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つるつるもちもちと悪い狼

コンの話が本当なら、飯を食ってる場合じゃない。


俺は席から立ち上がると、コンの手を掴み走り出そうとしていた。


その勢いで、コンは椅子から転げ落ちそうになっていたが、何とかバランスを保って着地して、立っていた。


「今行けば間に合うかもしれない!」


「うおっ!?」


と、追いかけようとすると俺を樹が静止する。


「待ちなさい、四季ちゃん」


「急がないと見失うぞ!」


そう言う俺はやはり、成果が上がらないことに焦りを感じていたのかもしれない。


半ば強引に手を引いて走ろうとしている俺を制す樹は、コンの方を指さして言う。


「その、四季…急ぐのは分かるのじゃが…ちと、痛いのじゃ…」


と、苦悶の表情を浮かべるコンの姿がそこにはあった。


「あ、すまん…」


と、俺がその様子を見て手を放すと、コンは手首を軽く振って息を吐く。


「ふぃ~取れるかと思ったのじゃ…」


手首に「ふー、ふー」と、息を吹きかけ、撫でているコン。


焦る気持ちを抑えて、樹に尋ねる。


「なあ、今行けばまだ探せると思うのだが…どうして止めた?」


と、俺が尋ねると樹は涼しい顔をしてうどんを啜っていた。


ずるずると、音を立ててうどんを啜る樹。


その表情は極めて冷静で、逆に俺は焦りを感じていた。


「なあ、何とか言ってくれよ」


と、詰め寄ると樹は静かに口を開いた。


「落ち着きなさい、四季ちゃん。ああいう輩の行く所なんて大体予想が付くわ。今は先に腹ごしらえよ。長丁場になるかもしれないわよ?だったら食べれる時に食べておきなさい」


樹のいうことにも一理ある。


ただ、検討ったって…一体どこに行くつもりなんだ?


「ああ、それは分かってるが…一体どこに行くんだ?」


俺は席に座ると、コンも着席しただならぬ雰囲気の俺と樹の顔をきょろきょろと見比べていた。


尚も気にせずうどんを啜り続ける樹だったが、俺の問いかけを受けて、一度うどんを啜る手を止めて花奈と顔を見合わせると、樹の代わりに花奈が答えた。


「ああいう輩は大体ゲーセンか、駐車場に行けば分かるっす!」


「大体そんなもんよ」


そう言うものか?と疑問に思ってしまったのだが、ある種確信めいた言いぐさをする花奈のその絶対的な余裕は一体どこからくるものなのだろうか?


俺は疑問に思い、尋ね返すと花奈は答えた。


「何故そう言い切れる?」


樹は俺の目を見て、まっすぐに答えた。


「あいつら、胸にチームか何かの名前が入った服着てたっす。二人共揃も揃って同じデザインの!」


「チーム?」


「そうっす」


花奈は頷き、一度言葉を区切ってから続ける。


「確か…BadWolves(バッドウルヴス)っすか?そういうロゴみたいなのを付けてたのです!」


BadWolves…悪い狼なんて率直な名前だが、調べてみる価値はありそうだ。


「なるほどな…?言われてみれば確かに…」


一瞬だけだったから何とも言えないが、確かにそんなものを付けていた気がする。


花奈が見ていたなら確実だろう。


「多分あれは半グレ集団か暴走族とかそういうやつよ」


樹がそう言うと、止まっていた手を動かしうどんを再び啜り始める。


となると、ちょっと厄介だ。


一般人である俺らがと因縁をつけてしまっては、逆に嫌がらせ等の被害を被るかもしれない。


こいう時樹の冷静さには救われている。


どうしても、手がかりがあると俺は猪突猛進気味になってしまうのだが、情報を集めてからでも遅くはない。


チーム名というか、そういう組織に淀みの反応があったことが分かっただけでも大きな進歩だ。


焦ってしくじる様な真似はしたくなかったので、樹に感謝せねばなるまい。


「まあ、今から追いかけても良いけど、何て言うつもり?まさか、仙狐水晶取りましたか?って直接訪ねるわけ?そんなことするよりは、まずは情報を集めましょ?」


樹は箸を動かして、食べる手を進めた。


ズズズとうどんを啜り、コップに入った水を一気に飲み干すと「ふぅ…」と、息を吐いて、紙ナプキンで口を拭う。


全く持ってその通りである。


今直接コンタクトを取ったところで、相手にされないどころか、因縁を付けられてしまう可能性の方が高い。


俺は自分の愚かさに辟易しつつ、素直にうどんを食べて頭を冷やすことにした。


「はは…全くその通りだ…いただきます」


と、手を合わせて備え付けの箸入れから割りばしを取ると、力を入れて箸を割る。


「のびてるわ…」


そうこうしている内に時間が経ってしまい、麺は伸び、汁は冷めて人肌程度の温度になっていた…。


「あ、呼び出されたから取ってくるっす!」


と、さっきから黙ったままだった呼び出しベルが鳴り、花奈は手元のベルを確認すると、パスタを取りに行ってしまった。


コンはコンで俺がいつまで経っても食事に手を付けないものだから、待ちくたびれてしまっていた。


「のぅ…おぬしよ…もう、食べてもよいか…?」


と、しおれた耳と尻尾を力なく揺り動かし、確認を取ってくる。


目の前に大好物の稲荷寿司をぶら下げられて、ずっと待ての状態だったのだ。


そりゃ、辟易もするわな…悪い事をした…。


「ああ、すまん!コン食べても良い!というか、待たせて悪かった!ほら、俺のお揚げもやるから元気出せ!」


と、きつねうどんの上に乗っている厚めの油揚げを箸で摘まんでコンの方へ差し出すと、コンは元気を取り戻し尻尾と耳も激しく揺れ動きながらそれを一口でパクっと咥え、飲み込んでしまった。


「んふ~!うまいのじゃ~!」


満足そうにお揚げを頬張ると、汁が飛び散るのもお構いなしに咀嚼する。


頬に手を当てて身体を身震いさせ、全身で喜びを表している様だった。


待たせてしまったお詫びに、満足してくれたのならまあいいか。


買ったばかりの服に汁が飛び散るのを防ぐ為、紙ナプキンを広げてエプロンの代わりにし、コンの首元に挟む。


「服が汚れるからこれ付けとけ…誰も取ったりしないからゆっくり食べろ。食べたらまた探索行くから、しっかり食っとけよ?」


と、自分に言い聞かせるようにコンに指示する。


コンは俺の言葉に一瞬きょとんとしてめをぱちくりとしていたが、すぐにコクンと頷き「あいなのじゃ!」と、ニコリと笑うと皿の稲荷寿司を手で掴み次々に口に運んでいた。


とりあえず、俺も伸びてしまったうどんに手を付ける。


汁を吸ってふにゃふにゃになってしまった麺は、箸で摘まむと簡単に千切れてしまい、コシが無くなってしまっていた。


きつねうどんからお揚げを取ってしまったのでもはやただのかけうどんなのだが、こうもふにゃふにゃになってしまっていると、あまり美味しくはなかった。


温くなったうどんを半分ほど食べ進めると、花奈も戻ってきて一緒に食事をする。


花奈はどうやらカルボナーラを注文していた様で、熱々の湯気を立てるチーズの良い匂いがした。


「コンちゃん、こっちも食べてみる?」


と、カルボナーラをフォークにくるくる巻いてコンに差し出すと、コンはスンスンと匂いを嗅いで恐る恐るといった様子でパクリと口にした。


二、三回咀嚼すると、不思議そうに首を傾げるがゴクリと麺を嚥下するとすぐに笑顔になっていた。


「うま!なんじゃこれ、塩っけともちもちで口の中がじゅわーなのじゃ!花奈もっとくれ!」


その様子を見て花奈はほほ笑む。


「お、気に入ってくれてよかった~!これね、カルボナーラっていうの!チーズと卵で出来てるんだよー?」


そう言いながら、フォークにパスタを巻き付け「ふーふー…」と、冷ましてからコンの前に差し出すと、コンはすぐにパクリと口に入れて、咀嚼する。


「かるぼなーら…うまいのじゃ!んふふ…このつるつるともちもちが絶妙なのじゃ~!」


と、これまたニコニコと笑顔で尻尾と耳をぴこぴこ動かし舌鼓を打っていた。


俺の方も伸びたうどんを食べ終え、器を持ち上げ出汁まで飲み干すと、ナプキンを取り口を拭く。


「ご馳走様」


「ごちそうさまー!なのじゃー!」


と、言って花奈とコンの様子を伺っていると、コンは自分の分の稲荷をすぐに食べ終えて、花奈もコンに半分くらいはパスタを食われていたが、すぐに完食していた。


腹も膨れて満足なのか、コンは少し眠そうにしていたが、これから働いてもらわねば困るので、そのまま寝かせるわけにはいかない。


「こら、コン今から働いてもらうんだから…寝るなよ?」


「ふえっ!?」


と、釘を刺すと頬にご飯粒を付けたまま、涎を垂れ流しうたた寝しようとするコンはぶるぶると身震いして目を見開いていたが、しばらくするとまたコクコクと首が縦に揺れて、船をこいでいる様子だった。


さて、飯も食ったしとりあえず今後どうするかちょっと相談しないとだな。


俺は食ってすぐに眠そうにしているコンの口元を紙ナプキンで拭って、器をカウンターへ戻すと、席について樹と花奈に相談する。


「さて、じゃまずは何から始めようか?」


机に肘をついて、手を組むとコンも真似して「はじめるのじゃー?」と、可愛くポーズをとっていたのだった。


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