第七十八楽章 決戦の刻・禍神
「ヤズミ!!」
最上階の部屋。そこにいたのは3体の石像、禍神の像だけだった。
「何処にいやがる……!」
肩透かしを食らった怒りがふつふつと湧き上がり、アルベルトは心の奥底から無限に溢れる殺意に身を委ねるか否かを真剣に迷いながら《エクスピアティオ》を構えた。
「へえ、もう来たんだ。やっぱガラクタ共じゃ話にならないかぁ」
何処からともなく聞こえるヤズミの声に小春が素早く周囲を見渡す。
「何処!?貴方も剣を持った身なら正々堂々戦いなさい!!」
「嫌に決まってるじゃないの。大体さぁ、全員が幸せになれる世界って実現出来ると本気で思ってる訳?」
「思ってちゃ悪いか」
苛立ちながらも舌戦に応じる構えを見せてやると、ヤズミはせせら笑うように声を躍らせた。
「だってそうだろ?現におのれの目的が通ったら僕が不幸じゃないか」
責めるような響きを帯び、ヤズミは当然のように言い放った。
「僕はね、生まれた時から壊滅的に運が悪いんだ。一定の周期で運が更に悪くなる最悪ゾーンなんてのもある。おのれはそんな僕を救いもせずに全部を幸せにするなんて馬鹿げた事をほざいてるんだよ?分かってる?」
「分かってないのはお前の方だろ」
どんな大言が飛び出すかと思っていたらこの有様。アルベルトは思わず脱力しそうになる自分を叱咤しながら剣を構え直した。
「お前は勘違いしている。俺が掲げているのは『誰もが平等に努力が報われる世界』だ。お前みたいに自分が不幸だから周りも不幸にしようなんてクズ野郎には、それ相応の救いしかないのは当然だろうが!」
もとよりヤズミを救うつもりなど羽虫の爪程もないのだが、そこはあえて言わずにおく。どの道言う必要のない事だ。
「俺だけじゃない、この《逆十字世界》のどの国の法に照らしてもお前は間違いなく極刑だ!」
「へえ、僕を倒すのに法律なんて言い訳にするんだ?とんだ《勇者》だねえ」
「貴様、いい加減に……!」
激昂しかけるセーラを手で制し、アルベルトは大きく溜息をついた。
「分かった分かった。誰の為でもない、俺自身の我儘でぶっ殺してやる……これでいいかゲス野郎!!」
「あははっ!やーっと本音が出たねえ?おのれも所詮は自分に酔った人殺しって事さ!」
その言葉を皮切りに3体の禍神が実体化する。アルベルトは無言で剣を構え、セーラ達もそれに呼応するようにそれぞれ得物を構えた。
「っ!?」
その瞬間、3体の禍神のうち青白い肌とでっぷりと太った体躯を持つ牛めいた神・魔神ロキが姿を消す。何処に行ったのかと焦るが、一瞬の後に外の方で轟音が響いた。
「外か!」
「そういう事。表で頑張ってるトカゲ達、どれだけ生きていられるかなぁ?」
ギリとアルベルトは歯を食い縛る。その背中を聖四郎が殆ど殴る勢いで叩いた。
「いてえっ!?」
「何を怒りに我を忘れているでござるか!この残る禍神は某達が引き受け申す。アルベルト殿は急ぎヤズミの首を!」
「そうね。バレリア達だって《勇者》の仲間の子孫、そう容易くやられはしないわ」
セーラの言葉に頷き、アルベルトはケーナに目配せする。意図を察したケーナは目を閉じてシルヴァーナの姿へと変身した。
(アル乗って!ケーナが一緒に行く!!)
「分かった。頼むぞケーナ!セーラ達も……死ぬな」
「任せて。貴方の騎士としてその心、確かに受け取ったわ」
アルベルトはケーナの背に飛び乗りその場を飛び立つ。セーラ達は互いに顔を見合わせ、残る鬼神ヘルと邪神ヨルムンガンドを迎え撃った。
一方その頃。突如現れた魔神ロキにバレリア達は完全に不意を突かれた形だった。
「こんにゃろ!」
完全に条件反射で戦斧を振るったマオの一撃がロキを捉えるも、脂ぎった贅肉としか思えない肉の鎧は柔らかくその一撃を受け止める。そのぶよぶよさ加減からは想像もつかない鋭い一撃がマオを襲い、身の丈を超える戦斧を振るうように見えない華奢な体を後方へと吹っ飛ばした。
「がはっ!?」
「マオ!このデブ野郎がああああああああああああ!!!!」
バレリアが全身に殺気を漲らせて跳躍し、生物が決して鍛えられない目を狙って爪を煌かせる。迎撃するように振るわれた腕に尻尾を巻きつけてバランスを保ちながら彼女は一気に飛び込んだ。
「総員構え、射て!!」
セルヴィの指示でエルフ達が一斉に弓を放ち、バレリアに気を取られたロキを狙う。しかし矢は全て肉の部分に弾かれて落ちた。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
「ぎゃあああああああああああああ!!」
ロキの全身から肉の触手が無数に湧き出たかと思うと、一瞬にしてバレリアを捉えて締め上げる。少なくない骨を折られて吐血する彼女を救わんと体勢を立て直したマオが走った。
「バレリアを放せええええええええ!!」
同時にバズバとシバも得物を振るってバレリアを戒める触手を斬り払った。一旦距離を取ってセルヴィに回復を頼むも、これは一筋縄で行かない相手だというのは全員が分かっていた。
「さて、どうするかな……?こういうのを確か……ヤボー的じゃない、ゼツリン的でもない……」
「絶望的、ね。でもまだ生きてる以上負けじゃありません」
セルヴィに言われ、マオはニヤリと笑った。
「だね、まだ僕達は生きてるんだ!」
時を同じくしてセーラ達も残る2体の禍神と交戦に入っていた。巨大な甲殻を纏った人の上半身と巨大なエビの下半身を持ち、手には三叉の矛を持つ鬼神ヘル。そして実体が見えない靄のような存在である邪神ヨルムンガンド。その力はどちらも決して侮って良い相手ではなかった。
「私が行くわ!コハル、リリィ援護よろしく!」
セーラが持ち前の俊足を生かして一気に間合いを詰める。リリィの砲撃がヘルの右肩を直撃したその瞬間を狙い甲殻の継ぎ目に《ラグナロク》を突き立てた。すかさず聖四郎もそれに合わせて《天覇》を振るう。
「ジャッジメント!!」
「炎狼閃!!」
《ラグナロク》に記録された神聖魔法を発動させ、体の内側からダメージを与える。しかしヘルは堪えた様子もなく槍を振るってセーラを迎え撃った。
「紅蓮華!!」
小春の術が炎の華を作り出しヨルムンガンドを包み込む。ヨルムンガンドは一瞬怯んだようにも見えたが、次の瞬間全身からどす黒い瘴気のような物を噴出してきた。
「ぁああああああああああああああああ!?」
逃げ遅れたティファニアスの左腕がみるみる内に焼け爛れていく。元々が白く美しい腕だけに、その痛ましさは並大抵ではない。
「皆さん下がってて下さい!リリィ・ティルミット、目標を狙い撃ちます!!」
《アバリス改》にダイヤモンドを装填してリリィがヘルを狙いトリガーを引く。現時点での最強火力である彼女の一撃を持ってしても、ヘルの甲殻は胸部が一部破損しただけだった。
「効いてない!?」
「いいえ、ダメージ自体はちゃんと通ってます。相手が余りにも桁違いにタフな所為で、言ってしまえば火力不足です!」
アリアンロッドの分析にセーラは思わず歯噛みした。元信と忠勝の連撃も幾度と無くヘルを直撃しているが決定打にはなっていなかった。
(所詮、人間の身で神に抗おうなど馬鹿げた事だというの!?ううん……アルなら絶対に諦めない。なら私が諦める訳には行かないでしょう!)
《ラグナロク》を構えなおし、今一度交戦の意思を見せると傍らに《ベカトゥム》を下段に構えたルキナが進み出た。
「良い目じゃ。ならば妾も共に往こう!リセル供をせい!」
「はいルキナ様!」
リセルが矢を放ち、ルキナとセーラは左右から同時にヘルを狙う。その時ヨルムンガンドが動いた。
「避けて!!」
「コハルさん!?」
ヨルムンガンドが放った黒い光の槍がリリィを庇った小春の胸を刺し貫く。驚きに目を見開いた表情のまま、彼女は槍の余波で開いた穴から地上へと落ちて行った。
「コハルーーーーーーーーー!!」
「小春姫えええええええええ!!」
セーラと聖四郎の絶叫が響き渡った。しかしそんな彼女達の様子になど斟酌せず、2体の禍神は再び力を解き放とうとしていた。
セーラ達が命懸けの死闘を繰り広げている頃。ヤズミは瓦礫の大陸の一角でその様子を嘲笑いながら見ていた。
「つくづく馬鹿だよねえ。あいつらが禍神に殺されればそれで良し、もし勝っても禍神の力は完全に僕に吸収される!どちらにしても僕の愉悦は確定……」
「《ヴァジュラ》!!」
翠の風が渦巻き、右手にブーメランを構えたアルベルトはケーナの背中に乗ったまま突っ込んできた。繰り出される旋風を纏った一撃をヤズミは持ち前の直感と瞬間移動で難なく回避していく。
「《レーヴァテイン》!!」
「ちいっ!」
《エクスピアティオ》と《レーヴァテイン》の連撃を次々と叩き込まれ、何とか自前の刀で捌ききる。しかしアルベルトの猛攻はまだ終わらなかった。
「どんどん行くぜ?《オケアノス》!!」
跳躍して回避しようとしたところを右足に鞭が巻きつき、そのまま捻じ切られる。地面に叩きつけられたところでアルベルトはケーナの背中から飛び降り、武器を《アポカリプス》に切り替えてトリガーを引いた。
「こ、このっ!」
狙撃を何とかかわすヤズミを今度は《コアトリクエ》で迎え撃つ。脇腹に痛烈な一撃を叩き込まれ、ヤズミは血反吐を吐きながら無様に転がった。
「これも持って行っちゃえ!」
人間の姿に戻ったケーナも《カラドボルグ》を振るい突きかかる。アルベルトも武器を《ゲイボルグ》に切り替えて追撃を仕掛けた。
「へ、へえ……本当に殺す気なんだ?生まれつき不幸で、此処までにもずっと運の悪い道を歩いてきた哀れな子供に救いの手も差し伸べずにさぁ!」
「今更命乞いなんて聞かないぜ。とっくの昔にお前を殺すと決めてるからな!」
アルベルトの猛攻を受けながらもヤズミはある程度体をずらす事で急所への直撃は避けていた。
「ところでさ、おのれの大事にしてる巫女が死んだって分かってる?」
「何?」
血を吐きながらもヤズミはせせら笑う。その笑みにアルベルトは寒気を感じて剣を止めた。
「小春って言ったよね。あの綺麗な巫女……ヨルムンガンドの槍で串刺しになって落ちてったよ」
「嘘!」
ケーナが叫ぶが、ヤズミは腹を抱えて笑い出した。
「馬鹿だねえ、真っ先に犠牲を出して戦おうとしてるんだからとんだ《勇者》だよ!」
「小春が、死んだ……」
「死んだってのは違うね。おのれが殺したんだ。おのれに付いて来て、おのれに惚れて、おのれに出会ったばかりに無様に死んだのさ!この人殺し!人殺し!人殺し!」
自分の傷を治し、ヤズミは腹を抱えて嘲笑う。対するアルベルトは何も言わずに唯立っていた。
(あれ、ここは……?私、死んだのかな……)
朦朧とする意識の中で小春は自分の胸に手を当てる。べちゃりという感触と共に左手は真っ赤に染まっていた。
「いいえ、まだ死んではいないわ。私が此処に暮らしている風と水と火と土と光の精霊達に貴女を生かせと命令しているからね」
「!?」
ようやく意識が覚醒する。小春は暖かな光の繭の様な物の中で寝かされており、繭の向こう側には見覚えのない女性が座っているのが見えた。
「貴女は……?」
「私はマリエラ。まあこの遺跡というか小屋に残ってる残留思念と言うべき存在ね」
その名には聞き覚えがあった。確かガルーダを倒しに行く課題の最中、アルベルトと一夜を明かした石の小屋でその名を見たのだ。
「貴女が思っている通りの相手よコハル。かつて貴女と同じ巫女として《勇者》アーサーと共に戦い、魔王アムドゥシアスを封印した者。それが私」
「じゃあ此処はあの時の?」
マリエラは頷いた。
「恐ろしい強運ね。あの高さから落ちて無事なのもそうだけど、ピンポイントで此処へ落ちて来るんだもの。それだけこの世界がコハルを生かそうとしているって事なんでしょうけど」
「そう、なんでしょうか」
「そうよ。《勇者》はこの世界を脅かす脅威を排除する事は出来ても、戦いで荒廃した世界を正せるかと言ったら疑問符だから。貴女のように全てを慈しみ愛せる人が必要なの」
小春はよく分からないと首を傾げるが、ややあって自分の仲間と恋人がまだ戦っている事を思い出した。
「っ!いけない!私も戻らないと……」
「無理よ。空を飛ぶ手段もない、今は精霊の力で生かされているけど本来なら即死ものの怪我をしているのにどうやって戦うつもり?少し落ち着いて、私の力を渡すから」
沸騰しかかっていた頭が一瞬で冷える。小春はどういう事かとマリエラを見やった。
「言ったでしょ?元々私も巫女として戦っていたわ。だから私の力は貴女ととても親和性が高いの」
「それで、私に力を?」
「ええ。私もこの《逆十字世界》を……そして何よりも《勇者》を愛した1人だから」
そう言うマリエラは自嘲するように苦笑していた。
「まあ貴女達と違って、私とセシルはアーサーを共有するのじゃなく争ってしまったのだけどね。結果としてチームの連携はガタガタ、シルヴァーナや、アドゥンやガーランドやティファニアスにも随分と迷惑をかけてしまったわ」
「え、ティファニアス……?」
「どうしたの?……ってああそうか。元々彼女の名前は女神から取られたのよ。よくあるでしょ?史実の偉人や英雄にあやかって名前をつけるって」
一瞬感じた疑問が氷解し、小春は話の腰を折った事を詫びるように頭を下げた。
「まあそんなだったから結局アムドゥシアスも封印が精一杯。結果としてアーサーとセシルがあんな事になってしまったから、ある意味では私の所為だったのかもね」
私がアーサーを愛さなければ。そう呟いたマリエラに、小春は思わず首を振っていた。
「違います!誰かを愛する事が罪になんてなる筈がありません!」
「その結果愛した人を無為に死なせ、貴女達に面倒事を押し付けたとしても?」
小春は頷いた。アムドゥシアスを討伐するのは確かに大変だったが、結果としてアルベルトはルキナという得難い友(婚約者と言うべきか)を得たのだから。
「本当に強いわね貴女……力では《勇者》や《戦乙女》に敵わないけど、誰よりも心が強い」
繭を突き抜けてマリエラの指が小春の額に触れた。
「私がとうとう使いこなす事の出来なかった術だけど、太陽に愛された貴女なら或いは……」
頭の中に直接術式を書き込まれる感覚に、小春は思わず身じろぎした。
「でも気をつけて。この力は貴女とその仲間に無限の力を与えるわ。でもその力に溺れては駄目よ」
「分かっています。アルが私達を守ってくれているように、私もアルや皆を守る……これはその為に使います」
その言葉を聞いて安心したのか、マリエラは微笑んで光と共に消える。そして小春の体は美しい蒼い光に包まれた。
天乃と布都を加えても決定打とはならないヘルとヨルムンガンドを相手にした戦い。セーラ達も疲弊し倒れるのは時間の問題と思われていた、その時である。
「セーラさん!下から何か……」
「え!?」
リリィの言葉が終わるか終わらない内に床をぶち抜いて蒼い閃光が飛び込む。それはヘルの右腕を根元から粉砕し、更に下半身を後ろ半分を消滅させてセーラ達の前に舞い降りた。
「コハル!?」
その光の中から現れたのは、巫女装束こそ破れ血で汚れていたが紛れも無く小春であった。
「無事だったのね!本当によかった……!」
自分のマントを羽織らせながらセーラは涙を拭う。小春はマントを受け取り、留め金をつけながら頷いた。
「ありがとう。心配かけてごめんね」
「良いのよ。生きててくれたんだから!」
小春は微笑み、髪を結んでいたリボンを解いて錫杖を振り上げた。
「命を燃やし力と変えよ!さあ、闇を照らし己を太陽と化せ!!」
その声は戦いに臨む全ての者達、その心に深く響き渡った。
「これより反撃を……開始します!!」
小春の錫杖から放たれた光の弾丸が凄まじい加速でヨルムンガンドを襲う。如何なる攻撃も受け付けなかった靄の身体は光で焼かれ貫かれた。しかし光は途中で意思を持つかのように方向を転換し幾度と無く邪神を襲った。
「滅!!」
拍手1つ。その音が響くと同時に邪神はそこに最初から存在しなかったかのように消滅していた。
「す、凄いでござる……!」
小春の背中を見つめていた聖四郎は、ややあって自分の中からも湧き水のように湧き上がる力に目を見開いた。
「これは……!?」
思わず驚いて目を丸くするも、ややあってこの暖かさは小春そのものなのだと思い出す。
「これは普段小春姫が使っている力……奇跡の光でござるな!」
それは外で戦っているバレリア達も例外ではなかった。傷ついた彼女達の体を癒し、更なる力となって全身を包み込む。
「物凄いパワーがアタイにも溢れて来るぜ!」
「これが、コハルの力……!」
バレリアとマオは雄叫びをあげながらロキに襲い掛かり、セルヴィは溢れる力を矢に纏わせて一気に解き放った。
同じ頃。《エクスカリバー》のブリッジでリリィに代わって砲手についていたサジタリウスはミスティからの連絡を受けていた。
「絶対零度砲弾だと!?」
「はい。一発しかありませんが、これを撃ち込めばそれが物質である限り必ず凍らせられます」
「……」
サジタリウスの目線の先にはモニターがあり、そこには魔神ロキと戦うバレリア達の姿があった。
「一瞬でも凍らせて後は彼女達次第か……分かった。その砲弾を装填してくれ」
「了解。1度で当てて下さいよ?」
サジタリウスは思わず笑ってしまう。恐らく今まで砲手の座にいた、半分だけ血の繋がった妹ならこんな言葉を言われる事もないだろうから。
「努力しよう。リリィのように上手くやれるかは保障しないがな」
照準を合わせてトリガーを引く。放たれた砲弾は一直線にロキ目掛けて飛び、寸分違わず直撃した。
「おわあっ!?」
蒼い閃光がロキを直撃し、ぶよぶよの身体は一瞬で凍り付いていた。
「今ですバレリア!」
「おう!」
セルヴィの声に頷き、バレリアは自前の爪を振るって凍った皮膚を斬り裂く。
「表面破ってしまえばこっちのもんだ!」
バズバとシバも手伝って中の脂や贅肉を片っ端から引き摺り出し、ついには腸をも引き千切る。そこで凍結が解けたらしい魔神は苦痛で咆哮をあげた。
「殺っちまえマオ!」
「うおりゃああああああああああああああ!!!!!!」
まだ凍っている首。そこを狙いマオは斧を一閃させ、その首を見事に斬り落とした。
セーラ達も反撃に出ていた。
「おらあああああああああああああああああ!!!」
トールの放つ《ミョルニル》の一撃があれ程に堅牢だったヘルの甲殻を次々と粉砕し、忠勝の繰り出す《蜻蛉切》で中身を抉りながら撒き散らしていく。そこを更に元信と聖四郎が追撃した。
「これが某に使える最強の一撃……烈火あああああああああ!!!!!」
2本の槍に炎を纏わせ、凄まじい速さで突き続ける。腱が切れたのか両腕がだらんと垂れ下がったのを見てリリィが《アバリス改》を構え直した。
「こいつでフィナーレです!フレア・バースト!!」
複数の宝石を合成して作り出した究極弾丸。それを更にダイヤモンドで威力を増幅するという無茶苦茶な一撃が、ヘルの頭を根元から消滅させた。
「まだ動くと言うのなら……!」
アリアンロッドの《ファフニール》で力を増幅し、セーラは《ラグナロク》を手に走った。
「咲き乱れる薔薇の如く……斬り裂け!!」
同時に小春とリセルが放った光の矢が次々と全身を刺し貫き、最後にルキナが《ベカトゥム》を手に跳躍した。
「異次元の彼方に消え失せるが良いわ!ヴァルナー!!!」
断末魔の声すらないままにヘルは次元の裂け目に飲み込まれていった。その余韻に浸る間もなく小春は立ち上がった。
「アルの所へ行きましょう。まだ動ける人は私に付いて来て!」
そう言って走り出す小春の後を、セーラとルキナとリセルが追いかけて行った。
続く




