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英雄の子、命名される
泉の乙女により英雄の子は新しい名前を授かる。
私は泉で会った乙女についていくことにした。
「私はエリスと言います。あなたの名前を教えていただけますか?」
私は名乗ろうか迷った。英雄の子ということで特別扱いをされたくなかったのだ。
「名前は明かせないんだ」
「どうしてですか?」
「名前を教えると死んでしまう」
「まあ……」
苦しい言い訳をしてしまった。
「わかりました。そういうことなら仕方ないですね」
通じた!
「それでは新しい名前をつけましょう。」
「お願いしよう」
「フィナンシェというのはいかがですか?」
甘そうな名前だ。
「それはどういう意味だ?」
「強い魔力をもった名前です。これから行くところでは魔力がなければ死にます」
極端だな。だが死ぬよりましか。
「……」
「どうしましたか?」
「他にないのか?」
「ありません。フィナンシェと名乗るか死ぬかです」
「わかった。フィナンシェで頼む」
こうして私はフィナンシェと呼ばれることになってしまった。