表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/49

クエスト受注

「はあっ? LP1とかゴミにもほどがあんだろ。他当たれよ」

「あなたとパーティーなんか組むわけないでしょ?」

「失せろ悪魔の子(フォーチュンデビル)! パーティーの士気が下がる!」

「悪いですけど、君とパーティー組むとか論外です」


「ちょ、ちょっと待って……!」


 翌日、冒険者ギルドへ行って、学生時代の知人に声をかけてみたけど……。

 僕が成人の儀式で最低なステータスを授与されたって話は有名みたいで、話すらまともに聞いてもらえなかった。


「みんな、前はもっと普通に話してくれたのに」


 魔法やスキルをたくさん習得したベテランの冒険者(シーカー)ならともかく、僕は何も覚えてない非力なLP1だ。メリットのない僕と組みたがる人がいなくて当然と言えた。


(現実は甘くないってことか)


 きっと、セシリアとパーティーを組んでいた時も、周りからは金づるの犬としか見られていなかったんだろうな。悲しいけど。


 こうなると、あとはソロでダンジョンに挑むしか道は残されていない。


 冒険者は諦めて他の仕事に就くっていう選択肢もあるけど、僕は考えていなかった。

 だって、それはノエルの病を完治させるのを諦めるってことを意味しているから。


(一流冒険者の証(シーカーライセンス)がどうしてもいるんだ。それで、必ずノエルをグレー・ノヴァまで連れて行く)


 自分に言い聞かせるように心の中で呟くと、なんだかやる気がみなぎってくる。


 クリアすることはできなくても、E級ダンジョンにソロで入ったって実績ができれば、今後入れてもらえるパーティーだってあるかもしれない。

 今の僕にとっては果てしない道のりだけど、諦めるわけにはいかないんだ。




 ◇




 決意を新たにして、クエストの受付窓口へと向かう。


「いらっしゃいませ~! 冒険者さま♪」


「こ、こんにちは……」


 にっこりと笑みを作った美人の受付嬢に出迎えられる。これまでクエストの受付はすべて任せていたから初めての経験だ。


「あの、すみません。クエストの受注をしたいんですけど」


「もちろん歓迎ですよ~。では、まず冒険者さまのステータスを確認させてください」


「は、はいっ」


 首にぶら下げたビーナスのしずくに触れて、水晶ディスプレイを立ち上げると、それを受付のお姉さんに見せる。


 うわぁ、じっくり見られちゃってるよ……。

 こんな貧弱なステータスを見られてめちゃくちゃ恥ずかしい。


「? パーティーが無所属となってますね。パーティーの申請はされましたか?」


「あっ! 実は昨日パーティーを抜けちゃいまして……」


「そうなんですね~。でしたら、まずはパーティーに入っていただく必要があります」


「え……あの、入らなきゃいけないんですか?」


「はい。そういう決まりとなっております♪」


 やっぱりパーティーに入らなきゃいけないの!?

 最悪だ。結局、ダメじゃん……。


「え、えっと……。ソロでダンジョンに入りたいんですけど……」


 一応、ダメ元でそう言ってみる。


「ソロでもパーティーに入っていただく必要があるんですよ?」


「えっ、そうなんですか?」


「ソロというのは便宜上そう言っているだけでして、皆さまお1人でもパーティーに入っていただいているんです。その方がお仲間ができた場合、組んだりするのが簡単ですから。どちらかのパーティーに入ってしまえばそれでおしまい。タイクーンもはっきりしますし」


「は、はは……そうだったんですね!」


「なので、ナード様は、まずご自身のパーティーを登録してからまた受付にいらしてください! 登録は、通路奥にある窓口ですることができますよ~」


「ありがとうございます……!」


 深々とお礼をすると、僕はその場を一旦離れた。


(なるほど、そっか)


 こういった申請は全部タイクーンの役割だから、僕はやったことがなかったんだ。

 これからは、申請も受注も換金も1人でやっていく必要がある。


(僕がしっかりしないとだよね)


 言われた通り、通路奥の窓口でパーティーの登録をしてから戻ってくる。


「……【叛逆の渡り鳥(バードオブリベリオン)】。いいパーティー名ですね♪」


「ど、どうも……」


 【叛逆の渡り鳥】。

 それが僕が付けたパーティーの名前だった。


 今はまだ弱々しい存在だけど、いつかは渡り鳥のようにこの国を飛び出したい。

 そんな意味が込められている。

 それに、もう1つ。ここから見返してやるって気持ちも込めた。


「それではナード様。これからクエストのご紹介をいたします♪」


「はい、よろしくお願いします」


「え~っと、ナード様のLP値は1ですので、E級ダンジョンのみのご案内となりますね」


「空きはありそうでしょうか?」


「確認しますね♪ 少々お待ちください~」


 受付のお姉さんは縦長の水晶板を取り出して、画面をスクロールさせていく。


 ダンジョンへのクエストは基本的に登録制だ。

 登録されたダンジョンに他のパーティーが入ることは許されず、罪に問われる行為とされている。


 また、一度入ったダンジョンは、2週間入ることができない。これは、魔光石の独占を防ぐために冒険者ギルドが独自に決めているルールだったりする。

 

 E級ダンジョンはLP1の冒険者でもソロで入れるため、その人気は高く、埋まっていることがよくあるみたい。


 ちなみに、シルワ王国が管理下に置くダンジョンは以下の通りだったりする。


-----------------


・A級ダンジョン=1箇所

・B級ダンジョン=10箇所

・C級ダンジョン=15箇所

・D級ダンジョン=30箇所

・E級ダンジョン=100箇所


-----------------


 こんな感じでE級ダンジョンは100箇所はあるんだけど、1週間待ちとかよく耳にする話だ。


 その間は稼ぎを得ることができないから、LP1のソロ冒険者は兼業である場合も多い。

 さすがに1週間もお金が入ってこないっていうのはつらいし、その気持ちはよく分かる。


 どうか空きがありますようにと、祈りながら受付のお姉さんの答えを待っていると……。


「あ、ナード様! 1つだけ空きがありました。今なら【グラキエス氷窟】のクエストを受注できますよ~」


「ほ、本当ですか!? じゃあそこでお願いしますっ!」


「かしこまりました♪ 少々お待ちくださいね」


 水晶板での操作が終わったのか、受付のお姉さんは【グラキエス氷窟】と刻まれた銀色のメダルを差し出してくる。


「こちらがクエストの許可証となります。10日以内に受付まで返却してください~」


「はい、ありがとうございます!」


 どうやら運が良かったようだ。タイミングよくクエストの受注が通った。


 これで10日間は、【グラキエス氷窟】は僕専用のダンジョンってことになる。

 あとは、魔光石を手に入れてクリアするも、途中でリタイアするも、すべて自分次第。


「よし、がんばろう!」


 両手で頬を叩いて自分を鼓舞すると、僕は冒険者ギルドを後にした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ