冥王を拾いました!
ある日、平和になって普通に働く街娘となった私は、川の方で洗濯をするべく出掛けると、路上の隅っこに座り込む……冥王に出会った。
「は……はぁー!?」
私は冥王のその成れの果ての姿を見て、驚いて洗濯の桶を落としてしまい、大声で叫んでしまった。
「煩いぞ娘、騒ぐな」
冷却な声でそう言い、冷ややかな目で私を見るこいつは……。
「まっ間違いないわ……その白菜みたいな頭、緑の役に立ちそうにない鎧。間違いなく冥王!?」
冥王と口にすると、冥王はエルフのような自分の耳をピクッとさせて言う。
「お前、あの時の勇者か?――はっ!笑うがいい。冥王も地に堕ちた」
「あんたねぇ、笑うもなにも――」
今では私も似たようなもの。そう言おうとした時、不意に冥王の体のあちこちに怪我があることに気づいた。
「あんたどうしたの!?傷だらけじゃない!」
「お前がやったんだろ。貴様のせいで――」
「あー動くなっ!だからって治癒能力ぐらい冥王にもあるでしょ?全く……私が回復魔法覚えてて良かったわね」
私は冥王と同じ目線になるように立ち膝をしながら、魔法で冥王の体を癒す。
「痛っつ……」
「我慢なさいったく……」
冥王の怪我が完全に全て塞がり、魔法を止めると、冥王は肩をゴキゴキと鳴らして言う。
「俺の傷を直して良かったのか?またこの腐れ切った世界を破滅しようとするかもしれんぞ」
冥王は私をじろりと見る。私はつーんと鼻を高くして言った。
「もうこの世界を破滅させたりなんかさせませーん。それに冥王、あんた自分の体を回復させることもできないくらい魔力ないんでしょ?だったら余裕♪」
冥王は目を見開き、私は心の中で……あぁ、図星か、と思った。
「とにかく、早くこんな所から移動しましょ。それとあんたの格好も目立ち過ぎ。服を見繕わないと」
冥王の格好は、どう見てもお前魔物だろと言われても不思議じゃない程ごっつい。そのまま街を歩かせたりしたら大騒ぎになるに決まってる。
「とりあえず、私の家に行きましょ。洗濯は後でいいわ」
洗濯の桶と洗うはずだった服とシーツを拾い、冥王を立たせて家に向かう。その帰路で私は思った。
――冥王を、拾ってしまったと。
溜まっていたノートの小説を、やっとの思いで投稿することができました!
これまで投稿してきたお話も進めなければいけないのに、話が思いつかずスランプだった時に夢に出てきた内容が今回の作品です(笑)
脱字、誤字、感想等ありましたら、お気軽にコメントをください^^
宜しくお願い致します。