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消失  作者: もんじろう
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 高校からの友人、村松と夜に居酒屋で落ち合った。


 村松は強面(こわもて)で大柄、筋肉質。


 学生時代はレスリング部だった。


 今は文具メーカーの営業をしている。


 僕は村松とは真逆の文系。


 眼鏡に細身。


 演劇部で台本を書いていた。


 現在は書店員だ。


 全くタイプが違う2人なのに、何故か出逢った瞬間から馬が合った。


 そんなこんなで28歳になった今でも半年に1度は、こうして2人で飲んでいるのだ。


 最初はお決まりの、お互いの仕事の愚痴から始まった。


 ひと通りの不満を吐き出すと、ここからも定番の恋愛…と言っても僕には2コ下の彼女、和美(かずみ)が居るので、もっぱら村松の女性関連の話へと移行していった。


 最近、村松のこの話題での最初の台詞は「柏木は良いよなー。和美ちゃんと同棲してるし」だ。


 和美の都合が合わず、まだ村松に逢わせたことがないのに、いつの間にか「ちゃん」付け。


 そして村松は次に、こう言う。


「俺もかわいい彼女が欲しい!」


 で、そこからは村松が営業で廻っている取引先の受付嬢や女性社員の誰それさんがかわいい、付き合いたいというような話を長々とするのがパターンだったのだが。


 この日は思わぬ流れになった。


 まず1番最初の「柏木は良いよなー」が始まらなかったのだ。


 村松は何やら神妙な顔をして、黙っている。


 僕は「もしや?」となった。


「彼女が出来たのか!?」


 少し興奮しながら言った僕に村松は「うーん。それがなー」と煮え切らない返事をする。


「何だよ!?」と僕。


 村松は周りの席をキョロキョロと窺った。


 その後ろを新たに店に入ってきた客に「いらっしゃいませ!!」と元気良く声を上げた居酒屋女子店員が通り過ぎる。


「あまりにも彼女が出来ないだろ?」


 村松が声を落とした。


 村松は確かに強面だが、けして不細工というわけではない。


 なのに彼女が出来ない。


 村松の彼女居ない歴は年齢と同じだ。


 その原因は女性に対するときの極度のあがり症にあると僕は考えていた。


 村松は女性、特に自分の好みの女性の前に出ると真っ赤になって、一言も喋れなくなるのだ。


 これでは、さすがにチャンスは閉ざされてしまう。


「だからもう」


 村松はため息をついた。


「諦めようと思って」


 

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