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Beloved Person  作者: タカ
24/31

24話

入ってきた人物を予想していなかったのかアークは呆然とマールの顔を見詰める。

マールもまた自分が聞いていることをキースが気付いているとは思っていなかったため、気まずそうにキースとアークを見ている。

沈黙は数秒続いた。そして、その沈黙はアークがキースに詰め寄ることで破られた。


「あ、あんた…マール姉さんが聞いてた事を知ってたのか!?」

「知ってるというよりかは…いるだろうなとは思ってた。別に聞いていてくれとマールに頼んだわけじゃない」

「で、でも…どうみたって確信してるような言い方だったじゃないか!」


アークの疑問にマールも心の中で同意した。

キースの声のかけ方は、マールがいることを確信している呼び方だった。

だから、マールも仕方なしに入ってきたのだ。もし、二人とも気付いていないのであればすぐに立ち去っていただろう。


「いや、だってマールが俺とお前の事を気にかけているってお前も分かってただろ?俺とお前が二人で部屋を出て行ったのを見て追いかけてくるだろうって想像つかないか?」

「それはそうだけど…」


アークが口籠ると申し訳なさそうにマールがアークに近づき、とある言葉を口にしようとする。


「アーク…ご」

「ストップ!」


だが、マールの言葉をアークが遮る。

マールがアークを見ると、アークは笑顔でマールを見ていた。その様子を見ていたキースは何も言わずにマールとアークの会話に耳を傾ける。


「それ以上は言わないでくれない?」

「アーク…」

「そりゃ、マール姉さんがこの人の事を好きなんだって分かってショックだったよ。だからって、謝られたら俺が惨めじゃんか」

「でも…」

「だから、何も言わないでほしいんだ」


アークの言葉を聞いてマールは困ったようにキースに視線を向ける。

その視線を受けたキースは笑顔で一つ頷く。


「そいつがそう言ってるんだから、そうしてやれよ」

「…うん、分かった」


キースの一言にマールが同意すると、アークは笑顔になった。

そして、マールにゆっくりと近づくとマールに手を差し出す。


「ということで、今まで通りでよろしくね」

「うん、分かった」


アークが差し出した手をマールはゆっくりと握る。

そこに、キースも手を乗せる。


「なんだよ、俺だけ除け者にするなよ」

「…あんた、邪魔なんだけど」


キースが乗せて来た手をアークが空いている手で除ける。

するとキースは『ほぉ~』と呟くと、アークの肩に手を回しマールから離す。


「生意気なこと言ってくれるじゃないか。え?」

「あ~も~、くっつくなよ。っていうか、邪魔すんなよ」

「それは俺のセリフだよ。マールに簡単に触れてんじゃねぇよ」

「うわ…独占欲が強い男は嫌われるぞ」

「大丈夫だよ。マールは俺のことが好きだから」

「…どんだけ自信満々なんだよ」


キースとアークの会話を聞いていてマールは少し驚いてしまった。

つい先ほどまでキースとアークの間には険悪な雰囲気が流れていたはずだ。

なのに、今ではそんな雰囲気は流れていなかったかのように仲良く話している。

呆然としていると、キースがそんなマールの様子に気付いたのか声をかけて来た。


「マール?どうかしたか?」

「あ、ううん。何でもないよ」

「そうか?ならいいけど…。さて、そろそろ俺らも元の部屋に戻るか。結構時間たってるし」


キース達が先ほどの部屋から出て既に30分以上時間はたっている。

いくらなんでも戻らないとモーリスも心配するかもしれないし、子供達もこちらに来るかもしれない。

キースの言葉に従って三人で先ほどの部屋に戻った。

キース達が部屋に戻ると、子供達は先ほどまで話しすらしていなかったキースとアークが一緒に戻ってきたことに最初は驚いていたが、モーリスだけは笑顔で三人を迎えてくれた。

そして、その日は全員でカードゲームなどで遊びキースは子供達と少しずつではあるが仲良くなった。

次の日の朝。

子供達と共に朝食を取った後に、キースは屋敷に戻ることにした。


「突然のご訪問、申し訳ございませんでした」

「いえ。ですが、今度からは事前にご連絡してください」

「もちろんです」


キースはモーリスに今回の突然の訪問に対する謝罪を述べ、モーリスも笑顔でそれを受ける。

次にキースはアークの肩に手を乗せる。


「じゃ、後よろしくな」

「任せろ。約束は守るって」

「頼りにしてるぞ」


そして、最後にマールに顔を向ける。


「じゃあ、またな」

「…うん」

「また時間作って会いに来るから。それまで浮気するなよ」

「…それはキースの方じゃない。綺麗な令嬢が会いに来るかもしれないし」

「そんなもんに好意持つわけないだろ。こまめに手紙書くからお前も書けよ」

「うん」

「じゃあな」


そういって、キースは孤児院を後にした、と思ったが数歩歩くとまた戻ってきた。

てっきり忘れものかと思い、マールは少し前に出た。


「キース。忘れもの?」

「まぁ、な」


そう言うと、キースはマールの頬に口づけた。

口が離れるとマールは顔を真っ赤にして頬に手をつける。

すると周りにいる幼い子供達からは『チューだ』『チュー』など声が聞こえ、アークなど年長者組は目を丸くしている中で、モーリスだけは穏やかに微笑んでいる。


「なっ…」

「じゃ、元気でいろよ!」


マールが反論しようとするとキースは足早に走って去っていった。

残されたマールを幼い子供達が見上げてくる。


「おねえちゃん、ちゅーしたね~」

「ちゅー、ちゅー」

「キ、キースの…馬鹿!」


子供達が周りで騒ぎたてている中でマールはキースの文句を言ったが、その文句は空に消えて行った…。

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