Epilogue
太陽の光が穏やかに降り注いでいる。
ここ、マーリッヒ家にも温かい陽が降り注いでいる。
その庭に置かれているベンチにキースは座って、ある方向を見ている。
そちらの方向には子供達が賑やかに遊んでいる。そこには、孤児だけでなく近くの町の子供達も混ざっている。
と、そこにマールがやってきてキースの隣に座る。
「どうしたの?」
「ん?いや、幸せだなと思って」
「またそんな年寄りくさいこと言って…」
キースの言葉にマールは苦笑いを浮かべ、キースと同じように子供達の遊んでいる姿を見守る。
少しして、二人の耳に馬車の音が聞こえた。二人が音が聞こえたほうへ向くと、馬車から一人の若者が降りたち、二人の方へと向かってきた
その若者は二人にとってよく知る人物だったため、二人は笑顔でその若者を出迎えた。
「おかえり」
「おかえりなさい、アーク」
「ただいま。二人とも変わりないようで」
馬車から下りてきたのはアークだ。
アークは、今現在他の街で働いている。
マーリッヒ家に引っ越してきて約半年ほど街の子供と孤児達とのパイプ役を行った後、近隣住人に仕事を紹介してもらい他の街へ引っ越して行った。
だが、その後も二・三ヶ月に一度の頻度でこうしてマーリッヒ家へと戻ってきている。
それは、アークだけに言えることではない。アーク以外にもここを巣立って行った孤児達もよく顔を出してくれる。
もちろんそれをキース達は望んでおり、帰って来た時は歓迎している。
「どうだ?仕事は慣れたか?」
「そりゃ、5年ぐらい働いてたら慣れるって。あ、そうだ。これお土産」
「別に気を遣う必要ないのに。ま、有り難くもらっておく」
アークは持っていたカバンから土産を取りだしキースへ差し出す。
キースは笑顔で受け取ると、土産を自分の傍に置いた。
「それよりも、お前もいい歳なんだから早く結婚したらどうだ?」
「キース様だって俺の歳にはまだ結婚してなかったじゃんか。ま、そう言う人見つけたら教えますよ」
キースのからかうような言葉に、アークはそう答えると後ろ手を振りながら子供達の方へと向かうと、子供達の遊びの輪に加わった。
その姿を見ながらキースは先ほどの言葉をつぶやいた。
「幸せだな」
「どうしたの一体?」
「いや、こうしてみると色々あったなと思ってさ。誰かさんは勝手にここを出て行くし」
「だって、しょうがないじゃない。あの時はああするのが一番だと思ってたんだもの。でも、今はちゃんと隣にいるじゃない?」
「そうだな。それにお前だけじゃないもんな」
キースの視線の先にはこちらに駆け寄ってくる子供の姿がある。
「おとうさま!おかあさま!」
駆け寄ってきた子供をキースは抱きあげる。
「エド、どうした?」
「おとうさまとおかあさまがみえたからきた!」
エドは、結婚してすぐに授かったキースとマールの息子だ。
「さっきアークも帰ってきたから遊んでもらって来い。父さん達はここで見ておくから」
「うん!」
そういってエドを降ろすと、エドはまた先ほどの場所へ駈け出して行き、街の子供達に混ざった。
街の子供達の中でエドは楽しそうに遊んでいる。
「あの子もいるし…ここにももう一人いるもんな」
息子が進んでいる姿を見ながらキースはマールのお腹を撫でながら呟いた。
マールのお腹の中には、二人目の子供がいる。
「ええ…。でも、本当にこんな日を過ごせるなんて思わなかった。キースとこうして一緒に過ごせるなんて」
「何を終わったかのように言ってるんだよ。これからだって、俺達は一緒だよ。エドもこの子も、な」
キースがそう言って抱き寄せると、マールはキースの腕の中で頷いた。
小さい頃に出会った二人。
しかし大きくなるにつれ、二人の距離は縮まることはなく、いくつかの問題を抱えむしろ離れて行った。
だが、今こうして一緒の時を過ごしている。そして、その時間はこれからも続いて行くだろう…。
『最愛の人』と一緒に過ごす時間は死が二人を別つまで永遠に…




