


「くぅぅぅ…羨ましすぎるっす…神様、自分にもそのいくら食べても太らないご利益分けて欲しいっす…」


「んー…?」


 何やらよく分からないと首を傾げ、本気で困惑気味のコンに対して花奈は、口をぎゅっと窄めて歯を食いしばり、本気で悔しがっていた。


「コンちゃん、花奈ちゃんにしか分からない葛藤があるのよ…そこは、触れないで上げて頂戴…」


 樹のフォローが空しく響く中、コンは花奈の方へ駆けよりにっこりと満面の笑みを浮かべて、胸元辺りに手を添えて握りこぶしを作ると、真剣に花奈に対して応援の言葉を述べていた。


「なんだかよく分からぬが、頑張れ、花奈なのじゃ!」


「…ありがとうっす、気持ちだけ貰っとくっす…って、それは置いといて、ほらあそこっすよ!うちらの戦場が待ってるっす!行くっすよ、コンちゃん、樹っちゃん!」


 そんな様子のコンを見て、花奈はもはやヤケクソ気味に呟く様に礼を述べると、ぼちぼち見えてきた目的の店を指さしコンの手を引いて駆け出す。


「合点承知!」


「おー…なのじゃあっ!」


 それに釣られて元気よく返事をし、駆け出す二人。


 俺を置いてさっさと向こうへ行ってしまった三人は、店の扉を潜ると席に案内されている様だ。


「あのー…皆さん?もしもーし?」


 完全に置いてけぼりにされてしまい、疎外感を覚えてしまったが、きっと休日に娘と母親と一緒に買い物に行くお父さんもこんな気分なんじゃなかろうか?と妙にしんみりしてしまう俺がいた。


 何とか走って追いついて店に入ると、息を切らした俺を見る店員さんの目が冷たくて余計に悲しくなってきたが、そんなことは気にしている場合ではなく、何とか連れですと告げると同じ席に合流することが出来た。


 しかし、席についてからも相変わらずの様子で、女子達(?)は各々好きな事を喋っており、俺は完全に蚊帳の外だった。


 いや、まあ良くはないんだが…まあ、さっきまで仕事の話だったからここくらいはっちゃけてもらってもいい…のかな?


 等とメニュー表とにらめっこしながら考え込んでいると、樹と花奈はもう注文するものを決めている様子だったが、コンだけは何を頼めばいいか悩んでおり、決めかねている様子だった。


 メニューはこの辺にしては割とお手頃価格で、大体六百円~千円前後という何ともリーズナブルな価格だった。


 写真に盛られている量もそれなりに量があり、写真詐欺じゃないとすれば結構満足度は高そうだ。


「よし決めた…ミックスサンドイッチとコーヒーのセットにしよう…」


 俺がそう呟くと、樹が口を開く。


「ふふ、ホントお腹空いたわねー…あ、私ハンバーグ定食ご飯少な目にしよっと!」


 樹がそう言うと、花奈もメニューを指さして言う。


「あーじゃあ自分も同じのにするっす!この際もうがっつり行くっす!そんでデザートは樹っちゃんとバケツプリンパフェ半分こするっす!」


「あらーいいわねーあたしも実は何だかんだ気になってたのよー!」


「よし、なら決まりっす!」


 ついでに目玉商品でSNS映えしそうなたっぷりバケツプリンパフェなるものを指さすと、それに同意した樹がうんうんと頷き、ニコリとほほ笑む。


 既に注文を決めてしまった三人を他所に、コンはまだ決めあぐねている様子で、慣れない注文に困惑しており、わたわたと手足を動かしては落ち着かない様子だった。


「わ、ワシは…あの、えと…その…うー…稲荷寿司大盛はあるのかの…?」


「ふふ、んー稲荷はどうかしら?」


「あ、コンちゃんオムライスにするっすよ!ほら、猫ちゃんの絵を描いてくれるらしいっすよ!」


 そんな様子に見かねた花奈がメニューの隅っこにあったお子様メニューという所を指さして提案すると、コンはそれを確認すると、先程まで困り顔で顔が強張っていたのだが、ぱーっと霧が晴れたかのように徐々に笑顔を取り戻していった。


「あ、猫!ワシこれが良いのじゃ!」


「じゃあ決まりね!ふふ、楽しみだわー!」


「楽しみっスー!」


「楽しみなのじゃー!」


「あ、店員さーん注文お願いするっす!」


 と、ニコニコと顔を見合わせてほほ笑む三人がなんだか本当の親子に見えて和んでしまったが、若い女性の店員さんが注文を取りに来ると樹が先程言っていたメニューを指さし、テキパキと頼んでいた。


「ハンバーグ定食ご飯少なめと、サンドイッチとコーヒーのセット、オムライスで食後にたっぷりバケツプリンパフェを二つお願いします」


「あ、自分もハンバーグ定食ご飯少なめでお願いするっす!」


 樹がそう言うと、花奈も手を上げて店員さんに注文する。


 店員さんは一瞬突然被せてきた花奈の言葉にきょとんとしていたが、慣れた手つきで伝票にすらすらとペンを走らせ注文を記入していくと、もう一度顔を見て確認を取る。


「えと、こちらのお客様がハンバーグ定食ご飯少なめ、こちらがサンドウィッチとコーヒーセット、こちらがオムライスで食後にバケツプリンパフェをお二つでよろしいでしょうか?」


 と、丁寧に各々注文した人物を見てしっかりと繰り返し確認していた。


「ええ、それでいいわ。それじゃ、お願いね?」


「かしこまりました…少々お待ちください」


 と、店員さんが下がっていくとコンが目を輝かせて前のめりになって尻尾を震わせていた。


「おっむおっむおむおむ~…猫ねこねこねこ~…にゃ~なのじゃ~!」


 と、謎の鼻歌を歌って皆を和ませていたのは言うまでもない。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ※お知らせ 


 第十三話えもえもと線香花火に挿絵が完成しましたので、是非ご覧ください。

 https://kakuyomu.jp/works/16816927859532349203/episodes/16816927861026118557



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