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旅の仲間はハーレム希望

「転生召還の儀は成功したようだな、ブリュンヒルド」

 渋い男の声が聞こえた。

 ブリュンヒルドと呼ばれた女の子は「はい、ヴィズル国王」と言って、腕を解いて、俺から離れていった。

 お、俺の天国が……!!


「異世界の勇者よ。よくぞ参られた」

 声の方に向き直ると、ヴィズル国王とか呼ばれたおっさんが一段高い床の上にある豪奢な玉座に座って、俺のほうを見下ろしていた。

 視線が合う。

 つばの広い帽子をかぶっていて、表情がよくわからない。

 唯一見える片目は、落ち着いた言葉とは裏腹に、俺を見透かすかのように真剣なまなざしを向けてくる。


「して、勇者よ。そなたの予言はどうであった?」

「予言? はて、なんでしょうかそれは」

 相手の言葉につられて、かしこまった言葉が出てしまう。


「うむ、他の勇者たちは『げえむ』とか申しておったな。

 そなたらはその『げえむ』とやらで、我らの世界を予言するらしい。

 なんでもよい。そなたの『げえむ』とやらで見てきた予言を話してくれ」

 げえむ? ああ、ゲームのことか。一体全体、どういう状況なんだ。


「そなたの予言はどうであった?

 魔族は、魔王を倒すことはできたのか?」

「魔王? 魔王なら倒しましたよ」


 おおおお! と周りから声があがった。

 びっくりして周囲を見渡すと、兜と鎧を身にまとった騎士たちが部屋の隅にたくさん控えている。


 目の前には国王、それから妃とおぼしきエロティックな女性が妖艶に微笑んで、俺のことを興味深そうに眺めている。

 胸元には、まばゆく輝く黄金の首飾りをつけていた。が、俺は大きく切り開いた胸元から覗く肌色に釘付けだ。

 俺の童貞を辱めながら奪ってほしい。


 騎士たちのざわつきが落ち着いてから国王は言う。

「魔王を倒した後、この世界はどうなったのだ? そなたの予言では」

 魔王を倒した後? 俺はゲームの内容を思い出してみる。


 魔王を倒しました。世界を半分くれると言われました。

 仲間を裏切って世界を半分もらうことにしました。

 → BAD END !!


 アカン。


 本当のこと言ったら、周りで武装している騎士にぶっ殺されるかも。

 予言とか言ってるくらいだし、俺の言う内容に成否の判断なんてできないだろう。たぶん、きっと、そうであってくれ……。

 俺は、自分の身の安全のために嘘をつくことにした。


「魔王の危機がなくなって平和になりましたよ。も、もちろん」

 質問攻めにあったらどうしよう、と嫌な想いが湧き上がってきた。

 後半上ずって答えてしまったが、騎士たちの「おおおお!」を聞きながら、国王もうんうんと頷いているだけだった。

 よかった、よかった。疑うことを知らない純粋な人たちで助かった。


「今回の勇者は、優秀な武人のようだ。そなたに丁重なもてなしを授けよう。

 ただ、その前に旅の仲間を選んでくるがよい」

「あの、これどうなってるんですか。俺はどうなったんですか?

 なんでこんな所にいるわけですか?」

「貴方は転生召還の儀式によって選ばれたのです。

 この世界を救うためにここアースガルドに遣わされたのですよ」

 ブリュンヒルドがさも誇らしげに言う。


 薄々気づいてはいたが、俺はゲームの世界に来てしまったらしい。

 『円環の最終戦争(ラグナロク)

 昨日、1日でクリアしたゲームの内容と似通っている。

 王の名もブリュンヒルドという名にも覚えがある。


「転生召還って言ったって……、一体どうして俺が?」

「私の勇者よ、混乱するのは分かります。しかし、今は仲間を連れてくるのが先決です」

「いや、そんなことを言われても」

「私の勇者よ、混乱するのは重々分かります。しかし、」


 同じ台詞が繰り返されようとしたので、俺はちょっとイラっとして、「分かりました」と続きを遮った。

 ブリュンヒルドは、その言葉に満面の笑みを浮かべる。

 めちゃくちゃ可愛い。どうやら従うしかないらしい。俺は女の子の笑顔に弱い。


 俺は、大きなベッドから足を下ろそ、うとして一度つんのめった。

 傍らのブリュンヒルドが抱きとめてくれ、俺はまた彼女の胸に飛び込む。

 やわわわっ!


 俺はこの柔らかさが夢ではなく現実だと思う。

 つーか、そうであって欲しい。と、切実に願った。

 できることなら、4,5分ばかりトイレに駆け込みたいところだ。

 いや、今なら3分で用を足せるかも知れない。

 ブリュンヒルドは、俺の身体を起こして手を握ってくれた。

 手もやわわい!


「私の愛しい勇者よ。では、参りましょう。共に世界を救う仲間の元へ」


 ブリュンヒルドは背が高かった。俺なんかより大きい。

 というか、周りの戦士たちも凄く背が高い。頭1個分くらい。

 勇者とか呼んでくれてるけど、こんなホビット級の俺なんかより勇者として相応しいんじゃないか、と感じた。

 ゲームでは王の間と呼ばれていた空間を出ると、ブリュンヒルドが立ち止まって、俺に笑いかけてくれた。

 天使とは、こういう女の子のことを言うんだろう。


「あなたなら、冒険者の酒場までの道のりが分かるはず。

 私をエスコートしてください」

 いきなり転生(?)させられた俺に何を言うんだ、と思ったが、確かにゲームと同じなら道のりはよく分かる。

 なんせ、ゲームは最初から最後(ちょっと手前)まで昨日やったばっかりだからだ。


 迷いなくテクテクと歩を進める俺。

「やっぱり、あなたは勇者なんですね」とか褒められる。

 城の警備兵も俺のことをちらちらと見て、「やはり勇者様だ」とか言って、尊敬の眼差しっぽい熱い視線をくれるので悪い気はしない。

 訳の分からない状況だが、少し楽しくさえ思ってしまう。


 城から出て、城を囲んでいる池を越えるために、橋を渡る。

 ここら辺一帯はアースガルドと呼ばれているはずだ。高い城壁に囲まれていて、魔物の恐れもなく平和に暮らしている最初の街だ。

 橋を渡ったり終えたら、今度はすぐ右手に進めばいい。

 そうすると、……ほら見えた。あの建物が冒険者の酒場のはずだ。


「すばらしいです!」

 ブリュンヒルドが頭を撫でてくれた。

 全身から活力がみなぎってくる。どうも俺は褒められて伸びるタイプだったようだ。


 冒険者の酒場の前まで来た。

 ゲームだとキャラメイクとかあったけど、どうなるんだろ?

 昨日はこのゲームを20時間近くやったけど、その中の1時間くらいはキャラメイクだった。凝ってしまう性質なのだ。

 想いを馳せながら、期待を胸に秘めながら、扉を開いた。


 扉を開くと、カランカランと鐘の音が響き渡った。

 たくさんいる美少女の中から、誰を選べばいいんだろう! と思っていた、俺の夢はもろく崩れる。


 人っ子一人いなかった。


「どうしたのですか? 進みましょう」

 呆然と立ち尽くす俺に、ブリュンヒルドが声をかけてくる。

 正面のカウンターにやさぐれた感じのお姉さん(30半ばくらい?)が酒を片手に机に頬杖をついて俺をにらんでいた。

 このおばさんが仲間じゃないだろうな……?


「ここは餓鬼の来るところじゃないわよ」

 誰が餓鬼だ。こちとらいい歳のサラリーマンだぞ。

「いえ、あの」


 目を瞬かせてブリュンヒルドを見る。

 彼女は可愛らしい笑顔を浮かべるだけだ。可愛いけど役に立たない。

「王様に仲間を選んで来いって言われたんですけど」

「は? ってことはあんたが今度の勇者かい?

 こんな餓鬼に何ができるっていうのさ!!」


 机を力任せに叩いたかと思うと、酒気帯びアラサーお姉さんは立ち上がり、俺たちがたった今通ってきた道をずんずんと歩いていく。

「あの、どこへ行くんですか」

「王のところに決まってんだろ!

 いつもうちの冒険者かっさらいやがって、直談判してやる!!」

 そういって、乱暴に扉を開けて出て行ってしまった。


 何が何やら訳が分からない。

 ところどころ実際のゲームと違うところがある。

 もちろん、ゲームでは、ただの受付があんな態度をとることはなかった。


『ああ勇者よ! 私どもの冒険者と共に一刻も早く、この世界をお救いください!』とかなんとか言っていた。

 一刻も早くと言われたのに、キャラメイクに1時間もかけたことを今更ながら怒っているのだろうか。


「私の勇者よ、彼女の態度に気に病むことはありません。

 すべては魔王のせいなのです。

 魔族によって、市民は恐怖に打ち震えているのです。

 彼女のことは、どうか嫌悪しないであげてください」

 恐怖に打ち震えているようには、どう見たって思えなかったけど、俺は頷いた。

 アラサーに比べたら、20台中盤の俺は餓鬼扱いされても仕方がないのかもしれない。


「また管理人さんが騒いでんの? うるさいわよ」

「まぁまぁ、管理人さんも色々と大変なんですよ……きっと」

 カウンターの横にある階段から声と共に降りてくる足音が聞こえた。

 階段のヘリを軸に飛び降りてきた女の子は、おそらく武闘家。

「あらあらおてんばですね」

 落ち着き払いながらゆっくり降りてきたのは、僧侶。


 武闘家ちゃんは、短い黒髪を左右にツインテールをつくっていて、動きに合わせて、テールがちょこちょこと揺れる。かわゆい。

 チャイナドレスっぽい服装は、チラリズムをあおってエロいんだけど、その下にきちんとスパッツを履いていて無敵のガード。残念無念。スパッツもエロいけど。

 まぁ、武闘家なんて色々なアクションするから必要な処置だよね。

 ここはキャラメイクの際も、涙を呑みながらこだわった点である。


 僧侶ちゃんは、淡い水色の長髪をポニーテイルにしている。

 歩くたびにゆったり揺れるさまが清涼な小川を連想させる。

 上下が繋がった清楚系のワンピースなんだけれど、スカートの丈が短くてけしからん。胸も大きくて、胸元があらわになっている。さらにけしからん。

 まぁ、俺がキャラメイクでそうしたんだけど。

 聖職者にあるまじき我侭ボディー。ギャップっていいよね。


 2人ともめちゃ可愛いめちゃタイプ。ぞっこんLOVE。

 つーか、俺が昨日の朝にキャラメイクにかまけて作り上げた芸術品そのものだった。


 さぁ、俺の魔法使いちゃんはどこなんだ!!

 赤髪で勝気なツンデレヒロインちゃんはどこにいるんだ!?

 見た目がパンクなのに幼女体系で愛しいあの娘はいずこ??

 ロリばばあ、早く出てきてくれ!


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