赤子
アーテリア帝国では王族の血筋に男児が生まれた場合、3年間その存在を秘匿にする。
これは帝国創造神話に因んでいたり帝国全体が新たな王子を受け入れるための準備としての意味を持っている。
流石に王と妃だけで子育てすることは不可能なので一部には直ぐ知らされる。
まず、王族近衛兵団隊長。
そして帝国三代魔術師。
場合によっては情報統括局上部数名。
『落とし物から王族スキャンダルまで』
ありとあらゆる情報を収集、管理、操作する組織。
暗い室内は埃っぽく、長らく使われていないことは明白だった。
「ハーーーーまじかーーーうわっきたな!てか、3人てヤバない?」
大股で部屋に入った男は蝋燭に火をつけると迷わず椅子に座った。
部屋は灰色の壁をしており、真ん中には丸い机と椅子があった。
続いて入った大男と小柄な女性は机の近くに立つ。
チラチラと揺れる蝋燭に照らされ3つの影が現れた。
「ヤバない、とはなんだ?良いことなのか悪いことなのかはっきりしてくれ」
「うへーーーウルド、頭かったいな〜あ、椅子一個しかない。ゴメネ〜ウルド、シュゼ」
「い、いえ、私は大丈夫です!お気になさらず!ナピュリタ五位!」
「まぁ、そう固くならないで。これから3年間一緒に働くんだし」
「本題にはいるぞ。今回の謁見、諸君らは何が問題であると見る?王の意図をどう図るか聞かせてくれ。」
「まぁ、間違いなく色のことだよな。あれは絶対揉めるだろうな。流れを変えなきゃ」
「ふむ、つい数十年前に“赤髪赤目は魔物の手先、メラリオ”と流したのを三年で変えるのか。」
「正しくは戻す、じゃね?メラリオの祟り、とか言われそー
「あ、あの!は、発言の許可をっ」
話の流れにあまりついて行けていないシュゼは勢いよく手を挙げた。
「許可する。この場においては自由に発言せよ」
「は、はい!えっと、問題は王子が王家の色、を継いでないことですか?」
「うーん、過去にも継いでない王は複数いたんだけど、今回は色のイメージが悪いんだよね。赤髪はメラリオ族の色だったから。あぁ、君、ハラバルの人だもんね」
「しかし、やり遂げねばなるまい。その為の我々だ」
威厳のある声ではっきりとウラドは言った。
会議は始まったばかりだ。