プロローグ
気軽に書いたので気軽に読んでください。誤字脱字があれば報告していただけれは嬉しいです。
目が覚めると、そこは鬱蒼とした森の中だった。
よもや家を追われ、こんな雨風すら凌げそうにない野生の中で生きていかなければならないほど人生を転落してしまったかと思い、目覚める前のことを思い出すが、もちろんそんな訳はなく、しかし、思い出した記憶すら、よくよく考えてみればおかしなものだった。
俺は、爆発事故で死んだ。それも、殺した人間が残したトラップの爆弾により死んだのだ。
物心ついた時から俺は殺し屋として生きてきた。幼少期は屈強な男達、もしくは狡猾な女達に囲まれ、立派な殺し屋になるための教育を受けた。肉体の鍛錬や、豊富な知識に人心掌握術、その他にも殺しに必要なありとあらゆるものを教えられた。15歳になった日に初めて仕事で人を殺し、16歳になった日には殺した人数は100を超えていた。
20歳になり、俺を育てた大人達にお墨付きを貰った後は、フリーの殺し屋として生計を立てた。金さえ貰えば誰でも殺すという売り文句は、最初こそ眉唾ものと嘲笑されたものだが、半年で30人殺した時から、グンと依頼数も増えていった。
そして、記念すべき25歳の誕生日。この仕事が終わったら美味い酒でも飲もうと思って臨んだ暗殺は、とある発明家の老人がターゲットだった。依頼人はなんととある国のお偉いさんで、どうやら老人が最近発明したものは、これからの世界の在り方を変えてしまうものらしく、それが世間の目に触れる前に、秘密裏に発明品そのものごと、老人を殺して欲しいとのことだった。
結論から言えば、その老人を殺すこと自体は簡単だった。大した警備もない山奥の山荘に篭って研究をしていた老人を後ろからナイフで突き刺してそれで終わりだった。老人が自分が噴き出した血だまりでもがいているのを横目で見ながら、発明品を破壊しようと、俺はそれに近づいた。
それは、一見するとただのパソコンだった。どうやら、そのパソコンに自分の理想の世界を打ち込むと、世界の理を捻じ曲げてそれを叶えてしまうというものらしく(その機械の横に置かれた資料に書かれていた)、なるほど、それが世に出回れば確かに、恐ろしいことになるだろうと感じた。
では早速破壊しよう、ついでに殺しの証拠も隠滅しようと、山荘ごと吹き飛ばす爆弾を仕掛けよう、と考えたことを行動に移そうとした時、先ほどまでもがいていた老人の声が聞こえないことに気がついた。
その瞬間、パソコンが、山荘が、灼熱の火炎とともに四散した。どうやら老人は、自分の命が失われた際、その発明品、ひいては自分の研究が消去されるように罠を仕掛けておいたらしい。
こうして俺の人生は世紀的発明をした発明家の単純なトラップにより、あっけなく終了した。
したはずなのに、目を覚ましたら、俺は鬱蒼とした森の中にいたのだった。