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魔女は竜と謳う  作者: Fe
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第三楽章 少年と竜

一日程休みを挟み、その間に自警団が森の中を探索した結果盗賊団は一人残らず殲滅されたと結論が出された。というのも、ギルドから回ってきていた手配書に記された人数とアルベルト(というか大半は七帝竜)が殺した残骸の数が概ね一致した為である。中には肉片1つ残さずに焼き尽くされたのもいる為、その辺は小春とアルベルトの証言も込みであるが。


「俺がガチに殺ったのは3人だけなのに、全員分の賞金が出るとかどうなんだ?」


「仕方ないでしょう?七帝竜に賞金を渡す訳にも行かないし、宿主が貴方である以上どの道貴方の物よ」


ギルドから送られてきた金貨の詰まった袋を前に、アルベルトは苦笑気味に頭をかいた。


「とりあえずミスティに頑丈な金庫でも作って貰うか」


「その賞金の一部で購入したほうが安全かつ確実よ。貴方のくじ運が並外れているなら別だけど」


セーラの突っ込みにアルベルトはまた頭をかいた。


「しかし参った。いきなり大金渡されても使い道というか、使い方が分からん。なあ小春、半分持ってかないか?」


「何言ってるのよ。アルが戦って得たお金でしょ?」


「俺が仕留めたのは3人だけ。残りは全部こいつらが片付けちまっただろ?」


「因みに私達も受け取る訳には行かないわ。その場にいて援護射撃を行ったコハルならともかく、私達は正真正銘何もしていないのだから」


アルベルトは頭を抱えて机に突っ伏した。どうすればいいのか、右手に宿った七帝竜の事もすっ飛ばす勢いで考え込み……結局思考が堂々巡りして思考停止状態に陥った。


「だあああああ!悩んでても仕方ない、キノコ探しに行こう!」


「あ、そうね。私達の課題はまだ終わってなかったし」


盗賊討伐でもう終わった気になっていたが、よくよく考えれば本来の課題は《メイデンマッシュ》の採取なのだから。


「つー訳で織江、よければこれをしばらく預かってくれないか?織江なら間違いはないだろうし」


「そこまで信用されちゃ応えない訳に行かないね。いいよ、私の責任をもって全額預からせて貰うよ」


織江に金貨の袋を預け、アルベルトと小春は準備を整えて再び森へと向かった。







「……のだが何故お前等がいる?」


「私の班も課題がまだだし、この際便乗させて貰おうかなと」


「ケーナは皆と一緒がいいから」


セーラとケーナが付いて来ていた。2人の班も課題は終わっていないとの事なので、特に問題はない(複数の班が協力してはいけないという規則もない)


「まあそれなら別にいいか。な、小春」


「ええ。セーラさんとケーナちゃんがいてくれるならとっても心強いわ」


「更に小春さんある所にリリィありです」


何時の間にかリリィも乱入していた。つまり一年のグループに所属する戦闘要員は全員集合した事になってしまった。


「じゃあ仕方ない。全員で課題クリアするか」


半ば諦めの境地でぼやくと、全員が笑って頷いた。









その後、アルベルトがフロントを勤め、近接戦闘も得意としているセーラとケーナが左右を固める。リリィが殿で小春を囲む陣形を組んで移動していた。


「……魔物も盗賊も出て来ないってのは微妙だな。まあ盗賊はマジで殲滅されたのかもしれないが」


先日の戦闘の爪痕が生々しい広場に出て、アルベルトは小さく溜息をついた。目に付く残骸は回収(魔法を使って生前の様子を確認したりもする為)されているが、岩や樹木にこびり付いた焦げ跡や肉片がそこらに散らばっているのだ。


「余り長居はしたくないわね。もう少し上流へ行きましょうか」


「だな」


セーラに頷き、アルベルトは川沿いに歩き始めた。


「アル、1つ訊いてもいいかしら」


「何だ?」


少し歩き、小休止を取ろうと木陰に腰を下ろしたところでセーラが口を開いた。


「答え難かったら無理に答えなくてもいいわ。右手に竜を宿すってどんな気持ちなのかって」


「正直あんま実感ないんだわ。壊れた封印の腕輪はミスティが作り直してくれたし……まあ右手は相変わらず動かないけどな」


ミスティは「しばらく時間を貰えれば術式を解析してアルの右手を動かしながら封印出来るように作り替えてみせる」と宣言して研究に没頭している。


「でもな、確かに怖いってのはある。怖いし、こいつらの力を使って俺が《サザンの悲劇》を起こした事も事実。その過去と今ある力に立ち向かい戦えって言われたし、まあ思うがままに生きてみようとは思う」


それで殺された村の人達や巻き込まれた他の人間がどう思うかはアルベルトには分からない。だがそれでも彼は単純に生きたかったのだ。


「せめて俺に生きてくれと言った奴の分は生きなくちゃならんだろ」


「それは誰の事かしらね?」


アルベルトは意味ありげに笑い、セーラも後ろを振り返って微笑んだ。


「陽だまりのような娘ね。まさに小春だわ」


「俺には暖かすぎて火傷しそうだがな」


セーラは小さく「少し妬けるわね」と呟いて草原に寝そべった。アルベルトもその隣に腰を落ち着けながら川面に目をやる。


「『力を持つのであれば、それに相応しい義務を果たせ』……私の家に代々伝わる家訓の1つよ」


「その理屈で行けば俺は神にならないといけないな」


1体でも強大過ぎる力を持つ竜が7体だ。アルベルトに秘められた力はまさに天地を創造した神と同等のものと言えた。


「なれるんじゃないかしら。奪われる痛みと悲しみを知っているアルなら良い神様になれそうだけど」


「勘弁してくれ。ガラじゃねえし、この世界全部を背負える程俺の腕は太くない」


何処までも小市民な考えのアルベルトである。


「そう。まあこれはあくまで私の家訓だし、アルが従う義務はないわ。勿体無いとは思うけどね」


「使い方も分からんのに無茶言うな。精々戦争になったら敵陣に放り込んで封印解くくらいしかないだろうが」


いいところ特攻兵器である。確実に世界を滅ぼす最終兵器クラスであるが。


「……さて、休憩もこれくらいでいいかしらね。コハル達もいい……って何水遊びしてるの!?」


何時の間にか靴を脱いで川に入っている小春達に、流石のセーラも米神に青筋が浮かぶ。


「何だ、ハブられて寂しいのか」


「違う!」


そう言いつつ若干涙目では全く説得力がなかった。








そこから更に川を遡り、広大な湖に辿り着いた。


「キノコが生えてるとしたらこの辺だよな。好都合な事に夕べは土砂降りだったし」


「ですね。しかし困り者なのはスカのキノコまでそこら中に生えてるって事です」


リリィはそう言いながら、足元に生えていたスポンジのようなキノコを一本引き抜いた。


「因みにこれ、意外に甘くて美味しいですよ。学名は無茶苦茶に長ったらしいですが、巷ではマッシュクーヘンなどと呼ばれています」


「……依存性はないだろうな?」


「さて?一度食べると病み付きになる味ですが」


「捨てなさい」


セーラに言われ、リリィは残念そうにキノコを湖に投げ込んだ。


「まあ心底食い物に困ったらそのキノコを食えばいいか」


アルベルトが冗談交じりに呟いたその時だった。


「ね、ねえ皆?何か地響きが聞こえないかしら。それも複数」


「出来れば気のせいであって欲しかったが……小春も聞こえたなら間違いなく事実だろうな」


アルベルトとセーラは剣を抜き、リリィも背中に背負っていた砲身を腰だめに構える。小春とケーナもそれぞれ武器を手に取った。


「げ、アサルトオークかよ!?」


オーク種の中でも獰猛かつ残忍、更には人間が大好物というとんでもない魔物である。


「だがその大きさなら俺の畑だ!」


アルベルトの身長(178cm)よりも長い棍棒を振り下ろすオークの腕に飛び乗り、彼は一気に首まで駆け上る。


「おらぁ!!」


フルスイングで振るわれた一撃はオークの首を落とし、断末魔の悲鳴もないままに絶命させた。


「流石にやるわね……でも!」


セーラは対照的に舞うような動きでオークの懐まで飛び込む。


「我は闇を裂く炎雷と化す!」


左手に炎を纏わせて拳を叩き込み、焼かれる事で強度の下がった箇所へサーベルを突き刺す。突如として天から降り注ぐ豪雷によってオークは脳天から砕かれて倒れ伏した。


「では私も……沈め」


リリィの放った砲撃は数体のオークを纏めて屠る。その砲撃を恐れてか、リリィを狙いを定めたオーク達の前にケーナが立ちはだかった。


「ごめんね、お休みなさい」


その言葉と共に放たれたのは漆黒の闇。一切の存在を許容しないとばかりに開かれた暗黒の渦にオーク達は成す術なく飲み込まれていく。まるでその場には何も存在しなかったかのように全てが消滅していた。


「奔れ炎天!炎の矢……五月雨!!」


小春が得意とする炎の矢に連射性能を加えたバリエーションだ。無数の矢に全身を射抜かれ、オークはくぐもった声をあげながら仰向けに倒れた。


「これで全部か?」


「恐らくはね」


残った1体の首を叩き潰し、アルベルトは左手で大剣を軽く振り回した。


「さて、改めてキノコ探しを……っ!?」


セーラの背後に倒れていたオークがぴくりと動いた。


「セーラ後ろだ!」


「く……っ!」


振るわれた棍棒を盾で受け止めるが、オークの豪腕に対してセーラの体重は余りにも軽過ぎた。たまらず吹き飛ばされ、背後にいたケーナと一緒に岩に叩き付けられる。


「あがっ!」


「い……たぁ……っ!」


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!」


リリィと小春も応戦しようと動くが、詠唱が間に合わない。リリィの砲は砲身が加熱状態になっておりすぐには発射が出来なかった。身動きの出来ないセーラとケーナにオークが棍棒を振り上げる。


(このままじゃ、あいつらが死ぬ……死ヌ!?)


アルベルトの中で何かの引き金が引かれる。それは彼に許容出来る範囲を大きく超えていた。


「やめろクソ豚野郎!俺の仲間に手を出すんじゃねぇぇぇーーーーーーーっ!!!」


透き通るようにも思える静謐な咆哮が響き、アルベルトの右手に風が渦巻く。衝動に突き動かされるままに拳を突き出すと翠色の風が螺旋を描きながらオークに襲い掛かり、そのドデッ腹に突き刺さる。まるで抉るように刺し込まれた風はオークの肉や臓物、骨を砕き撒き散らしながらその巨体をズタズタに斬り刻んでいった。


「あ、ありがとう……助かったわ。でも今の魔法は」


「分からない……俺は今何で風の魔法が使えたんだ?」


小春に治療を受けて立ち上がったセーラも首を傾げながらアルベルトを見た。








その後手分けして湖周辺を探索し、ついに目当てのキノコを見つけた。


「これか、またでっかいな」


「まあ入りますかね」


色々と想像の余地がある台詞をぼやいたリリィの後頭部をセーラと2人で殴り、アルベルトはとりあえず引き抜こうと手をかけた。


「よ……あれ?このっ!ぬおりゃあああああああああああああ!!!!」


びくともしない。左手しか使えてないとはいえ、一応大剣を振り回せるだけの腕力はある筈なのにとアルベルトは柄にもなく焦った。


「ケーナも手伝う!」


ケーナも一緒になって引き抜こうと踏ん張るが、結局一寸たりとも動かせないまま2人はへたり込んだ。


「あー、待てよ……」


出掛ける前に織江とミスティが調べておいてくれたキノコの資料を懐から取り出す。


「昔はこのキノコを採取するのに乙女の生き血を捧げ……これってどういう事だ?」


「血液に含まれる何かしらの成分がこのキノコに作用するか、はたまた何かしらの魔法的な儀式なのかは分からないけど何らかの関係がある事は確かね」


「よし」


アルベルトはまだ比較的原型を留めているオークの死体を引き摺ってくると、キノコの上でその死体に剣を振り下ろした。


「きゃっ!」


死体から噴き出した血に思わず小春達が後退りする。アルベルトは「済まん」と謝ってから血を浴びたキノコに手をかけると、今度は思いのほかあっさりと抜けてしまった。


「前者でよかったぜ。これで課題はクリアか」


全員分のキノコを採取し、アルベルト達は意気揚々と学園へ戻った。









学園に戻り、各自入浴と夕食を済ませて食後の団欒をしている時の事。アルベルトは全員が入り終わった後で入る事になっている(同じ年頃の少女が入った残り湯というのも想像してしまうと色々と困るが)ので、髪を拭きながら出て来た時には全員が集まっていた。


「あれ、トリアにリリィにケーナって珍しい組み合わせだな」


セーラの班でサポート役になっているトリアがこちらを振り返った。普段ならセーラとシャロンの2人と話している事が多いので、その辺が気になったのだ。


「いえ、こうして3人で話していると全員が残念な幼少期を過ごしていると分かりましたので」


「残念?トリアもセーラの友達って事は貴族じゃ」


「まさか。私はセーラ様の家に拾われただけの捨て子です。父親が誰かも分からない下賎の出ですよ」


「ケーナは寂しくなかったよ?孤児院にも子供達は一杯いたし、修道院にもたくさん人が来てたから」


その中でケーナに声をかけてきた人間が何人いたのかと想像し、アルベルトは泣きたくなって目を背けた。


「ですので今後はワケあり残念美人3姉妹と御呼び下さい」


「あら、私も美人なんですか?残念な自覚はありますが」


紅茶を飲みながらリリィが言うが、アルベルトは概ね同意していた。


「つかその呼び名は長いって。普通に美人3姉妹でいいだろ」


「それだとワケありと残念がありませんが」


「いらねえいらねえ。それ言い出したら俺なんか大量虐殺犯だぞ」


両手を挙げながら言うと、トリアは納得したように頷いた。


「そういえば、今日の課題でセーラ様を救って頂いたそうですね。本当にありがとうございます」


「よせやい。こう言ったら失礼かもだが、俺はセーラだから助けに行った訳じゃないぞ。例えあの場にいたのがケーナだけだろうがトリアだろうが、最悪そこのド変態だろうが助けに行ったさ」


「それはそれは。ですが貴方がセーラ様を救って下さった事に私が感謝するのは自由ですので」


そんな話をしていると、小春とミスティが近づいてきた。


「あ、アル丁度よかった」


「どうしたミスティ?」


近づいてきたミスティの目は星か宝石のような煌きに満ちていた。これは絶対に何かを企んでいるとアルベルトは一歩後ろに下がった。


「お願い!その剣見せて!!」


「はぁ?そんな事でいいなら……ほれ」


大剣を引き抜き、手近なテーブルに置く。ミスティは興味深げに刀身をそっと指で撫でた。


「ここ、大分磨耗してるけど文字が彫ってあるね。えーっと何々……『我使命を受けし時、その牙と対なる愛を持って天地の民を治む』。見た感じ魔力の篭った剣みたいだし、何処で手に入れたの?」


「親父の形見だよ。確か銘は《エクスピアティオ》だったかな」


「なるほどね……やっぱり思った通り、この剣には封印が施されてる」


ミスティは楽しそうに《エクスピアティオ》を調べながら言った。


「学園長がアルの腕輪につけたものとは違って、完全にエンシェントタイプ(超古代の呪文で、現在では廃れて詠唱どころか理解も困難な魔法を指す)の封印だから調べるにもかなり時間かかりそうだけど……うん、この剣の封印を理解し応用出来ればアルの腕輪も完成する!」


嬉しそうに叫び、ミスティは「ありがと!」と告げて自室へと駆け上がって行った。









翌朝の事。学校全体が休日となっていたアルベルトは1人湖まで来ていた。


「……」


封印の腕輪を外すと、力が膨れ上がり7体のドラゴンが湖の上に浮かんだ。


《二度我等を見ておきながら、故意に我等を解き放つ阿呆がおるとはな。本当に死にたいか?》


「逆だ。俺は生きる為に力が欲しい」


アルベルトは7体の中で翠のドラゴンを指した。


「昨日お前が俺の中で強く出た時、本来使えない筈の風の魔法が使えた。あれはお前の仕業でいいのか?」


《何?リンドヴルム、どういう事だ》


バハムートの問いに翠のドラゴンは小さく頭を下げた。


《申し訳ありませんバハムート。つい気紛れに力を貸してしまいまして》


《リンドヴルムは俺達の中でも一番穏やかで人が良いからな。ま、仕方ないっちゃ仕方ないわな》


真紅のドラゴンが笑い、バハムートは諦めたように溜息をついた。


《お陰で小僧は随分と調子付いたようだがな》


「俺は仲間を守りたい。その為には更なる力をつけなくちゃならないんだ。頼む!俺にその力を貸してくれ!!」


バハムートはしばし値踏みするようにアルベルトを睨み付けた。


《自惚れるな小僧!》


振り下ろされた鍵爪を慌ててかわす。アルベルトがさっきまで立っていた場所は地割れのような爪痕が残されていた。


《小僧……人間にしてはそれなりにやるようだが、我等からすれば塵芥も同じ。なるほど我等の力が欲しかろうて。だが我等七帝竜は貴様の右腕に間借りしているだけで貴様の下僕ではない!この力が欲しいのであれば、我等が納得するだけの器を見せ付けてみせよ!!》


(なるほどな……勝つ必要はない、唯あいつらを納得させればいいって事か……)


アルベルトは軽く頷いて《エクスピアティオ》を引き抜いた。刀身に刻まれた文字が太陽を受けて燦然と輝く。


「上等だ!お前等7体、纏めて舎弟にしてやるぜ!!」


《よかろう、ならばかかって来い!》


その声を皮切りに、7体のドラゴンが一斉に動いた。









その膨大な魔力のうねりを小春達が感じ取れない筈もない。たまの休日とのんびり日向ぼっこを楽しんでいた小春は、突如全身に叩き付けられるような魔力を感じ取り慌てて飛び上がった。


(何?この感じは確か……まさか!?)


錫杖を部屋まで取りに戻り、大急ぎで寮を飛び出した。


「コハル!こっちよ!!」


何処から調達したのか、セーラは馬に跨り飛び出す寸前だ。彼女は小春を引っ張り上げ、自分の後ろに乗せて愛馬の脇腹を軽く蹴った。


「行くわよエクレール!」


「セーラさんエクレールってこの馬の名前ですか!?」


「い、稲妻って意味よ!お菓子じゃないわ!……好きだけど」


耳まで自分の髪と同じくらい赤くなりながらセーラは叫び、気合を入れ直すように手綱を振るって馬を加速させた。









湖に小春達が到着した時には、アルベルトは何故か草原に大の字になって倒れており、周囲は何をどうすればこうなるのかと言いたくなるくらい無残な破壊の跡が残されていた。


「アル!アルベルト!!」


セーラはエクレールから飛び降りると同時に駆け寄り、アルベルトを膝に抱きながら頬を叩く。


「ん……あ、セーラ」


「あ、セーラじゃないわよこの馬鹿!何をやらかしたの!?」


アルベルトは背後で錫杖を持ったまま泣きそうな顔をしている小春にも目をやり、にやりと笑みを浮かべて右手を掲げた。


「アル?」


「2体、取り込んでやった……!」








この言葉を最後にアルベルトは再び気絶してしまったので、その意味を小春とセーラが知るのは夕食時であったという。












            続く

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