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ドライブとカロリーコントロールの友

時刻は現在朝九時を回ったところだ。




朝食を食べたり、調べものをしたりとなんやかんやしている内に、そろそろ出発するぞ、という時刻になってしまった。




「おーい、そろそろ出発するぞー?」




天気は快晴。




午前中ということで、まだそこまで気温は高くないが、勤勉な蝉達はもうすでに合唱を始めていた。




一応午後からはまた気温が上昇するとの事なので、熱中症対策はしておいた方が無難だろう。




現在俺は駐車場に出ていて、扉の向こうのリビングへ向けて声を掛ける。




リビングでは、慌ただしくも談笑する声が聞こえてくるが、何を言っているかまでは聞き取れない。




しかし、とにかくわくわくしていて、それを抑えきれないのだろうということだけは予想できた。




その証拠に大きな笑い声や、キャー…などと言った歓声が先ほどから上がっている。




俺はそんな喧騒を物ともせず、出発の準備を淡々と進めていた。




運転席側の扉を開き、リュックサックを車の助手席に放ると、閉め切っていた車内の熱気を飛ばすべく、窓を開けて少し換気を促す。




ウィーンと音を立てて四方の窓すべてが解放されると、朝特有の爽やかな風が吹き込み、溜まっていた熱気が外へと放出されていく。




少し湿り気を帯びているのは、やはり夏特有の湿度の高さが原因だろう。




今日も昼からまた熱くなりそうだ…等と考えていると、ガラガラとリビングの扉をスライドさせて威勢の良い声が聞こえてきた。




「ハル!とーこ!それじゃ、行ってくるのじゃ!」




と、舌っ足らずな幼子の様な声を上げて意気揚々と玄関から出てくるケモミミ幼女。




お出かけにテンションが上がってる子供にしか見えないが、これでも一応土地神様である。




俺は助手席の扉を開けて、コンをそこへ座るよう促すと、コンは見送りに出て来てくれたばあちゃんと母さんにブンブンと手と尻尾を振ると、車に乗り込みドヤ顔でシートベルトを締めていた。




「ふふふ…見ろ!しーとべると!自分でできるのじゃ!これで、大きなダンゴムシに食われる心配はないの?」




と、素っ頓狂な事を口走っているが本人はいたって真面目な顔をして本当に巨大ダンゴムシに襲われるかもしれない、と思い込んでいる様子だが、可愛いのでそのまま放置しておこう。




俺は苦笑を堪えて母さんとばあちゃんに会釈をすると、車に乗り込んだ。




窓からばあちゃんに「何か分かったら連絡よろしく」と、だけ伝えてキーを回すと、車のエンジンがブオオンと排気ガスを放出して回り始めた。




ドドドド…と排気ガスを放出し、アイドリング状態になったのを確認すると、ギアをDに入れて発進する。




前方確認をしてからアクセルを踏み込み車道に出ると、昨日コンビニに行った時に通った道をそのまま突っ切る。




昼と夜とでは景色が全然違い、すっきり快晴である今日は畑の向こう側にある中央区の方もよく見えた。




聳え立つビル群を指さして、コンは相変わらず「あれはなんじゃ?」と、興味が尽きない様子だったが、俺は「デカい鉄の筍だよ」と、あしらっていた。




後で怒られるかもしれない。




そんな他愛のない嘘にもコンは目を丸くしていた。




「うおぉお…すごいの、ワシあんなに大きな筍みたことないぞ…」




と、耳をピクリと動かして前のめりになり観察していたが、シートベルトのストッパー機能によって、前傾は静止されつっかかっていた。




「あれが筍のぅ…ほーん…ぐえっ!」




そんな様子が面白可愛くて、吹き出してしまったのだが、コンはそんな俺の様子にご機嫌斜めの様子だ。




「なんじゃ、人の不幸を笑いおってからに…祟るぞ!?」




と、八重歯をむき出しにして怒りを露あらわにするコン。




流石にこれは俺が悪いので、秘密兵器を取り出すことにした。




「まあまあ、ほらコンそこのリュックの前ポケットを開けてみろ」




と、助手席に放り投げていたリュックサックを指さす。




リュックサックはコンが助手席に座った際に、ダッシュボード下にずり落ちてしまったのだが、それを引き上げる様指示すると、コンは短い手を伸ばして懸命に引き上げていた。




「これか?よし、ちょっと待っておれ…んしょ…できたぞ!」




と、シートベルトのストッパー機能に苦戦していたが、何とかリュックを引き上げる事に成功すると、指示された前側のチャックを開ける。




「うおおお!こ、これは…!?」




と、素直にリアクションしてくれるコンに顔が緩みっぱなしなのだが、一度顔の筋肉を引き絞り、きりっとした顔を作り直してから俺は言う。




「着くまでまだ時間あるから、それでも食っとけ」




それは四角で黄色い箱に二つ子袋が入っている、一箱四本入りの総カロリー四百ピッタリのブロック型のビスケットだ。




賛否あるが、俺はメープル味が一番食べやすいと思うのでいつもその味を買っては常備している。




コンは俺の「食っとけ」という言葉に反応し、素早くそれを取り出すと、箱の匂いを嗅いだり、そのまま齧りつこうとしていたが、それは止めた。




「なんじゃ、これ?固くて…美味しくなさそうじゃぞ…?」




「違う違う。そうじゃなくて、それはただの箱。その中に袋が入っているからそれを取り出して中身を食べるんだ…」




「おお、そうであったか!それならそうと、はよ言わぬか~」




と、上機嫌で今度は外箱の窪みに指を突っ込み、箱を引き千切るとびりびりに破いて中身の袋を取り出す。




「のう、これは…食えるのか?」




と、外側のフィルムを訝し気に眺めて、ペロリと舌を出して嘗めていたが、味は微妙だったようでそのまま俺の膝の上に放り投げてきた。




「主が食え…これは、あまり美味しそうではないのじゃ…」




と、外側のフィルムを嘗めただけで判断したコンは、窓の外に視線を移し退屈そうにシートにもたれかかっていた。




「あのなあ…」




と、少し呆れ気味に言うと放り投げられた袋の一つを手に取り、右手はハンドルに添えたまま、左手と口を使ってフィルムを破る。




すると中からはメープルシロップの甘い香りと、ブロック状に形成された長方形の見慣れたビスケットが顔を出した。




「ほら、これを食べるんだよ…」




と、一本口に咥えてもぐもぐと咀嚼していると、窓の外を見て興味なさげだったコンも、甘い香りに誘われて、視線がビスケットに釘付けになっていた。




「な、なんじゃあ…そ、その…四季?それ、うまいのかの~?ワシもくいたいのぅ~?」




と、猫なで声を発しておねだりしてくる。




「ほら、口開けろ」




と、ビスケットを差し出すとコンは素直に口を大きく開き待機している。




「あーん!」




「よっ!」




「んふ!ふまひのひゃ!」




と、口にビスケットを突っ込んでやると満足げに頬張りもぐもぐと咀嚼して、ゆっくりと飲み込んだ。




「ん~~~~っ!うまい!なんじゃこれ…最初はまずかったが…中身はものすごく美味しいのう!のう、おぬし、もっとくれ!」




と、二本目をおねだりしてくるコンは口の横に粉を付けていてもお構いなしの様子だ。




全く…なんて可愛いやつなんだ。




「ちょっと待ってろ今開けるから…」




と、二つ目の袋を同じ要領で開けて、中身を二つともコンに渡してやる。




「はぁぁぁっ…!!」




と、二個とも受け取り、両手で持ってあぐあぐと齧りついていた。




あまりお上品とは言えないが、この程度でこんだけ喜んでくれるなら後で掃除せねばならんことには目をつむろう。




俺は嬉しそうに頬張るコンの姿を横目に運転に集中すると、目的地まで急ぐのだった。




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