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華麗なる『異形の会』 編

 ・・・土曜。だいぶ明るくなった部屋の中、ぼんやりと目を覚ます。この眠気であれば、まだまだ余裕で睡眠を継続できる自信がある。が、面倒・・・ではなくうれしいことに、今日は予定があるのでひとまずむくりとベッドから体を起こした。今は・・・・・ああ、もう11時か。


 結局、入浴後に血を啜りつつネットサーフィンなんてして夜更かしをしていたせいか、目を覚ましたのは結局午前11時。異形の会は午前10時からだから、つまりこれは完全に間に合わない。と言うか間に合う間に合わないとかそういうレベルの問題ではない。既に始まっているのだ。・・・とりあえず遅れます程度の連絡は入れておくか。

 基本、自由参加の会ではあるが、出ないなら出ない、遅れるなら遅れると連絡を入れるのが、社会人としてのマナーだ。寝坊の件に関してはまあいいとして。仕事じゃないんだし、寝坊くらい良くない?・・・ダメ?

 既に予定時刻をオーバーしているわけだから、正直もうどれほど遅れても構わないか、という気持ちになってくる。めんどくさいし、いっそのこと参加しないと言う手も・・・。

 などと考えていると、突然携帯に着信。画面には『カンナ』との表記が出ている。仲のいいメンバーの一人からの電話だ。

「・・・もしもし?」

「『あ、千歳。おはよう、やっと起きたのね』」

「まあね・・・もう一眠りしていい?」

「『二度寝はダメよ、今何時だと思ってるの・・・。いいから、早くおいでなさいな。織部さんがカンカンに怒ってるわよ』」

「マジ・・・?怒ってるんなら行かないでおくわ」

「『冗談よ。まあ、ちらっと顔見せるだけでもいいからいらっしゃいな。みんな楽しみにしてるわよ』」

「分かってるって。ちゃんと行くから・・・。今、何人くらい集まってる感じ?」

「『今?えっとね~・・・私を含めて3人』」

「え、なになにどうしたの、今回はやたらと集まり悪いじゃん」

「『ね。こんなに少ないのなんて珍しいわよね。・・・で、私たち三人だけでお茶会させとくわけ?』」

「はいはい、行きますよ・・・。一時間くらいしたらそっちつくから、それまでおしゃべりでもしてて」

「『お昼過ぎあたり到着予定ね、分かったわ。それじゃ、また後でね』」

「はーい・・・」

「『・・・で、来るの?』」

よく分かっていらっしゃる方だ。

「行きますよ、大丈夫だって・・・。ほんとほんと。信じて」

以前、同じことを言っておきながら、二度寝しちゃって結局参加しなかったことがあるけど。

 通話を終え、携帯をベッドに置く。電話もきたし、さすがに行くか・・・。いやー、でも、実際もっと寝たい。だって日々の活動時間やばくない?そりゃ、生命力にあふれてるヒトは平気かもしれないけど、私は無理ね。土曜は一週間の疲れを回復させるため一日中寝ていたいし、日曜は来週に備えて一日中寝ていたい。切実に。

 100年ちょい前だったら、日々もっと楽だった気がするけど、まあ今が当時よりしんどい生活だから、相対的に昔が楽に思えるのだろう。今の時代、いろいろ便利になったがそのおかげでいろいろと息苦しくもなった。まあ、だからと言って昔に戻りたいとは思わないけどね。

 ダメだ、頭がぼーっとする。12時頃向こうに着けばいいから、身支度と移動の時間を考えると・・・最速で用意すれば、あと10分だけ寝られる。よし、じゃあ携帯のタイマーを10分にうわっ!?・・・またカンナから着信だ。

「・・・もしもし?」

「『今、二度寝しようとしたでしょ』」

「・・・・・・・・・」

「『起きた?』」

「今ので完全に起きた」

「『そ。安心したわ』」

何でもお見通しって訳ね。しょうがない、ちゃんと準備しよ・・・。



* * *



「あら、珍しいじゃない。ゴスロリ大好きな貴女が、革のジャケット着て来るだなんて」

時刻は正午過ぎ。予告どおり会場に現れた千歳に、既にお茶会を愉しんでいる甘ロリの女性がそう話しかけてきた。

「まあね。たまにはバイクも乗ってあげなきゃだから。さすがにあの服でバイクには乗れないし」

千歳は慣れた口調でそう返しつつ、部屋全体をさっと見渡した。部屋の中央には大きなテーブルと、お揃いの椅子が数脚並べてある。大半の席は既にメンバーたちが腰掛けていた。テーブルの近くには、かわいらしいクッションが置かれたソファが2台並べてあり、その片方には目の細い和服の女性が腰掛けている。

 千歳は空いているほうのソファに腰を下ろすと、抱えていたヘルメットを隣へそっと置いた。

「ちゃんと来たのね。偉い偉い」

隣のソファに腰掛けている細目の和服美人が、そう話しかけてきた。

「まあね。二度目の電話が来なければ、多分まだ寝てた思うわ」

「だろうと思って、もう一回掛けたのよ」

カンナはそういうと、千歳に向かって優しく微笑んだ。聖女のようなヒトだが、その正体は恐るべき妖狐、だとか。古くから日本に住んでおり、長い歴史の中でダメにしてきた人間は数え切れない程だという話を他のメンバーから聞いたことがある。その事を本人に聞くと必ず『さあて、どうだったかしらねぇ』とだけ返ってくる。


「ねえ、千歳。運転疲れたでしょ。お茶はどうかしら?」

部屋に入ってきた時に話しかけてきた甘ロリの女性がお茶を勧めてくる。よほど上等な茶葉でも手に入ったのだろう。こういう時は、大人しくお茶を頂いておくのが吉だ。

「ありがと。いただくわ」

千歳はソファからゆっくり立ち上がると、甘ロリの女性のもとへと歩み寄り、隣の席へ腰掛けた。甘ロリの女性は、千歳の言葉を聞くや否や、嬉しそうにカップへ紅茶を注ぎ始めた。原宿を歩けばすぐに見つかりそうな格好をしているが、彼女の正体は魔女だ。生まれはヨーロッパのどこからしい。向こうではオリーブと名乗っていたらしく、その名残か現在は織部と名を変えてひっそりと暮らしている。ファーストネームは聞いたことがないけど、こういうのはあまり深入りしないほうがいい。


「で、お仕事はどう?どうせまたブラック企業で人生を浪費してるんじゃない?」

そう言ってきたのは、織部の隣に座っている黒ゴスの女性。千歳と同じくらい色白の肌、肩まで伸びた癖っ毛、そして一番特徴的なのが、濃く色づいた目の下のくま。このくまのせいで非常に不健康そうに見えるこの女性は、千歳と同様、吸血鬼だ。

「まあね。でも、貴女のところも大概でしょう?持ち帰り仕事多そうだし。デザイナーも大変ね」

「私はいいのよ。好きでやってるんだから。コンペとかも結構やりがいあって楽しいし」

「ふぅん・・・。しんどくないの?帰れない日も多いって聞いてるけど」

千歳の言葉にすぐには答えず、先にティーカップを口へと運ぶ黒ゴス。紅茶を一口飲んでから

「しんどい・・・」

と、悲しそうな目でボソッとつぶやいた。

「まったく、どうして千歳や柚子みたいに吸血鬼は長時間労働の餌食になりやすいのかしらね。知り合いのヴァンパイアも大体みんな残業祭りしてるみたいだし。・・・はい、千歳。お茶」

「ありがとう」

礼を言い、千歳は織部から紅茶を受け取った。うん、綺麗な赤色をしている。ちょっとテンションが上がる。

「ほかの吸血鬼仲間もか~。もしかしたら『ヴァンパイアに関しては長時間労働させても問題ありません』みたいな通達が国から来てるのかもね」

柚子と呼ばれた黒ゴスの女性は、そう言いつつ携帯をいじりはじめた。彼女も確か、昔は海外で暮らしていたはず。私は海外行った事ないから、柚子のほうが私よりだいぶお姉さんってとこね。まあ、だから何なのって感じだけど。

「まあ、単に職種の問題じゃないかしら・・・」

織部の発したその言葉に対し、柚子と千歳は何も返さずそっと目を閉じた。


「ま、これで今回は全員そろった感じかしらね」

カンナがソファからテーブルへと移動してきた。ひとまず、全員集まったという扱いらしい。と言っても、毎月集まっているので特に話す内容もない。昔は議題を決めて話し合い等を行っていたが、19世紀に入ってからは、基本的には集まるだけで、なにかをするわけでもない。だから、最近はあまり行く気にならないんだよね。

「今回は4人だけよね。いいものを用意してあるのよ。4人までだから、ちょうどいいわ」

織部はそう言うと、指をパチンと鳴らした。すると、部屋のクローゼットがひとりでに開きだし、中から大き目のモニターと、携帯も据え置きも可能な大人気ゲーム機(および各種ケーブル)がふわふわっとテーブルまで飛んできた。多分、こういう場面でしか魔法を披露できないため、つい使ってしまうのだろう。でも、ああいうファンタジーっぽい魔法を見るのはだいぶ久々だ。

「あ、それうちにもある!イカのゲームやろうと思って買ったやつ!まあ、結局時間なくてやってないけど・・・」

柚子が最初に反応した。・・・あのゲーム機、実は私も持っている。そして柚子と同様、イカのゲームをやろうと購入したものの、結局長時間労働の果てに時間とやる気を失ってしまったせいで、殆どやってないけど。

「フフフ。実はコントローラーも4つ用意してあるの」

パンと手を鳴らす織部。合わせた手を離し、両手の平を皆に向けて見せる。そこにはなんと・・・そう、コントローラー!って手品師かよ・・・。

「というわけで、今日はこれで遊ばない?というか遊びましょう」

ちょっとうれしそうな織部。これは結構楽しみにしていた企画なんだろうなぁ。まあ、悪くないし、実際面白そう。

「あら、楽しそう。いいじゃない」

カンナも乗り気なようだ。

「いいね。やろやろ。ソフトは?」

柚子のテンションも若干高めだ。

「何でもいいから、とりあえずなんかやろ!はよはよ!」

いきなり子供っぽくなる千歳。まあ、この中ではもっとも若いので致し方ない?のだろう。楽しみなのはいいことだ。

「まあまあ、落ち着いて。で・・・どうやるの?」

「えっ・・・知らない」

「いや・・・私も複数人でやるやり方は・・・」

年上三人衆は、こういった機械にはめっぽう弱いのだ。正直、この展開は読めていた。

「ちょっと貸して。やってみるわ」

千歳がそう申し出る。

「お、さすが千歳。頼りになるわね~」

本体を千歳へ渡すと、織部は椅子にもたれかかり、クッキーをつまみ始めた。このヒト、完全に最初から他人任せにするつもりだったな・・・。

「説明書とかは?」

「捨てちゃった」

ですよね~。

「だろうと思った。ちょっと調べつつやるからおしゃべりでも楽しんでて」

「千歳ちゃんはすごいねぇ」

「ね~」

カンナも柚子も、人任せモードに入っている。

「こんなの、日本語読めれば誰だって出来るわよ」

「ワタシ、ニホンゴワカリマセン」

「ワタ~シモ」

「ワタシモ~」

年上三人衆も思ったより子供っぽいわ。

「いや、カンナは日本産でしょ」

「ちっ、ばれたか・・・」

という具合なのが『異形の会』の内容かな。本当はもっとヒトが集まるんだけど、今回は魔女と妖狐と吸血鬼だけでした。

 もし興味があったら、一度この『異形の会』に参加してみるのもいいかもしれないんじゃない?私たちはいつでも大歓迎。まあ、その時貴方が人間のまま、お家に帰れるかどうかは、保証しないけどね。


じゃ、今からゲームするから。続きはまた今度、ね。



何だろう。途中から文章がこう・・・なんだろう。

こう、分かります?ほら、主体がこう・・・まあ、いいんですけど。

うん、まあ・・・。この方が書きやすいんでいいですけど。

というわけで次回もお楽しみに。お楽しんでる方いらっしゃらないでしょうけど。

いや、一人いますね。ここになっ!


今回は時間なかったんで見直してません。誤字等あれば何らかの手段にてお教え願います。

まあ、気が向いたらでいいですけどね。

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