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お嬢様と誘拐

 突然だが、この世で一番重要なものはなんだと思うだろうか。


 奥さん、または夫を持つために有利な美顔? 良い未来を歩くために重要な学力? はたまた、誰にでも優しい性格?


 否。そんなものすべて否である!! この世でもっとも重要なもの、それは……、



 金だ!!



 男や女など金があれば嫌でも寄ってくる。優秀な学力も結局金があればいらない。優しい性格もさっき言ったように金があれば人は寄ってくる。


 こんなことを言っていると「そんなことはない」と言い出す輩もいるだろう。それは断じて違う。

 なぜなら俺が、イケメン・優秀な学力・誰にでも優しい性格のすべてを兼ね備えているのにも関わらず、俺の家がかなりの貧乏だと知ったとたんに皆離れて行く。


 ちらりと歩道に目を向けると、黒のリムジンが停車していた。

 こんな車に乗っている人は、きっと俺とは無縁な人生を歩んでいるんだろうな。

 ゆえに――、


「金が欲しい」


 ポツリとそう呟いた瞬間、突然リムジンの扉が開き、グラサンをかけた屈強な二人の男の人が出てきた。

 そして、俺の方に向かってきて、ガシッと俺の両腕を掴むとリムジンの中に押し込もうとする。


「なっ、ちょっ、お前ら! 離せ!」


 必死に抵抗したが、2対1の状況。さらに相手は屈強な体の持ち主、当然そんな抵抗は無意味だった。

 やがて抵抗虚しく、リムジンのなかにねじ込まれてしまった。


「ちっ、何なんだよおま――」


 バタンッ


 やがて俺をねじ込んだ二人は、運転席と助手席に座り、車を発進させた。


「マジで何なんだよ!」


「ご安心ください、私の家に向かうだけですので」


 まさか俺と、俺を誘拐したやつの他にも人が乗っているとは思わず、驚きながらも声のした方にゆっくりと振り替える。

 車の奥、少し暗いが人が一人いた。

 目をよく凝らすと、豪奢な真っ赤なストレートヘアの美少女が紅茶を優雅に飲んでいた。やがて、カップから口を離し、ルビーの瞳が俺をとらえる。


「大空弘人くんで合ってるわよね?」


 透き通るような声で、俺の名前を呼ぶ。


「ああ」


「私が見間違えるなんてことはないと思うけど、一応安心したわ」


 ふぅ、と息をこぼし、再びティーカップに口をつける美少女。


「ねぇ、弘人くん」


 いきなり名前呼びかよ、と言おうと思ったが、今の俺のおかれた状況を思いだし、無言で彼女の次の言葉を促す。


「たしか……お金が欲しいのよね?」


「そりゃあ、まぁ。欲しい」


「くふふ、素直でいいわね」


 「そう」と悪魔的な笑みを浮かべ、彼女の次の言葉を聞いた瞬間に俺は固まる。




「私と結婚すれば解決よ、くふふ」


「はい?」


「いい、弘人くんはお金がないのよね」


 ビシッと人差し指をたてながら俺に向ける。

 ……ティーカップの中身こぼれるぞ。


「ああ」


「私はあなたが欲しい。とってもあなたが欲しい。そして、私と結婚すれば一生分のお金が手に入る。これは一種の取引よ」


「はぁ」


「どう? 悪くない条件だと思うけど」


 そこまで喋り、口を潤すためかたまティーカップに口をつける。いちいちその動作が綺麗で見とれてしまう。


「それで? どうかしら?」


 再びルビーの瞳が俺をとらえる。


「この場では決めかねる」


 だってそうだろ。確かに金は欲しいが、そんなに簡単に手に入らないから金は価値があるんだ。


「そう、とりあえず弘人くんは私の家に来てもらうわ」


 目の前のケーキスタンドに手を伸ばし、美味しそうにマカロンを頬張る彼女。


 ――俺、一体この後どうなんだ?


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