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C級ダンジョンへの挑戦

「ふぅ……。危なかったぁ……」


 冒険者ギルドの受付を出て、額の汗を拭う。

 すっかり、1ヶ月に1ポイントLPが減るってことを忘れていたよ。


 現在のLPは11。


 なんとかC級ダンジョンのLP制限はクリアして、無事にクエストを受注することができたわけだけど……。


「自分のLPが下がってるのを見た時は、けっこうショックが大きいよね」


 でも、これはみんなが経験していることなんだ。誰もが歳を重ねることへの恐怖に怯えている。


 <アブソープション>のおかげで、LPは簡単に手に入るものだって勘違いしちゃっているけど、そうじゃない。

 このスキルがチートすぎるだけで、本来ならLPが増えるなんてことは絶対にあり得ないんだから。


 そんなことを考えながら、ギルド内を歩いていると。


「あいつ、悪魔の子(フォーチュンデビル)のくせに、ソロでE級クリアしたらしいぜ?」

「どうせあれだろ? 大司祭様に大金貢いで、パラメーター上げてもらったんだろ」

「今、めちゃくちゃ借金して、相当追い込まれてるんだろうな」

「E級クリアなんて、まぐれでしょ」


 そんなヒソヒソ話が聞こえてくる。


(なんかすごい言われてるなぁ……)


 悪魔の子が冒険者ギルドに出入りしているのが珍しいのか、前から僕はよく噂話の対象にされてきた。

 それにしても、以前よりもその数が増えたような気がする。


 放っておいてほしいっていうのが本音だけど、内心少しだけ見返せたっていう気分にもなっていた。


 でも、まだこんなものじゃ足りない。

 これまで散々バカにしてきた人たちを見返すためにも、さらに結果を出してみせる。


 ちょっとした野心を抱きながら、僕は冒険者ギルドを後にした。




 ◇




「これで一式揃ったかい?」


「はい、ありがとうございます」


「毎度。今後も何かあればうちを頼ってくれよな」


 店主に頭を下げて武器屋を後にする。

 この前は不愛想な人に見えたけど、今日は笑顔が見えた。


(たくさん購入したから、ちょっとは認めてくれたのかな)


 いい武器や防具を身につけることは、冒険者(シーカー)として一目置かれる理由になる。

 まだ、決して高価な武器や防具が買えるようになったわけじゃないけど、それでも少しは様になったような気がする。


-----------------


◆売却リスト

・獣牙の短剣×1=800アロー

・毛皮の服×1=200アロー

・魔獣の卵×1=300アロー


◆購入リスト

・ウルフダガー×1=2,600アロー

・革の鎧×1=3,500アロー

・バックラー×1=3,000アロー

・シルバーグラブ×1=1,800アロー

・ポーション×2=1,000アロー

・マジックポーション×3=3,000アロー

・水晶ジェム×9=900アロー


-----------------


 道具屋にも寄ったし、これで準備は万全。


 結界越しの青空を眺めながら城下町の大通りを進み、今回も前回同様に城門にいる2人の警護兵に挨拶をする。もうちょっとした顔馴染みだ。


「こんにちは。ナード・ヴィスコンティさん。本日もクエストですか?」


「はい。でも、今日は【グラキエス氷窟】じゃなくて……えっと」


 懐にしまった許可証のメダルを警護兵に見せる。


「……【プロケッラ風穴】ですか。もうC級ダンジョンとは早いですね」


 さすが警護兵だ。

 おそらく、すべてのダンジョンを記憶しているんだろうな。


「【プロケッラ風穴】でしたら、ここから少し離れていますね。徒歩でも行ける距離ですが、1時間以上かかると思います。よろしければ馬をお貸ししますが、どうされますか?」


「なるほど……。じゃあすみません。お願いします」


 馬の扱いは学校の演習で経験済みだ。

 貸してもらえるのなら、それに越したことはない。


「では、1日500アローとなります」


 魔法ポーチの中から青銅貨を5枚取り出すと、それを警護兵に渡す。

 所持金はまた底を尽きてしまったけど、仕方ない。


 今の幸運値なら、多分お金も拾えるだろうし、体力優先にしよう。

 ダンジョン攻略前はできるだけ疲労を溜めない方がいい。


「北西の森を越えた先に、大きな渓谷が見えてくるはずです。そのあたりに【プロケッラ風穴】はあります。少し危険な場所にあるのでご注意ください」


「ありがとうございます」


 手を振る警護兵に別れを告げると、僕は馬を走らせて【プロケッラ風穴】へと向かった。




 ◇




 森を越えると、言われた通り大きな渓谷が目の前に広がる。


「この辺りだと思うんだけど……」


 片手で地図を持ちながら、乗馬したまま小さな川を越えると、ごつごつとした岩場が見えてきた。

 少し先に目印の旗が確認できる。あれかな。


 近くの大木にロープで馬を括りつけると、降りて近付いてみることに。


 受付のお姉さんの話だと【プロケッラ風穴】はその名前の通り、ダンジョン内に大小いくつもの風穴が空いていて、そこから突風が吹き上がるらしい。

 内部は風が強く、突然足元をすくわれて、転倒する冒険者が多いから注意が必要って言ってたっけ。


 けど、そこを除けば、ほかのC級ダンジョンに比べて特異な点はなく、攻略難易度はそこまで高くないみたいだ。

 ボス魔獣のメガリスグリフォンも、きちんと攻撃パターンを覚えてしまえば、比較的楽に倒せる相手のようだし。


 でも、当然油断は禁物だよね。

 C級ダンジョンの魔獣がどれくらい強いか、僕は知っている。

 <バフトリガー>をONにしなかったら、ダンジョン内に足を踏み入れることすらできないに違いない。


 岩に足を取られないように気を使いながらそのまま進んでいくと、斜面に【プロケッラ風穴】の入口が見えてくる。

 巨大な蔦の絡まった外観は、ダンジョンの入口っていうよりも小動物の隠れ家って感じだ。


「1回ステータスを見ておこうかな」


 入口の手前で立ち止まると、首からぶら下げたビーナスのしずくに触れて、水晶ディスプレイを立ち上げる。

 中に入っちゃうと何が起こるか分からないから、ここでまず自分の現状を確認することに。


-----------------


[ナード]

LP11

HP150/150

MP130/130

攻106(+15)

防106(+25)

魔攻106

魔防106

素早さ106

幸運110

ユニークスキル:

<アブソープション【スロットβ】>

<バフトリガー【ON】>

属性魔法:《ファイヤーボウル》

無属性魔法:《瞬間移動(テレポート)

攻撃系スキル:<片手剣術>-《ソードブレイク》

補助系スキル:《分析(アナライズ)》《投紋(キャスティング)

武器:ウルフダガー

防具:革の鎧、バックラー、シルバーグラブ

アイテム:

ポーション×2、マジックポーション×4

水晶ジェム×20

貴重品:ビーナスのしずく×1

所持金:0アロー

所属パーティー:叛逆の渡り鳥(バードオブリベリオン)

討伐数:E級魔獣80体、E級大魔獣1体

状態:ランダム状態上昇<雷魔法10倍ダメージ>


-----------------


「……あれ? バフの効果が変わってる?」


 【状態】の項目には、<雷魔法10倍ダメージ>と表示されていた。


「あ、そっか。 ランダム状態上昇は、日によって変わるんだっけ」


 今日は雷魔法の攻撃威力が上がるようだ。相変わらずその内容はバグっている。


 10倍ダメージとか、魔獣側からしてみれば、たまったもんじゃないよね。

 逆の立場だったらって考えると寒気がしてきた……。


 ひとまず、水晶ディスプレイを指で弾いて、雷魔法一覧を表示してみることに。


-----------------


◆初級魔法-サンダーストライク/消費LP20

内容:敵1グループに雷魔法ダメージ(小)を与える

威力30ダメージ/詠唱時間4秒

消費MP5


◆中級魔法-プラズマオーディン/消費LP50

内容:敵1グループに雷魔法ダメージ(中)を与える

威力80ダメージ/詠唱時間6秒

消費MP10


◆上級魔法-ライトニングヘブン/消費LP100

内容:敵1グループに雷魔法ダメージ(大)を与える

威力250ダメージ/詠唱時間8秒

消費MP20


-----------------


「やっぱり、今のLPじゃ何も覚えられないか」


 最低でもLPをあと10は増やさないと。

 ダンジョンに入ったら、まずはある程度LPをためる必要があるかな。


「《サンダーストライク》の消費MPは5だから、習得したら合計で26回は撃てる計算なんだ。まあ、その前に水晶ジェムが足りないけど」


 けど、雷魔法はグループ攻撃が可能だから、なるべく魔獣が隣接した状況で使えば、効率よく一気に討伐することができる。

 10倍ダメージのおかげで、多分そこまで苦労せずに倒せるはずだ。


「よし、それじゃ行こう」


 現状を確認し終えると、僕は【プロケッラ風穴】の内部に足を踏み入れた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 初級魔法以外、つまり中級魔法と上級魔法は習得する意味はあるのか? LP1でステータスを1上げる事が出来る事から、中級を取得するLP50で魔力を50上げれば、初級魔法の威力は元の30と魔…
[気になる点] LP1って知れ渡っているのにLP10必須のC級クエストを受けても疑問に思われないってどういことなんでしょ?
[良い点] 面白いです。 [気になる点] 主人公が家賃忘れてたり、武器買わずにダンジョン入ったり、スキルの存在、効果忘れてたり。 このへんすこし気になった。
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