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ケモミミ幼女、コン様見参!(前)

境内の方を覗き込むと、ぱっと見俺の胸よりやや低いくらいの身長で、頭上にピンと尖った立派なケモミミを張り付け、フサフサした艶やかで柔らかそうな尻尾を左右に揺らし、滑らかで艶々したCMにでも出てきそうな腰程まで伸びた金髪をひらひらとはためかせ、おでこの中心にクロスする様にちっちゃな両手を当て、唇を鶏の嘴くちばしの様に尖らせて、ほっぺを真っ赤に染めながらぷくりと膨らませ、形の整った眉を精一杯吊り上げこちらを恨めしそうに睨みつけている金髪碧眼の巫女服を着た幼女の姿があった。




「うぅ…うぅ…痛いのじゃ…というか…こやつ、何故ワシに触れることが…?ワシが見えておるのか…?ありえん…一体全体どうなっておる…?」




何やら不可解なことでもあったかのように、ケモミミ幼女はぶつぶつと独り言を呟きながら、尚もこちらを睨みつけている。




まあ、さっきまで誰もいなかったのを確認していたのにいきなり現れた目の前のケモミミ幼女について驚きこそしたが、このままでは埒が明かない。




偉そうに無い胸をピシッと張って、こちらを威嚇してくる様は褒めてやってもいいが、そろそろ状況を説明して欲しい。




「あの~…さっきからぶつぶつと神だとか、見えてるとか…全部聞こえてるんだけど、君は誰?こんな所で何をしてるの?」




俺がそう問いかけると、ケモミミ幼女は先ほどまでの険しい表情から一変して、ぎょっとして碧眼のくりくりっとした目を見開き、ビクンと尻尾を震わせたかと思えば、先ほどまで顔を真っ赤にして怒っていた様子だったのだが、一変し真っ青に変化させた。




全く忙しいやつだ。




表所がコロコロと変わる目の前のケモミミ幼女には悪いが、俺はとりあえず床に転がったままになった稲荷のパックを拾い上げる。




そして、稲荷のパックを開いてケモミミ幼女の方に差し出し、再び問いかける。




「あの、とりあえず…これ食べながらでいいからお話しない…?俺、さっきまで掃除してて腹ペコなんだ…君の事教えてくれると助かるんだけど…どうだろう?」




子供の相手はあまり得意ではないので、ぶっきらぼうな言い方にならないよう精一杯努力して、ぎこちないながらも何とか笑顔を作りとにかく敵意は無い事をアピールする。




対面したままケモミミ幼女はまだこちらを警戒しており、相変わらず目つきは鋭く、こちらを威嚇している様子だが、差し出された稲荷寿司には興味津々な様で、口の端からよだれが一筋垂れたのを俺は見逃さなかった。




「ほら、これ、食べていいから。俺が怖いならここに置くからちょっと離れたとこで食べたらいいよ!俺もお腹すいたから、ここで食べさせてもらうけど…」




間を開けず追撃。持っていたパックを床に置きケモミミ幼女から距離を取る。




境内の外に置いてあるクーラーバッグの所に戻り、階段へと腰掛け俺も稲荷寿司のパックを取り出す。




敢えて目線は外し、目の前の稲荷寿司に集中する。




輪ゴムを外し、蓋を開け、稲荷寿司を一つ取り出し口に放り込む。




肉体労働の後に口にするソレはマジでめちゃくちゃ美味しかった。




一口齧ると疲れた身体にお揚げの絶妙な甘みと、出汁が口いっぱいに広がる。




更に咀嚼すると中から酢飯の程よい酸味と、ご飯に混ぜ込んでいる白ごまの豊潤な風味が鼻腔を突き抜ける。




噛めば噛むほど口の中はお揚げの甘みと出汁、酢飯の豊かな酸味と、白ごまの香りが混ざり合い絶妙なバランスを醸し出している。




シンプルだがとにかく美味しかった。




一個、二個と最早止まれなかった。




気付いたらパックの三分の二くらいの稲荷寿司を無心で頬張っており、その様子をケモミミ幼女が見守るという何とも不思議な空間が出来上がっていた。




「ふぉうした?ふぁべふぁいのか?(どうした、食べないのか?)」




口の中に稲荷寿司を入れたまま喋るのは行儀が悪いとは思うのだが、じーっとこちらを凝視しながらも、目の前の誘惑に抗うケモミミ幼女の視線を感じ、問いかける。




一瞬ビクン!と全身を強張らせるも、目の前の稲荷寿司の誘惑にはどうやら抗えなかった様子で、恐る恐るといった風にパックの中から稲荷寿司を一つ手に取ると、大きく口を開けて「あむっ!」と豪快に頬張る。




一つ口に入れて二、三回咀嚼すると飲み込むのも忘れて次の稲荷を口に放り込む様はさながらハムスターの様だった。




目を輝かせながら「はぐ、はぐ…!」とそれを貪るケモミミ幼女とおっさん。




互いに言葉はなくとも、そこに美味しい稲荷寿司があれば何も要らなかった。




黙々と手掴みで口の中に放り込み、咀嚼。




あっという間に二十個入っていた稲荷寿司はすべて腹に収まる。




俺はペットボトルに残っていたお茶を一気に飲み干し、一息つく。




「ごく、ごく、ごく…ふぅ…」




お茶を飲み一息ついたところで、ケモミミ幼女の様子を伺うと、そちらも丁度食べ終わり、若干喉に詰まりかけていたので、呼び水に使ったミネラルウォーターの残りを蓋を開けて渡すと、天下の大酒豪の如き速さでそれを一気飲みする。




その豪快さは最早気持ちが良いくらいだったが、飲み物までナチュラルに受け取ったケモミミ幼女は、また少し距離を取る。




しかし今度は先ほどまでの明らかな敵意みたいなものは感じなかった。




多少の警戒はしているものの、どちらかというと恥じらいの方が強かったのだろうか?頬が紅潮し、肩で息をして今度はこめかみ辺りに両手を当てて、大口を開けて「ああ…やってしまったぁ…」と、うなだれていた。




とりあえず、警戒心も多少はましになったのか?もう一度ケモミミ幼女に声を掛けてみることにした。




「あの…俺は八雲四季…。とりあえず、君の名前とここで何してたか教えてもらえるとありがたいんだけど…」




身体の向きを少しずらして、半身の姿勢で首だけをケモミミ幼女の方へ向けておずおずと切り出してみると、ケモミミ幼女はまたも一人ぶつぶつと何かを呟く。




「いや…その…まあ…うーん…じゃが…」




何かを悩んでいる様子だったが、結局ガクンと項垂うなだれて、観念したかの様に口を開いた。




「その…まず確認なんじゃが…おぬし、ワシが見えておるのか?」




恐る恐るというか、観念してしぶしぶといった様子で確認してくる。




俺は首を縦に振って肯定する。




するとケモミミ幼女は更に驚いた様子でつづけた。




「見える、どころか声も聞こえておるようじゃな…しかし…八雲四季…八雲四季…八雲…あ、おぬし、ハルの孫か!?」




何やら話が見えてこないのだが、ハルとは…うちのばあちゃんの名前だ。




「えっと…どのハルさんなのかは知らないけど、うちのばあちゃんはハルって名前だよ」




「いや…すまぬ、筋骨隆々でババアのくせにやけに気合の入った体力満タンの筋肉達磨の様な逞しいババアのハルじゃ!」




あー…その様子だと、間違いなくうちのばあちゃんだ。




「ああ、御年七十九歳で来年八十だからって記念に太平洋横断を計画するくらいパワフルで病室にダンベル持ち込んで筋トレするくらい体力満タンの筋肉達磨なゴリラババアってんなら間違いなくうちのばあちゃんだわ…」




「あやつ…そのようなことをしておったのか…どおりで毎年体がデカくなっておる気がしたのじゃ…って、そんなことはどうでもよい!病室と言ったか!?ハルに何かあったのか!?」




と、一気にまくしたてる様に言い放つケモミミ幼女。モフモフの尻尾をブンブンと大きく左右に揺らし前のめり気味にこちらに問いかける。




「ああ、えっと…何というかその…詳しく説明させてもらうと…」




俺はここに来ることになった経緯を説明することにした…。




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