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47 マスターズ・リーグ



 太陽が必要以上にキラキラと輝き熱風がやる気と体力をどんどん奪って行く盛夏と言うよりも、日中暑かったからと毛布もかけずに大の字になって寝ていると、いつの間にか身体が冷えてお腹を壊してしまう夏も終わりの気配を感じて来た頃の事。人間種が作った国家「シュラッテンフルー」の王都イースタルでも、御多分に洩れず未だにあの【大いなる父からの戦線布告】が否が応でも話題になっており、市民の間では日増しに不安が広まっているのか、太陽輝く季節であるはずなのに街行く人々の顔からどんどんと笑顔が消えていた。


 そのイースタルの中心地にある荘厳な宮殿……ことさらその力を誇示する様ないやらしさは無く、質素と機能を追求した様な作り手の品を感じるようなその王宮の謁見の間に今、この大陸の頂点に君臨する八名の戦士たちが集っていた。

 騎士王ボードワンの息子で長兄のコランタン・クルゼルが玉座にゆったりと座り、横になって涼を取りたくなる様なひんやりとした大理石の広間を見下ろしている。そしてコランタンの視界に入るこの八人こそが、【マスターズ・リーグ】トップチームの戦士たちなのである。


 八人の中から一人だけ一歩前に出た戦士、まるで海賊の様に荒くれた服装の中にちょっとした品を漂わせる壮年男性こそ、マスターズ・リーグの現在のリーダー、ローデリッヒ・エメラルド。十六年前の天使蹂躙の際には問題児集団と呼ばれた山賊「ハヤブサ団」の団長だった男だ。

 そしてローデリッヒの背後に控えているエルフの青年がマスターズ・リーグの副長、ニルス・ペータセン。若々しい青年に見えるがもちろんそれは見た目だけの事、齢六百年を経て年齢を数える事をやめた古参のエルフで精霊魔法を得意とするウォーロックなのだが、その能力よりも何よりも冷徹な権謀術数に長けており、まだまだ人格は丸くなってはおらず、周囲からは鬼の副長と呼ばれる眼力の鋭い人物である。


 王から向かって左側、残りの六人も見て行くと、揃いも揃ってまるで統一感の無い六人ではあるのだが、やはりそれぞれがそれぞれに武芸に秀でたからこそ、トップチームに名を連ねているのだと納得出来る面々が並んでいる。


 一番左側に位置するのはこの大陸に古くから伝わって来た【和文化】を今に残すサムライ。しかしその様子があまりにも違和感を放っているのは、その者が男性ではなく女性であると言う理由だけではない。この清楚で上品な雰囲気を醸し出している彼女は実は人ではないのだ。

 顔から身体から痛々しいツギハギの傷痕に包まれたこの女性の名前はポエル・ローズマリー。この世の闇から誕生したデモニック……闇の魂を持つ人造人間「フランケンシュタイン」であり、騎士王ボードワンが健在であった頃、もっと言えばボードワンが若かった頃から彼と旅をしたボディガードだった人物である。騎士王の英雄譚にもたびたび登場するポエルは、古くから女性フランケンシュタイン侍と呼ばれ、親しまれて来たのである。


 そしてその隣に位置する初老の男性はドワーフ。見た目と実年齢の差異についてはエルフの真逆で、初老に見えるが実はまだ四十歳にも手が届いていない。名前はベルノルト・バッヘム。大陸北西部に位置するゲリッケ山脈の地下鉱脈を基点として広がったドワーフの国「リリエンクローツ王国」の第一皇子であるのだが、次代の王として国政に携わるよりも戦士としての生き様を選んだのか、自国からの帰還要請を断り続ける武闘派である。

 更に、ベルノルトの隣に立つのは男装の麗人で、マスターズ・リーグ最年少のコレット・ブーケ。光魔法と剣技を組み合わせた魔法剣士として近年頭角を現した期待の有望株である。コレットの隣にぴったりと身体を寄せている青年も期待の有望株であり、マクス・オルロックと名前を名乗る吸血鬼……闇の頂点に立つノスフェラトゥである。マクスとコレットは同級生だった過去があるからか何故か相性が良く、彼らがマスターズ・リーグの狭き門をくぐってから今の今まで、常にニコイチで作戦活動を行なって来ていた。


 そのコレットとマクスの仲の良い関係とは全く反比例するかの様に、マクスたちと距離をとり、更には一番右側に立つ人物にもっと距離を取れと無言で威圧しているのが、大陸中央部の穀倉地帯を生息域にするグリーンドラゴンの皇位継承者、リュック・ブルーニである。

 まだ見た目は少年の様に若いのだが、この場にいる誰よりも気位が高いのか、コランタン王を前にしても不遜な面構えをやめようとはしていない。まるでそれは、人間や亜人種に対して下等動物めと忌々しく思っている事の表れ。だがリュックがこのマスターズ・リーグから姿を消す事が無い以上、この組織に意義を感じている証拠でもあった。


 最後の一人……リュックの高慢なオーラにあてられたかの様に距離をとって怯えているのは、タヌキの耳を髪の毛からちょこんと生やした獣人の少女。見るからにポワポワしており、このまま成長すると体系的に肝っ玉母さんになりそうな「ちょいふくよか」な少女なのだが、やはり彼女もマスターズ・リーグの一員である以上、見た目と実年齢との差は激しい事が伺える。

 彼女の名前はロロット。唯一謎の存在でファミリーネームも存在しないただのロロットなのだが、彼女が魔法使いなどが着用するローブを着ている事から、魔法系の戦士である事が推察出来た。


 この合計八人がマスターズ・リーグのトップ。暫定的にローデリッヒが首席を務めているのだが、並外れた技量と誰もがひれ伏すカリスマ性が備われば、天使蹂躙に対抗するべくこの中からリーダーが決まるのであった。


 戦士たちに穏やかな笑顔を向けて挨拶口上を受け取るコランタン。一通りのメンバーの挨拶と社交辞令が終わり、いよいよ本題に入ろうとした時、それは起きた。


 びたーん!と

 大理石の床に何かが盛大に衝突する音が謁見の間を駆け抜ける。当たりどころの悪いくぐもった音ではなく、平らなところにジャストミートで物を打ち付けた様な甲高いぴしゃりとした音でだ。


 コランタンもお付きの者も、ローデリッヒ以下マスターズ・リーグのメンバーたちもその音の方向に目を向けると何と、太陽を凌駕したヴァンパイア、「ノスフェラトゥ」のマクス・オルロックが直立不動の姿勢そのままに、顔面から倒れ込んでしまったのだ。


「マクス、大丈夫か!? 王の御前だぞしっかりしろ! 」


 心配そうな顔付きで抱えあげようとするコレット、周りのメンバーたちは(……だから言っただろ、昼間は虚弱なんだから無理するなって……)と呆れ顔。

 超越者となったのは良いが、いかんせん低血圧で鉄分少なめのヴァンパイアでありまして……と、王を驚かせた事を詫びつつ、首席のローデリッヒは本日この日、何故トップチームが呼ばれたのか、大方の予想は出来ているがあらためて、コランタンの言葉を待っていた。




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