※裸のスキンシップ
「おい、馬鹿、やめろ!!」
「我が胎動をもって、この力、大地を揺るがさん。螺旋波動掌!!」
スカジが両手を身体の前に突き出した。体内で増長した気が、衝撃波となって空気を切り裂いていく。
風呂場の壁面が大きな音を立てて吹き飛んだ。オークでも通れそうな穴が開く。
「なにやってんだよ!! 我慢しろって言っただろうが!!」
「えへへ、我慢できなかったんだもん!」
「もん、じゃねーよ! お前、これで何度目だよ!!
迷惑かかるからやめろっつーの!!」
魔物たちがわらわらと出てきて、外気で俺たちが冷えないように布で穴を覆ってくれる。
俺たちが出た後で、魔物たちがせっせと土建作業するはずだ。明日にはきっちり修復されていることだろう。
そもそも、この風呂だってそうだ。魔物たちが頑張ってくれている。
木炭は貴重だから、それを温存する為に魔術師たちが変わりばんこにずっと火魔法を詠唱し続けてくれているのだ。
俺たちの快楽は、魔物たちの犠牲の上に成り立っている。
それをいちいちぶっ壊されたら、魔物たちが可哀想だ。
みんな「いえいえ、お客様をもてなすのが私たちの使命ですから」と言ってくれるが、甘えすぎるのはよくない。
「寒い寒い」などとのたまいながら、スカジはまとったタオルを脱いで、浴槽に入る。
寒いのは、お前がたった今、壁をぶっ壊したからだろうが……。
まだ注意したいことはあったが、素っ裸になられると俺は途端に弱くなる
目を背けて、俺は怒りを冷ます為にシャワーを浴びることにした。
「あらあら、もうお身体を洗うんですか?」
イズンが言いながら、イスを移動させて、俺の後ろに腰かけた。
思わずそちらに目を向ける。
イズンのわがままボディ(91-59-86)は、出るとこ出ていて、引っ込むところ引っ込んでいる。
そのため、凹凸があり、それをタオルでは隠しきれないところがちらほら。
特にすらりと伸びる足の付け根なんかが、見えそ……。
あ、やばい。ちょっと下腹部が……。アレなアレがアレしちゃった。
俺は視線を逸らしてシャワーを浴びるのに専念する。
「じゃあ、綺麗にしましょうねー」
魔王城には石鹸やシャンプーもある。といって、元いた世界のものとは異なり、特定の魔物の体液とかからできているらしい。
最初聞いた時は少し吐き気がしたものだが、身体を綺麗にしたい欲求には敵わなかった。慣れればなんてことない。
イズンが俺の頭を洗い始める。自分で洗うと言っても「妻の努めですから」とか言って勝手にやってくるのだ。
自分で洗うのと違って、洗い方が予測できないので、俺はシャンプーが沁みないように目をつむる。
すると、イズンが触れている部分の感覚がやけに強調されて、ドキドキする。
いかんいかん。頭を洗ってもらってるだけじゃないか。
イズンの手が優しく頭を撫であげてくれて、心地よい。
俺が持っていたシャワーヘッドをイズンが取り上げて、頭を流してくれる。
泡の感触がするすると落ちて行く。俺の邪な心さも一緒に洗い流してくれればいいのに。
「目を開けちゃだめですからね。泡がまだ残っていますから」
耳元でそう聞こえたかと思ったら、俺の背中に柔らかいやわわい感触が押し付けられた。
91のバストだ! ひたすらにやわらかい。なのに肉厚感がある。
2つの矛盾する概念を持つイズンの胸が、彼女の動きに合わせて形を変えながら俺の背中に押し付けられた。
イズンのすべすべな手が俺の胸や腹をすーっと撫でていく。
「前は! 前は洗わなくていいから。前は! 前は!
いや、いつも言ってるでしょ。自分で洗うからいいから。前は!」
「ほらほら、暴れないでください。まだ洗い終わってないですからね」
イズンの言葉は、どこか小悪魔的な、というか俺を少し馬鹿にした風な口調のように聞こえた。
が、目を開けられないので、実際の表情は分からない。
「ほらほら、暴れないでください。
ちゃんと綺麗にしてあげますからね。……隅々まで」
「いや、いいからちょっとやめてよ」
と俺は言うのだが、何分イズンの手を抑えようとする自分の手の力が弱いのが自分で分かった。
いやよいやよ、と言いながらもっとして欲しいのだ。それが自分で分かってしまう。
そして、そんな自分が情けなくも感じる。
正直に言えば、俺も男の子なので年上のお姉さんにもてあそんでもらいたい。
それがイズンには分かっているのか「んふふ」とクスクス笑いながら、丁寧に俺の身体を撫であげる。
俺は顔がカーッと熱くなり、頭が沸騰し、何も考えられなくなってくる。
ドクドクと脊椎に流れこむ血液の音が頭に響く。
指先の一つ一つに血液が流れ込むのがリアルに感じられ、身体が痺れたように小刻みに痙攣する。
内側から流れる血液に食い破られるような感覚。
「あーわたしもやるー」
シギュンの声が聞こえたと思ったら、膝の上に何かが跨った。
「んんん!!」
太もも越しに伝わる、あまりの柔らかさに叫び声をあげそうになった。
そこが激しく熱を持ったように熱く感じる。
「ふふーん」
シギュンは楽しそうに笑いながら、俺の身体をやたらめったらに洗う。
洗うというか遊ぶというか。適当にごしごしとしてくる。
「シ、シギュン、あんまり暴れないで。そのえっと」
俺はシギュンの肩を掴んで離そうとしたが、手が滑って、シギュンを抱きしめるかのように手が背中に周ってしまった。
「わーい、だっこだー」
シギュンは勘違いして俺の背中に手を回し、足で腰をホールドされてしまう。
腹の部分に感じる妙な熱さは、なんだろう。これってもしかして性……
これはアカンって!!
「ねーねー、だっこー」
抱き上げないことに抗議するように、シギュンは俺に体重をかけてきた。
スパコーンッ。
体勢を崩したせいで、イスから落ち、反動でイスは投げ出された。
俺はシギュンに手を回して、衝撃から身を守る。
「きゃー」という声と共に、俺の背中に上からイズンが落ちてきた。
イズンの顎が俺の背中を強打する。
バックアタック&クリティカル。推定50ダメージを受けるが俺は耐える。
俺は四つん這いになって、シギュンには体重がかからないよう防いでいる。
「大丈夫か、シギュン!」
目を開けて、下にうずくまっているシギュンを見た。
シギュンは「いててー」と頭を抑えながら、足をM字に開脚している。
目の前に、あられもない姿の、幼女の、せい……。
視界がぐにゃりと曲り、俺の理性が飛んだ。




