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なまこ×さかな

【なまこ×どりる】

URL

https://ncode.syosetu.com/n3777fc/

 私には前世の記憶と言う物がある。と言うか……今世に置いて自我と言う物が非常に希薄であり、本能に従うだけであったからか、前世における自我がそのまま今世でも、私と言う存在の自我となっている。何故こんな事態になっているかと言うと。今の私は【魚】だからだ。魚が自分の事を魚だと。どういう存在の生き物なのかと、理解している訳が無い。よって魚である現在も、魚になる前に人間だった時の記憶が自我を作っている。


 とまぁ、どうでもいい事だったな。私は今、魚として実に魚らしく、海の底を優雅に泳いでいる。と言っても私は魚は魚でも、マグロやカツオ等の回遊魚では無く。海底の岩場等を住み処にしている【根魚】のようだ。しかも……イソギンチャクの触手の中に自分の体を飛び込ませると、妙な安心感が得られる事から私は私の事を【カクレクマノミ】なのではないかと推測している。


 そんな私の身にある日、とんでもない事が起きた。

それは、いつものようにイソギンチャクの触手の中に体を潜り込ませて眠りから目覚めた時には、既に起きていた。


 私は無限の広さを持つ大海原に居たはずなのだが、眠りから目覚めた後、何故か四方を透明なガラスか何かで囲まれた物の中に閉じ込められていた。

これは……前世の記憶の中にもある【水槽】の中に私は居るのでは無いか? そうとしか思えない状況に置かれていた。


 私はイソギンチャクの中から飛び出して、辺りを注意深く観察しながら泳いでみた。案の定透明な壁に阻まれて、一定の広さより先に進めない。


 何故、大海原に居たはずの私が水槽の中に? 落ち着いて考える為に私は、本能で1番安全な場所だと認識しているイソギンチャクの中に戻り落ち着いて、こうなった原因を考えようと思い、イソギンチャクを目指し泳ぎだした。


 その時……前方に黒い物体が目に飛び込んで来た。注意深く近寄ってみるとそれは、前世の記憶の中にあった【なまこ】であった。


 なまこは魚等を捕食する生き物では無いはずだ。私は私が捕食されたりする事が起きないであろう事に安堵した。


 無事にイソギンチャクの中に戻り、なまこの姿を観察していた時、ふいに私の自我に語り掛けて来る声が聞こえた。


 『そこな魚よ、わたしの声が聞こえるか?』


 水を伝わり聞こえて来ると言う感じでは無く。頭の中に直接、誰かの声が聞こえてきている。

私には声帯と言う物が無いので、どう相手に伝えたら良いのかと思考をした時に。


 『聞こえているようだな、頭の中で言葉を思い浮かべたらわたしと意思疏通は出来る』


 なるほど、一種のテレパシーみたいな物なのだな。と私は理解した。人間から魚に転生して、自我まで芽生えた私だ。今更テレパシーごときで驚きようも無い。すんなりと受け入れる事が出来た。


 『わたしの行使した魔術で引き寄せた海水の中に、どうやらお前が居たようで一緒に召喚してしまったようだ』


 この水槽の中には、私の他は小さなエビとイソギンチャクにプランクトン後は……目の前のなまこしか居ない。

エビやプランクトンから発せられた意思とは思えない。ましてや長い付き合いになるイソギンチャクと言う事も有り得ない。

そう考えた私は、今私に向けて意思を伝えて来ている物は、目の前のなまこであろうと思った。


 「なまこさん? あなたも私と同じで自我があるんですか?」


 『そうだ、わたしにも自我がある』

 

 その後、なまこと色々な話をした結果解った事がある。

目の前のなまこは我々が崇める【海神(Neptune)】と同じ神の1柱である【泳がぬ海の王】その者である事が解った。

私はこれでも一応は魚の端くれだ。当然【泳がぬ海の王】の事も知っていた。


 『お前を、元の海に還す事も出来るがどうする?』


 「私をこのままこの水槽の中に置いたままでも、貴方様に害等は及ばないのでしょうか?」


 『害等は一切及ばぬ』 


 「それでは、私はこのままこの水槽の中で生きる事を望みます、ここならば外敵も存在せず、安全に暮らしていけそうですから」


 私は、神にこのままにしていて欲しい。そう願った。

【泳がぬ海の王】は海と同じような広い心を持ち、私がこのままこの水槽に居る事を認めてくれた。

しかもそれだけではなく……私のような魚を眷族の一端に加えてくれると言った。

そして、眷族になった私の為に私が生きるのに必要になる食料のエビを海の水を替える時に必要な分だけ一緒に召喚してくれるとまで言ってくれた。


 こうして、魚としては珍しい自我のある魚の私は、同じく自我のある海の神の化身のなまこと奇妙な共同生活を始める事となった……


 我が神である【なまこ】は時おり水槽から小さな金魚鉢に移り、どこかに出掛けて行く。

金魚鉢を大事そうに抱え持つ、縦巻きの髪型が特徴的な、どりると共に。


 どりると一緒に出掛ける時の我が神なまこは、水槽の中に居る時よりも、どこか嬉しそうにしている……


挿絵(By みてみん)

 

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