第四十九楽章 赤き虎
どうもすみません。インフルエンザで木曜日から寝込んでました。まだ完全ではないですが、執筆可能な程度には回復しましたので。
ご心配おかけして申し訳有りませんでした。
《エクスカリバー》のエルフ居住区に流れる川と湖。アルベルトはその畔に立ち、全快して元気に泳ぎ回るマーリスを眺めていた。
「もう良いみたいだな」
「ええ。貴方達が貸してくれた《賢者の石》のお陰ね」
鮮やかなジャンプを見せ、マーリスはアルベルトに微笑んだ。
「でもあんな怖い事は二度とゴメンだぞ?見てるこっちの寿命が何年あっても足りやしない」
「そうね。前向きに検討しておくわ」
マーリスは笑って言い、再び水の中へと身を躍らせた。
「それって場合によってはまたやるって事か!?おいマーリス……ああ行っちまった」
ちゃんと話が通じているのか、微妙な空気にアルベルトが頭を抱えた時だった。
「アル!」
「メロディア?どうしたんだそんなに慌てて」
「《東国》に潜ってた友達から連絡があったわ。《ウロボロス》と思しき軍勢が《東国》を強襲、市町村を次々と制圧し事実上《東国》は奴等の手に落ちたと」
意味が頭に染み通るのに若干の間が必要だった。
「ちょっと待て!じゃあ、そこにいた皆は……!」
「リザードマン達は洞窟の入り口を封鎖し、五感を惑わせる結界を駆使する事で自分達の領域を守る事には成功。でも人間のほうがどうなったかは分からないわ。無論、コハルとオリエの村も」
「くそ……っ!」
頭に過るのは自分からセーラを奪おうとしたあのチビの忌々しいサディスティックな笑い顔だ。あいつが何かやった、理屈ではなく直感でアルベルトはそう確信していた。
「すぐに主なメンバーを会議室に招集!速やかに対策会議を行う」
「心得ました」
小春は泣くだろうか。泣くに決まっている。誰よりも全てを愛し、全てに愛される彼女が己の故郷を災禍に包まれたと聞いて平然としていられる筈がない。
(《ウロボロス》、この代償は高くつくぞ……!)
同じ頃。《東国》の小春が暮らす村に程近い山中にある洞窟。そこに美里は夫と平次、タウラスと共に隠れていた。
「う……があ……」
「無理はしないで。あの一撃をまともに受けて生きていられるだけでも相当な強運なんだから」
何とか起き上がろうとするタウラスを押し留め、美里はあの時の事を思い出していた。
「おっと」
血飛沫が舞う。それは背後から味方に襲い掛かられたヤズミではなく、逸早くそれを察した彼の刀に貫かれたタウラスの物だった。
「ぐあああああああ!?」
「馬鹿だねえ。僕がおのれのむき出しな殺気に気付かないとでも思った訳?」
何が起こったのか美里には理解出来なかった。仲間割れだとしても、タウラスから迸る濃厚な殺意(そう、殺気を通り越し最早殺意と呼べる代物だった)が昨日今日で拵えられた物でないのは明白である。
「お前は……ヤズミ、お前を生かしておくと俺達の悲願すらも危うくなる……!お前は、生きていてはいけない化物だ!!」
「あっそ。じゃあおのれが死んでろ」
首を狙って振り下ろされた刀に、美里は反射的に飛び出していた。
「旋龍拳!!」
風を纏う拳による一撃。様々な属性の魔法を拳に込め、殴りつける事で炸裂させる美里だけの魔法だ。
「何するのさ。折角僕が数を減らしてやろうって言うのに」
「頼んだ覚えはないわ。それに……貴方を生かしておくと禄でもない事になるというのは、私も同意よ!」
ヤズミは軽く舌打ちし、戦車隊に指示して撤退を始めた。
「……流石に、ほっておく訳には行かないわよね?」
意識を失ったタウラスを見やり、美里は小さく嘆息した。
あれから、避難していた重悟や平次に協力して貰いながら近くの洞窟まで運び込んだのだ。とりあえず野生の薬草を集めて応急処置は済ませたものの、余談を許さない状態であった。
「今戻ったぞ」
「あなた、どうだった?」
平次と共に村の跡地を偵察に戻っていた重悟が戻って来た。
「残っている家屋はない。田畑も戦車が乗り入れたらしく滅茶苦茶に焼かれていたよ」
「……そう」
頭に過るのは、遠く離れた異国の地で戦う愛娘の事だった。
「小春が帰って来たら、どれ程嘆くでしょうね……」
「お前に似て優しい子だ。私達が無事だとしても他の者達の訃報を知って涙するだろうな」
美里は答える事が出来ず、かつて七竜戦争を戦った時と比べても余りに衰えてしまった自分の拳を見つめた。
「平次、貴方に1つ仕事を頼みたいのだけど」
「グゥ?」
偵察のついでに捕まえて来たらしい野ウサギの肉に齧り付いていた平次が、何事かと顔を上げた。
「この手紙を小春に届けてあげて。恐らくあの子の事だから、この一件が分かったらすぐに飛んで来るでしょうし」
此処で言う「あの子」とは小春ではなくアルベルトの事である。
「大役よ。お願いね」
「ワウッ!」
口の中に残っていたウサギの骨を吐き出し、平次は威勢よく吼える。首に美里からの手紙を入れた袋を括り付け、猛然と走り出した。
一方、ヤズミ達は小春の村跡地で地図を囲んでいた。
「それで?貴様がわざわざ村人を殺さずに捕らえたのは、仏心や情等では断じてあるまい?」
サジタリウスは殺気を隠そうともせずに凄む。当のヤズミは涼しい顔で地図にナッツを置いた。
「そりゃ勿論。《逆十字聖騎士団》は間違いなく此処へ来る、しかも村人の安全を確かめないとならないから確実に白兵戦になる筈だ」
小春の村は周囲を小高い岩山に囲まれ、丁度擂鉢上になっているのだ。ヤズミはその周囲に金属片を置いて行く。
「村には捕らえた村人に《聖オスケイア教団》の法衣を着せ、薬品で言葉と自由を奪って配置する。向こうは正体も知らずに自分達が守ろうとした相手を皆殺しにしちゃうだろう。後は周囲にこうやって配置しておいた魔導戦車隊による一斉砲撃で全員さようなら。これぞ愉悦!」
「死ねゴミが」
吐き捨てながらも、サジタリウスは指令に従うしかない己を呪った。タウラスについては乱心の挙句に指揮官たるヤズミに斬りかかり、その場で処断されたとされている。しかし彼には長い事同じ釜の飯を食べてきた仲間がそう容易く殺されるとも思えなかった。
「あ、でもやっぱり自分で身内殺した絶望の顔って間近で見たいな。じゃあちょっと戦車の砲撃を遅らせて近くで鑑賞タイムを取って……」
「……」
ヤズミが何をしたいのかが読めない。自分の愉悦の為に動いているのは確かだが、その嗜好がサジタリウスには理解出来なかった。
《エクスカリバー》の会議室。アルベルト達は進路を《東国》に取りながらも会議を続けていた。
「指揮を執っているのが誰かによるが、小春の村で直接戦うのは不利かもしれないな」
キルトが地図(小春が描いた見取り図)を見ながら眉を寄せた。
「何でだ?」
「見ろ。村の周囲は切り立った崖に囲まれている。攻めるに難く、守るには理想的な地形だ」
アルベルトの脳裏にあの忌々しい卑劣漢の顔が過った。
「奴ならきっとこの周辺に火力を配置し、俺達がうかうかと入ってきたところに集中砲火……そんなところか」
「でしょうね」
セーラが同意し、小春に目を向けた。
「コハル、この村に貴女やオリエしか知らない抜け道みたいなのはあるかしら?」
「1つあるわ。私が昔、悪戯した織江を匿う為に見つけた道が」
その言葉でアルベルト達の表情も明るくなる。
「教えてくれ小春。今度は……俺達が奴を翻弄する番だ」
士気は高い。皆の心が1つになったその時だった。
「アル!」
「どうしたメロディア?」
「先行偵察に出ていた子が、銀の狼を見つけたと。話を聞いてみたら貴方とコハルに渡す物があるって」
「銀の狼で俺と小春に……っ!平次か!」
コルトンが頷いたのを確認し、アルベルトと小春は部屋を飛び出した。
「平次!」
「平次大丈夫!?」
サキュバス達に運び込まれた平次の毛並は見る影もなく血に汚れ、彼が幾多の戦いを乗り越えて来た事を示していた。
「アル力を貸して!」
「任せろ、幾らでもな!」
小春の術で傷は塞がり、平次は前足を器用に使って首の包みを落とした。
「これ、お母さんから?」
「グウ……」
「ありがとう平次。後は任せて、ゆっくり休んでね」
眠るように目を閉じた平次をそっと撫で、小春は手紙を開いた。
「これは?」
「村の地図と、配置されている戦車の数と位置よ……って戦車!?」
鋼鉄で武装し、馬に引かせず自力で走行する戦闘車両というのはアルベルト達からすると前代未聞である。
「ナオに訊いて見よう。こういうのに弱点はあるのかどうか」
そう思った矢先、《東国》の方角から爆発音が響いた。
「何だ!?」
「あれ見て!」
遥か彼方であるが、まるで『巨大な爆発物でも炸裂したかのような爆炎』があがっていた。
「どうやらナオからご教授願ってる場合じゃなさそうだな……!」
「アル、私も」
アルベルトは一瞬躊躇った。目の前の事件に、関係者の身内を関わらせるなというのは大前提の不文律である。それにセーラを連れて行って危うく死なせかけたのだ。
「悪いが小春は残っていてくれ。多分ヤズミは小春を狙って動くだろうし、何をしてくるか分からない以上はな……」
「それは分かってるわ。でもお願い、確かめたいの!せめてお父さんとお母さんが今も無事なのかどうかだけでも……!」
アルベルトが迷っていると、背後で蹄の音が響く。既に《戦乙女》の鎧を身につけたセーラがエクレールに跨っていたのだ。
「何をしているのアル!?今は1人でも戦力が惜しいわ。貴方の気持ちは察して余りあるけど、この状況だとコハルも連れて行く他ないわよ?」
「だがなセーラ!相手があのゴミクズ野郎な時点で、小春を守りながら戦う余裕が俺達にあるのか!?」
「誰が一方的に守れって言ったの?私達は仲間、それを守られるだけだと言うのはコハル自身に対する侮辱よ」
アルベルトは言葉に詰まる。その彼の袖を小春はそっと摘んだ。
「……全員無理だけはするな」
結局それしか言えなかった。
アルベルト達が一足早くリンドヴルムに乗って急行している頃。ヤズミは予想外の事態に慌てていた。
「おいどうするんだ!?魔導戦車隊の内既に半数が破壊されているぞ!」
「どうした指揮官さんよ。とっとと指示くれないと戦えないぜ?」
「お、おのれらこういう時だけ指揮官扱いしやがって……!」
爆発と共に燃え上がる炎。しかしそれは森の木々には一切被害を出さず、戦車とそれに乗っていた《ウロボロス》の構成員だけを焼き払っていく。そしてその中を駆け抜けながら赤い鎧を纏い2本の長槍を振るう若き武者の姿があった。
「我が祖国を蹂躙し、あまつさえ某の故郷までもを踏み躙る悪鬼外道共!断じて許してはおかぬ!!」
「何あれ?あの暑苦しいのはさ」
ヤズミは何時も通りの小馬鹿にした態度で相手をしようとしたが、その武者の炎を纏った一撃が戦車の装甲を薄紙のように突き破るのを見て流石に顔色を変えた。
「天!地!無双!!貴様等にも武士の魂が宿るなら、この真田聖四郎の前に立て!!」
「わあ、本当に暑苦しいでやんの。ああいうの僕はパス。おのれらだけで対処してよ」
「あ、てめ……」
さっさと転送魔法で姿を消すヤズミに嘆息し、サジタリウスは「逆にやり易くなった」とボウガンを弄った。
「威勢が良いな若造!俺の名は射手座のサジタリウス。どつき合いは苦手だが、これでもそこらの雑兵よりは場数を踏んでるぜ?」
「なるほど、貴殿は中々に腕が立つと見た!真田聖四郎、いざ参る!!」
炎を纏い豪槍を振るう聖四郎とサジタリウス、2人の戦士が雄叫びと共に激突した。
リンドヴルムが着陸した時、聖四郎とサジタリウスはまだ戦っていた。
「……あれ?もしかしてもう全部終わってる感じか?」
微妙に脱力感を覚えながらも、アルベルトは《エクスピアティオ》を抜きながら滑り降りた。
「む、新手……いや違う!」
「ごはあっ!?」
炎を纏った蹴りをサジタリウスの鳩尾に叩き込んで吹き飛ばし、聖四郎は小春の前に走りよった。
「お久しぶりでござる!小春姫!!」
「姫え!?」
「え、あの、もしかして聖四郎君?」
突然の事に驚くアルベルトを尻目に、小春は知り合いらしい相手に声をかけた。
「如何にも!覚えていて下さり、この真田聖四郎感動の極みにござる!!」
「な、何だかテンションの高い人ね……」
流石に引き気味のセーラにアルベルトも内心で同意する。
「なあ小春……この暑苦しいの、一体誰だ?」
奇しくもヤズミと同じ感想を抱いた事は知らないほうが良いだろう。恐らくアルベルトにとって一生のトラウマとなる。
「あ、紹介するわね。お向かいに住んでた私の幼馴染で、真田聖四郎君。聖四郎君、こっちはアルベルト・クラウゼン、《ムーンライト学園》で出来た私の」
「おお、小春姫の御学友にござるか!お初にお目にかかる、真田聖四郎と申す!」
一連の会話でどういう性格かは瞬時に読み切れた。
「えっとね、聖四郎君。アルは私の友達というか……」
「はっきり言っちゃえば?心底惚れた男だって」
様子がおかしい事に気付いたのか、織江が転送魔法で追いついてきた。
「は……?」
突然の事に聖四郎の目が点になるが、織江は構わずに続けた。
「ああ、聖四郎は元々小春にぞっこんなのは見ての通り。でも五年程前に騎獣祭で小春のお父さんにボッコボコにされてから『鍛え直すでござる!』と武者修行に出て音沙汰なしだった訳。でね聖四郎、あんたが武者修行してる間に小春は学園で好きな男が出来たの。それがこいつ」
「なん……で……ござる……と……?」
その時の聖四郎の姿を一言で表すなら、大理石の彫刻か……はたまた吸いに吸われて色のなくなったアイスキャンディーだろうか。
聖四郎が再び話が出来るまでに落ち着くのには実に30分程かかった。
「なるほど……仔細は承知したでござる。悔しくはあるが、五年という歳月をかけて尚小春姫を振り向かせる事の出来なかった某の未熟。深く猛省し己の糧とする所存でござる」
「意外と潔いのね」
感心したようにセーラが呟いた。
「然り。かくなる上はアルベルト殿!」
「俺?」
その瞬間聖四郎の背後から炎のような闘気が沸き起こった。
「某を弟子にして下され!」
「はあああああああああああああああああ!?」
アルベルトの素っ頓狂な声が村跡に響き渡った。
「お願い致す!小春姫が斯様な程心奪われる器、さぞ名のある武人とお見受けした次第にて……ぎゃああああああああああああ!?」
突如、聖四郎は飛び上がる。何が起こったのかと思うと、何時の間に追いついてきたのか平次がその尻に噛み付いていたのだ。
「平次、お前何やってんだ?」
「ワウッ!」
平次は不機嫌そうに吼え、「あっちを見ろ」とばかりに頭を振った。
「え、嘘……お父さん!お母さん!!」
小春が目に涙を浮かべて走り出し、両親の元へと飛び込んだ。
「よかった……お父さんとお母さんだけでも無事で……!」
「小春姫、全員とは行きませぬが」
平次の牙から何とか復帰した聖四郎が示した方角には、アルベルトも会った覚えのある顔ぶれがこちらへ向かってくるところだった。
「どうも村に陣取っていた小男は、村の者達を術で操り正体を隠したまま小春姫達にぶつけるつもりであった模様。斯様なる卑劣な振る舞い、断じて許してはおけませぬ!」
聖四郎はアルベルトの前に膝をつき、深く頭を下げた。
「アルベルト殿、どうか貴殿の率いる騎士団の末席に某も加えて頂きとうござる!槍を振る事しか脳のない粗忽者でありますが、何卒」
「構わないさ。共に戦おう、聖四郎」
「おお、かたじけのうござる!!」
アルベルトは聖四郎と固く握手を交わし、負傷している者や病気の者を治療するメンバーに指示を出してから一息入れた。
「アル君、私のほうからもお願いがあるのだけど」
美里が歩み寄り、重悟が肩を貸してきた男を示した。
「タウラス!?そういえばさっき聖四郎が戦ってたのはサジタリウスだったよな」
すっかり忘れていた事に思い至り、アルベルトは慌てて指示を飛ばす。その指示が届くよりも早く小春が治療に走っていたが。
「彼は私を助ける為にヤズミという少年と戦ってくれたの。貴方の仲間にどうかしら?」
「俺達からも頼む。ヤズミの卑劣なやり口にも、奴を平然と使い続ける《ウロボロス》にも愛想が尽きた。またお前等も裏切るかもしれないと疑う気持ちはあるだろうし、特攻役として使ってくれて構わない。仲間に入れてくれ!」
「特攻だなんてそんな事にはしないさ。小春が説得を試みたと聞いていたし、喜んで歓迎しよう」
タウラス、サジタリウスの2人とも握手を交わしてアルベルトは意を強くする。
「これより《東国》に巣食う《ウロボロス》の連中を全て蹴散らす!総員、速やかに準備にかかれ!!」
バタバタと仲間が動き始めるのを見送り、織江はふと悪戯っ子の笑みを浮かべて聖四郎を呼んだ。
「何でござるか?織江殿」
「いや何、あんたが戦ってくれたお陰で私達は楽出来た訳だし御褒美はいると思ってね。小春ー」
「何?どうかしたの織江……きゃっ!?」
呼ばれてやって来た小春の袴を、織江が後ろから持ち上げたのだ。とはいっても露になったのは日に焼けていない白い太股までだったが、聖四郎には効果覿面であった。
「ななななななななななな!?お、織江どのおおおおおおおお!は、破廉恥でござ……ぶふぉおおおおおおおおおおおお!!」
噴水のように鼻血を噴き上げて昏倒する聖四郎に、織江は思いっきり腹を抱えて笑い転げる。
「強くはなったけど全然変わってないわあんた!あ、小春ごめんね?どの位変わったか試したくなって……小春?」
「……の」
昔はちょっと膨れてみせるだけで済んでいたのだが、今の小春は羞恥に頬を染め目に涙を溜めていた。
「あ……ごめん、流石に今になると洒落になってなかった」
「織江の……!馬鹿ああああああああああああああああああああ!!」
錫杖による一撃が脳天に叩き込まれ、織江は頭にタンコブを作りながら目を回して昏倒した。
「何やってんだあいつら?セーラ、何か聞いてるか?」
「さあ?幼馴染らしいし、積もる話でもあるんじゃないかしら」
「その割には赤い噴水なんて珍しいもんだ」
「血の臭いも酷いし、ヤズミ……一体どれ程の血をこの村で流したというの?」
「こればかりは私怨も何も関係なしだ。俺達で絶対にあいつをぶちのめすぞ」
「そうね。やりましょうアル!」
知らぬが仏とはこの事なのかもしれない。
続く




