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消失  作者: もんじろう
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6

 今すぐ、こちらからかけ直そうかとも思ったが、村松は熱で寝込んでいるから、また塔子が電話に出るだろう。


 それに。


 何というか後日、村松と話が出来たとしても何らかの形で塔子に伝わってしまい、ややこしくなるではないか?


 そう考えると、この件に積極的に関わるのに二の足を踏んでいる自分が居た。


 そして実際、僕から村松に連絡はせず、気がつくと3ヶ月が過ぎていた。




 日々の忙しさで僕は村松を忘れた。


 否。


 そう言うと嘘になる。


 頭の隅に、いつも村松は居た。


 あれから村松がどうしているのか?


 電話をかけてきた塔子とは、いったい何者なのか?


 本人が言う通り、本当に村松の恋人なのだろうか?


 いくつもの疑問が常に頭の中を駆け巡っていた。


 けれど、僕はそれを無理矢理、抑え込んだ。


 電話がかかってきた以上、塔子は実在する。


 それは間違いない。


 ということは村松に接触するのは、再び塔子を刺激してしまう可能性がある。


 電話口で声高に話す塔子の声を思い出すと、げんなりしてしまう。


 また、あんな風に怒られるのは避けたい。


 その思いが村松について考えるのを保留させていた。


 他に考えるべきことがあるはずだと。


 実際、仕事や和美との生活で僕の毎日は充実していたから、村松については上手く後回しに出来た。


 だけど、あの日。


 村松と最後に逢って3ヶ月が過ぎた、あの日。


 僕のスマホが鳴った。


 仕事が終わり、家で和美の手料理を食べ終わったばかりだった。


 僕はスマホの画面を見た。


 村松からだ。


 僕は、ぎくっとした。


 避けていた案件が、ついにやって来た。


 まさか、また塔子じゃないだろうか?


 台所で洗い物をしている和美の後ろ姿を見ながら、僕は電話に出た。


「もしもし、柏木!?」


 僕はホッとした。


 村松の声だ。


 ひどく慌ててる。


「どうした?」


「俺はもうダメだ…」


「何だって?」


 今度は僕が慌てた。


 和美が洗い物の手を止めて、心配そうにこちらを振り返る。


「俺はもう居なくなる」


 村松の声が弱々しくなった。


 居なくなる?


 何かあったのか?


 僕は動揺が声に出ないよう、必死に抑えた。


 和美を安心させるために、笑いかける。


「村松、どうした? ちゃんと説明してくれ」


「塔子だよ」


「塔子?」


 嫌な予感がした。


 急に身体が熱くなってくる。


 全身から、じっとりと汗が出てきた。



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