おめでとうございます 貴方は選ばれました
ジリリリリリリリ!
俺の安眠を阻害するかのように目覚まし時計の音が脳内に響き渡った。
重い腕を動かして目覚ましのスイッチを切る
「・・なんだ もう朝か・・ 大学行かなきゃ・・」
顔を洗い、トーストの準備をして、テレビを見ながらそれを口に放り込む
食べ終わったら水を一杯飲んで歯磨きして着替えて出発
これが俺の朝のルーティン
大学までは徒歩で約20分かかる その間俺はアニソンをかけながら登校するのが好きだ
10日に1回はJpopや洋楽を聞くこともあるが、基本はアニソンだ
教えて! 教えてよ! 貴方の秘密・・
「おはよっ!」
曲がサビのいい部分に差し掛かろうとした時突然後ろから肩を叩かれた。
蓮奈だ
「まーた音楽聞きながら歩いてたでしょ!それワイヤレスだし周りの音聞こえないから危ないよ!
気づかないうちに後ろから車に轢かれても知らないんだからね!」
坂崎 蓮奈
こいつとは幼馴染で幼稚園からの顔見知りだ 小さい頃から頭が良くて全国模試で名前入りするほどの神童なのにどういうわけか俺と同じ小学校 中学校 高校 そして大学まで一緒になってしまった
顔も幼馴染視点からでも可愛いし身長も165cmあってスタイルも悪くない
「大丈夫だよ 俺も馬鹿じゃないから周りには気を配ってる」
「ほんとかなー?そんなこといって前にバイクに轢かれそうになったのはどこのだれかさん?」
「・・・あれは・・まあ・・なんだ・・その」
「言い訳無用! さ、行くよ!1限が始まっちゃう!」
蓮奈はそういって走り出した 俺も後を追う
1限は大講義で講義室はとても広いのだが、なんとまあいつものことながらスカスカだ
「なあ蓮奈 俺らって偉いよな 1限なのに出席して」
「それが当たり前なの! もう!なんで他の生徒は来ないんだろ?」
大学ってのは面白いもので、学期の初めは受講者の大半が一応出た方がいいだろうってことで出席するのだが、回を重ねるごとに「この講義はカモだ 教授が優しいから出席しなくても単位が取れるぞ」
と噂が広がり始め結局最初の講義の受講者の6割くらいに落ち着くのだ。 その中でもこの1限は寝坊する者も大量に現れるので日によっては3割くらいしか来ないこともある。まあ例には漏れず俺もその一人だったのだが、蓮奈が来ないんだったらテスト勉強一緒にしてあげないよっていうんで渋々参加しているというわけだ。
まあなんにせよ朝から経済学の講義は苦痛だ。市場のトレードオフだなんだのという話を延々と聞かされ、
頭が何度もうなずく作業を繰り返すとようやく解放のベルが鳴った。
「ああ・・終わった・・」
「1限からそんな調子で大丈夫なの?」
「大丈夫なわけあるか・・今すぐにでも帰りたい・・」
「はあ…なんでシュウってそんなにだらしないのかしら・・ いつになったら大学生の自覚を持ってくれるのかな?」
「うるさい」
「それより次の講義ってお昼挟んだ後よね? じゃあさご飯でも食べに行かない?私美味しいお店知ってるんだ」
「お昼?まだはやくない?ちょっと図書館で寝たいんだけど」
「そうね お昼には少し早かったかも じゃあさ私の行きたいとこ寄ってからご飯にしない?」
「・・行きたいとこってどこだよ」
「映画館!新作の映画が出たらしいんだ!ハリウッドでも話題の超大作なんだよ!」
「映画ねえ・・まあいいけど どうせすることもないし」
「やったあ!じゃあ行こ!」
「わかった その前にトイレ行ってきていいか?なんか腹が痛い・・」
昨日なんか変なものでも食べたか?思い当たる節はないけどな・・
「オッケー 外で待ってるね」
俺は腹を抱えたままトイレへと直行した 痛みが引く気配はなくさっきより一層激しくなった
やべえ・・なんだこれ・・俺マジで死ぬかも・・
その時トイレのドアの向こうから声が聞こえた
「おめでとうございます 貴方は選ばれました」
選ばれた?何の話?
「貴方は私達の世界で人生をエンジョイする権利が与えられたのです」
淡々とした口調で話す物言いに俺は少し身震いがした
頭のやべー奴がこの扉の前にいる