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※女の子の素肌

 昼食、休憩、夕食、風呂と終えたにも関わらずシギュンは、ずっと不安そうな顔のままだった。

 パーティ全員が乗ってもまだ余裕がある豪奢なベッドの上でくつろぐ。

「アリカーごめんー」

 シギュンは俺に雷魔法を落としたことがショックなのか、首を垂れながら謝り続ける。

 いつものように俺の傍から離れないが、服の裾を掴むだけだった。

 俺はシギュンを抱き上げて、頭を撫でながら言ってあげる。


「びっくりはしたけど、大丈夫だよ、シギュン。

 みんな助かったんだし、それでいいじゃないか」

「でもー」

「アリカ! 甘やかしちゃ駄目よ。

 雷の上級魔法なんか、受けて生きてる方が不思議なくらいなのよ?」

「大げさだよ。レベル差があるんだから、死ぬまではいかないって」

「いえ、アリカさん。シギュンさんはこれでも魔王な訳ですから」


 それもそうか。俺たち人間族のレベルと、本来ボスキャラである魔族の王のシギュンのレベルとでは、そもそも規格が異なる。

 それにこのゲームは、レベルが超重要ではあるが、能力がカンストしたらそれ以上はあまり意味がない。

 高いレベルは重要だけど、前提、という感じ。

 その上で、各地域で装備を整えたり、各指導者から奥義を教わったする方が重要になってくる。

 そのためには、

『○○をくれたら奥義を教えてやる』

『○○が欲しいなら△△を倒す必要がある』

『△△を倒すためには、□□というアイテムが必須』……以下ループ。

 というような定番のお使いゲーをこなす必要があるけど、得られる効果は絶大だ。


 黙っていると、俺の腕の中で縮こまっているシギュンが、不安を感じたのか顔を上げた。

 俺はシギュンの頭を撫でるのを再開する。

「わたし、アリカの邪魔かなー? わたし、役立たずかなー?」

「そんなことないよ。今日のことは気にしなくていいからね」

「だめだめだめだめ、ぜーったいだめ。気にしなきゃ駄目よ!

 今日だって、あのデカブツにだけ当てる方法があったはずよ。

 ちゃんと考えるか、もっと技を磨くようにしなさい!!」

 スカジは引き下がらない。

「うん、ごめんね……」

 スカジの激しい剣幕に、シギュンはさらにしゅんとしてしまう。

 流石に言い過ぎだ。


「スカジ、何もそこまで言わなくても。

 シギュンだって頑張ってるんだから」

「頑張るのは当たり前よ。あたしたちが守るのは、勇者のアリカなのよ?

 それに、これから一緒に旅するんでしょ。今度から、気をつけなさいよね。

 わかった? シギュン」

 シギュンがぱっと顔をあげる。

「一緒に旅していいのー?」

「当たり前じゃない。仲間なんだから」

「わーい」

 シギュンが俺の腕から抜け出して、スカジに抱きつく。

 スカジはまるで姉のようにシギュンを抱き寄せ、その頭や背中を撫でた。

「ふにゅー」

 などと意味不明な言葉を吐くシギュンは、撫でられるのが心地よいのかすぐ眠ってしまった。


 スカジが眠ったシギュンを膝から降ろす。その時、顔が苦痛にゆがんだのを俺は見逃さなかった。

「スカジ、やっぱりまだどこか悪いんだろ?」

「そんなことないわよ。あたし全回復してるもん」

 俺はスカジの言葉を無視して、右腕の指先から肩の根元までを触診する。

 スカジは俺の手から逃れようとしたが、肩を触れた時に苦悩が漏れた。

「この辺りか。無理するなよスカジ。イズン、なんとかならないかな?」

「あいにくと、ヒールで回復できないようであれば私には何も……。

 そうですねー、怪我の回復を促進する薬草を煎じてきますよ」

「いいって、こんなのすぐ直るから」というスカジを制して、俺はイズンにお願いする。

 イズンは素材を集めて調合してくる、と部屋を出て行った。


「もー、あたしは"気"で自分で治せるよ。おせっかいなんだから」

「どっちもやればいいじゃないか。心配なんだよ」

「アリカは人の心配し過ぎだよ。

 あのデカブツだって、一人で何とかしようとしたでしょ」

「だって、あいつがスカジを……」

 スカジがやんわりと笑って、俺の唇を一指し指で押し留めた。

「あたしの為に戦ってくれるのは凄く嬉しいけど。

 もっと自分のことを考えて? あたしの為に命なんか投げ出さないで」

「なんかなんて言うなよ」

 俺はスカジの指を引きはがして言った。

「アリカがあたしの勇者様でよかった」

 スカジの指が俺の頬を撫でて、そのまま首に回され、押し倒される。


 突如、心臓の鼓動が早くなり、血のめぐりが俺を急き立てる。

 けれど、耳元で聞こえてきたスカジの泣き声が、気持ちを静めてくれた。

 スカジは声を殺して泣いていた。俺は、スカジの頭と背中を撫でる。さっき、スカジがシギュンにしてやっていたみたいに優しく。

 こらえきれなくったのか、嗚咽が少し大きくなった。


「ううっ……う、うう。

 ごめんね。あたし、あの時本当はすごく怖かったの。

 これであたしは死んじゃうんだって。今までの修行とか、そんなの全部通じないんだって。

 あたし、ここで死んじゃうんだ、って」

「ごめん。俺のせいで辛い思いをさせて」

「アリカはどこも悪くないよ!」

 確かに、俺には他にどうしようも無かった。

 スカジとナリへの攻撃を防ぐ手立てが、あの時の俺にはなかった。

 トールの拳を剣で指したのが悪かったのか? そうも思えない。

 あの瞬間では最良の選択だったと今でも思う。

 仮にあそこで剣を突き出さなくても、ああいう自体はこれからだって何度も有り得るのだ。

 レベルだけ上がっても駄目だ。俺はもっと強くならないといけない。

 少なくとも、俺の大切なパーティを俺自身の手で守るくらいに。


「あのデカブツに殴られて、身体中痛くて。立ち上がれなかった。

 ナリに回復してもらって痛みが消えたのに、アリカを助けられなかった。

 ううん、助けようとしたの。でも、怖くて動けなくなっちゃった……。

 ごめん、ごめんね……アリカは、あたしの為に一人でも立ち向かってくれたのにね……」

「いいんだよ、スカジ。俺だって本当はいつも怖いんだ」

 トールの眼に剣を突き刺した後、スカジを殺されたと思った怒りが一瞬で恐怖に塗り替えられたのを思い出す。

 多分、人間にとって怒りよりも恐怖という感情の方が強いのだろう。

 けど、俺はあの時の俺自身の判断を受け入れられない。

 でもスカジも俺もこうして生きている。あの時、あのまま攻撃を続けていたら俺は死んでいたかもしれない。

 答えは誰にも分からない。その時々のベストを尽くすしかないんだ。

「アリカも、そうなの?」

「うん。でも、怖くても、痛くてもやらないといけないことだって思ったから」


「アリカは強いんだね。どうしたらそんな気持ちになれるの?」

「強くなんてないよ。自分にできることをやりたいだけなんだ。みんなを守りたい」

「アリカ……」

 スカジが顔をあげて、俺を見つめてくる。瞳は濡れていて、涙が頬を伝っている。

 俺はそっと手を伸ばして、スカジの涙の跡を優しく拭った。

 その手をスカジが上から抑える。俺の手を掴んで、頬に何度も触らせた。

 それが心地良いのか、スカジの目はとろんと溶けて、目をつぶる。

 瞳にたまっていた涙が溢れて零れ落ちた。

 俺はその涙の粒を唇で吸う。ちゅっと湿り気を帯びた音がなり、スカジの身体をビクつかせた。

 それでもスカジは目を閉じたままだ。

 俺は上体を起こす。

 俺は目をつむり、唇と、唇を合わせる。温かい感触が口から頬、顔、全身に広がっていく。

 俺はスカジとキスをした。


 スカジの手が俺の背に回される。指が何かを掴みたがっているかのように背中で暴れる。

 俺は口づけをしたまま自分の身体を横にスライドさせて、スカジの下から潜りでる。

 スカジの背を抱き、引き寄せ、俺とスカジの身体の位置が逆になった。俺が上だ。

 一旦、唇を離すとスカジは名残惜しそうな表情した。俺はスカジの頬、それから耳を撫でる。

 目の前の女の子が実在しているかを確かめるように、丹念に。

 スカジも同じように俺の頬を撫でるが、2回ほど上下させた後で、俺の顔を近づけるように手で引き寄せてきた。

 俺はその力に逆らわずに、もう一度スカジに唇を押し当てる。

 左手はスカジの首裏に回し、右手でスカジの頭を撫でる。

 再び、スカジの手は俺の背に回され、ぎゅっと抱きしめられた。

 両脚を使って俺の左足をからめ捕り、俺はスカジに捕われる。


「ねぇ」

 唇の感触を確かめるために、何度かソフトキスを繰り返していた時。

 唇が離れた瞬間を見計らって、スカジはそうつぶやいた。

「もっとたくさん触って。アリカなら……いいよ?」

 ぐちゃぐちゃに朦朧とする頭の中で、何度もスカジの言葉を繰り返して、ようやく意味を理解する。

 俺は喉がカラカラで言葉が出せなかった。代わりに、もう一度口づけをする。

 ワンピースのパジャマを肩から脱がせて、するすると降ろしていく。

 スカジは恥ずかしいのか、手をあてて胸を隠している。

 透き通るような肌は、火照っているのか、少し赤み帯びている。特に顔が真っ赤だ。

 女の子の秘所を守るパンツは、対照的に真っ白で、清純なはずなのにどこか淫靡だった。

 一部分が少しだけ濡れている。


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