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魔女は竜と謳う  作者: Fe
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第二十一楽章 明日への導

ケーナが無事な事に安堵したその日の夜。アルベルトは寝付けなくて部屋を出た。


「あれ、アルどうしたの?また体が痛い?」


「ミスティか。いや、単純に眠れないだけだ」


そういえば以前は彼女に痛み止めを貰いに行ってとんでもない事になったと思い出し、アルベルトは小さく苦笑した。


「んー、この間シャロンに分けて貰った安眠ハーブがあるからお茶にしてあげようか?」


「そりゃ助かる」


2人で連れ立って一階の談話室に下りる。流石にこの時間帯にお互いの部屋を行き来する気にはなれなかった。


「お茶請けに何かあるかなー」


「太るぞ」


端的に結果を言い表すと、ミスティはぷーっと膨れた。


「酷いなぁ。まああたしの場合、大体胸とお尻が育っちゃうから余りお腹とかには肉つかないんだけどさ」


「さいですか」


寝巻きの所為か、昼間の服よりも豪快に揺れる胸から目を逸らしつつアルベルトは椅子に座った。


「ほい出来た」


「意外と器用だよな。練成以外はアレなイメージがあったんだが」


殆ど毎日のように爆発させているからだが、ミスティは気にした様子もなくころころと笑った。


「はいどうぞ」


「どうも」


温められたカップに並々と注がれたハーブティーを少し冷ましてから喉に流し込む。茶の良し悪しなど濃いか薄いかくらいしか分からないアルベルトだが、そんな彼でもこの茶は美味いと感じるものだった。


「上手だな。美味いよこの茶」


「よかった。錬金術は料理と一緒だーなんて言う人もいるけど、あたしに言わせると料理のほうが色々と大変な気がするしね」


かくいうアルベルトも小春やシャロンが作るような凝った料理など作れはしない。というより、果物も野菜も大抵のものがその辺に生えていたりする《西国》では余り料理という文化が発達していないのだ。お陰で他国では「神は《西国》に最高の食材を用意してくれたが、料理人だけは悪魔が連れて来た」だの「《西国》には不味い料理など存在しない。何故なら料理と呼べる物が何もないからだ」だのと陰口を叩かれている始末である。


「そういえば、アルはまた新しくドラゴンの力を使えるようになったんだよね?」


「なったっつーか、成り行きっつーか……」


ヒューベリオンがぶち抜いた丘陵の穴を思い出し、アルベルトは軽く身震いした。


「怖い?」


「まあ、な。今までのは何だかんだで自分が倒す……いや、殺す相手を選ぶ事が出来た。でもこいつの力はそんな器用な真似なんて出来やしない」


1人を殺す為に何百人を巻き添えにするのか、アルベルトには皆目見当もつかない。それだけ破壊竜の見せた力は彼に恐怖を与えていた。


「セーラ達には話さなかったの?」


「言えるかよ。揃って心配性だしさ、大騒ぎされるのがオチだぜ?」


昼間、暗殺者の女を引き付けて返り討ちにする為に一芝居打ったのだがその件でもかなり叱られたクチなのだ。この上口実を与えてたまるかと、十代の少年なりの意地を持っていた。


「……あたしの義兄になる人の口癖だけどね」


茶を一口飲み、ミスティは微笑んだ。


「兵器が人を殺すんじゃない、人が人を殺すんだ。その気になれば人は素手でも人を殺せるってね」


「使い方一つってか?」


ミスティは頷いた。


「あたしね、今故郷の《北国》で船を作ってるの」


「船?」


「そ。それも海を往く船じゃなくて、空を飛ぶ船」


ミスティは嬉しそうに遠くを見る。まだ完成していない夢を追いかけているのだろうか。


「その船が完成すれば、海を往くよりももっと速く沢山の人を運べるでしょ?そしたら全部の国が仲良くなって、もっと豊かになれるんじゃないかって」


「そりゃ確かに凄いが、自衛能力はあるのか?」


今現在、空の魔物もかなり強い。アルベルト達の場合は、リンドヴルムが速過ぎるお陰でどんな魔物も攻撃するどころか追い縋る事すら出来なかったので問題はなかったが(というより竜と分かっている相手に喧嘩を売る命知らず等魔物にはいないらしい)。


「うん、あるよ。それもあたしが作ったんだ」


竜にも負けない最強の魔導砲。そう告げられ、アルベルトの中でサラマンダーが軽く不貞腐れたのが分かる。それとは別に沸き起こるミスティへの暗い感情はヒューベリオンの物かもしれない。


(いや、俺自身……?)


怒り・殺意・欲望と色々ごちゃ混ぜになった感情だ。アルベルトはその中でも最も強かった、「ミスティの笑顔を泣き顔で歪ませてやりたい」という感情を自分の足を踏みつける事で捻じ伏せた。


「アル?」


「いや、何でもない。そうだな……こいつをどう扱うかは俺次第だ」


《アポカリプス》の砲身を一部だけ呼び出し、アルベルトはそっと撫でた。


「吹っ切れた?」


「ああ、色々とな」


もうミスティに対する欲望はない。いや、なくはないが捻じ伏せた。そして迷いも消え失せたのだ。


「お休み、アル」


「ああ。ミスティもお休み」


ハーブティーを淹れるのに使ったポットとカップを手早く洗い、アルベルトは自室へと戻りベッドに倒れこもうとして……固まった。


「またか……」


何時の間にかケーナがベッドに潜り込んでいたのだ。鍵をかけ忘れていた自分が悪いのだが、いい加減これは止めさせないと拙いだろうか。世間の男は皆腹の底に飢えた狼を飼っておりケーナのような少女は真っ先に食われてしまうと教えてやったほうがいいのではと、アルベルトはかなり真剣に悩んでいた。自分だって狼にならない保障は何処にもないのだ。現にさっきだってミスティ相手に妙な衝動が沸き起こったのだから(健全な青少年としてはある程度普通の感覚だが)。


「……ま、明日にするか」


安らかな寝顔を見ていると、起こそうという選択肢を取る事が馬鹿馬鹿しくなる。アルベルトは苦笑気味に肩を竦め、予備の毛布を取り出して床に寝転んだ。







翌朝。寝惚け眼のケーナを彼女の部屋(リリィと相部屋である)まで戻し、苦笑する小春やセーラにこちらも苦笑で返して着替えに戻る。朝食はその後だった。


「あだ……やっぱ床で寝ると痛いな」


「絨毯はあっても本来寝具に使う物じゃないしね」


朝食のコンソメスープに千切ったパンを入れて味を染み込ませてから食べる。最近編み出したアルベルトお気に入りの食べ方であった。セーラは彼のぼやきに応じつつ、自分はイチゴのジャムを選んでパンに塗った。


「いっそケーナと寝ちゃえばよかったのに」


「出来るかそんな事」


即答してアルベルトは摘むには小さいパンの欠片が浮いたスープを一息で飲み干し、鍋からお代わりを注いで席に座り直した。


「何もせずに寝ていられる自信がないのかしら」


「セーラ、お前は俺をどうしたいんだ?いや寧ろどうして欲しいんだ?」


言われてセーラはふと悩む。どうせ夜這いするなら自分に来いと思わなくもないが、彼女は大公の家に生まれた身で婚前交渉など持っての外な立場である。ケーナの発案した「アルを好きな人皆で一緒にいる」という提案も、既に小春やケーナなど得難い親友を得た今では反対する理由が何処にもない。


「そうね。アルには今まで通り、私達と仲良くして欲しいわ」


「そりゃどーも」


考えるのが面倒になったのか、アルベルトは新しく取ったパンにバターを挟みながら若干投遣り気味に答える。といっても何事に対しても真剣な男だという事は理解しているので、セーラとしても悪い気はしない。


「セーラはいいのか?俺だって今の自分が最低だって事くらい理解しているんだ」


少なくともセーラ、小春、ケーナの3人(夏休みの旅先で出会った女の子を含めればもっといるだろう)に好意を告げられていながら、彼女達が寛容なのを良い事に生殺し状態を味合わせているのだ。確かに傍から見れば不誠実極まりない男だと言われても仕方がないとセーラも納得した。


「確かにそうかもしれない。でもねアル、私は今の微温湯のような関係がそれ程嫌いじゃないの」


「……」


無言で食後の紅茶を啜りながらアルベルトは複雑そうな目でセーラを見た。


「シャロンもトリアも、勿論大好きな友達よ?でも家が用意した友達でもある」


ちらりとアルベルトが視線を動かすと、シャロンとトリアは少し苦笑気味ではあったが本心で笑っているので気にしない事にした。


「コハルもケーナもミスティもリリィも皆私が此処に来て、私の意思で仲良くなった友達だもの。そしてアルがいて、大体の子は大なり小なり貴方を好いているわ」


「そこが全くもって分からんのだけどな。俺ってそんなに価値のある男か?」


訳が分からんと苦虫を噛み潰すアルベルトにセーラは優しく笑った。


「そうね……例えばだけど、このスプーンにアルなら幾ら値をつける?」


「は?いきなり何言い出すんだよ……まあ、2Stってところか」


「じゃあ私がこれを5万St払ってでも買いたいと言ったら」


アルベルトは紅茶を噴き出した。それでも咄嗟に別の方向を向いたのでセーラにかかる事はなかった。


「物の価値なんてそれだけ主観的なものよ。人にとってはゴミ同然でも別の人からしたら幾ら払ってでも買いたい物かもしれない。それと同じで、アルを好きになった理由なんてコハル達はそれぞれ違うでしょうし、それを横から第三者にゴチャゴチャ言われる筋合いなんてないわ。例えそいつらがどんなにご大層な大儀を掲げてようがね」


「言われたのか」


「私じゃなくて知り合いがね。ちょっと難儀な恋をしちゃって、それを横からしゃしゃり出てきた別の男達に気持ちそのものを全否定されちゃったのよ」


セーラは「気にする事じゃないわ」と付け加えて肩を竦めた。


「そこは別にいいの。いや、良くはないんだけど私達の流れには関係がないから気にしないで。とにかく、私を初めコハル達がアルを好きな気持ちに嘘はないし誰にも否定させないわ。例えそれがアル自身であっても」


「よく分かった」


要するに好かれている事は好かれている事としてとっとと受け入れろという事らしい。アルベルトとしても戸惑いはあれど、好意を向けられる事そのものは素直に嬉しいのでそこに異論はなかった。


「でもまあ、後悔するなよ?根無し草を通り越して渡り鳥よりも気紛れな奴だからさ」


「私をナメないで欲しいわね。貴方が何処かへ飛び立つのなら、その足に掴まってでも追いかけるわよ」


思わずアルベルトは噴き出した。紅茶のカップを置き、軽く伸びをしながら周囲を見渡すと小春達もこちらを見て笑っていた。









それから数日。アルベルト達はそれぞれ遺跡に潜り、女神像との戦いを経て《女神の雫》を無事入手していた。流石に三度目でセーラが遺跡を浄化した後とくれば特筆する事も特にはなく、これといったトラブルも発生せずに拍子抜けするくらいあっさりと終わった。


「というより、お前達が一度目と二度目で経験した事態が余りにも濃過ぎるのが原因だな」


呆れ半分感心半分といった様子で学園長が言った。


「さて、今回お前達には最終練成を行ってもらう」


「最終練成、ですか」


「そうだ。今までお前達に集めて貰った《月の欠片》・《メイデンマッシュ》・《ガルーダの紅羽》・《女神の雫》はある物質を練成する為の素材でな」


学園長は少し勿体をつけるように言葉を止め、練成室に集まったアルベルト達を見渡した。


「そのある物質がどういう物になるかは私にも分からん。金属になる事もあれば、線維になる事もあった」


「つまり、練成した人間の性質に応じた物質が作られると?」


「端的に言えばな」


セーラの補足に学園長はあっさり頷いた。正確にはグループメンバーの魔力の質を反映した物になるらしく、練成された物質を戦闘員の武器や防具に組み込む事で強化するのだという。


「じゃあ、いっちょ一番手行くでぇ!!」


セーラの班の練成要員であるオリーヴが気合を入れて練成を執り行う。完成したのは金色の鉱石だった。


「あら素敵じゃない。金色は私達にとって吉兆かもしれないわね」


「お、もしかして想定外に上手く行った系?」


「まあ質としては普通だがな」


喜ぶセーラとオリーヴだったが、学園長はあっさり言った。


「もっと早く言って欲しかったよ。ぬか喜びしたみたいでハズいわ……」


そんな彼女達に苦笑しつつ、リリィの班であるシャロンが練成を行う。


「えーい!」


「ほう、線維か。衣服に編み込んでもいいし、リリィなら《アバリス》の砲身を布で包むだけでも効果を得られそうだ」


綿毛を思わせる柔らかな線維の塊を手に取り、学園長は楽しそうに笑った。


「じゃあ次はボクの番だね!行っけー!」


ケーナの班であるアルトの練成で作られたのは紫色の宝石だった。


「なるほどな。宝石は魔力を込め易いからケーナとの相性はかなり良い筈だ」


しかし、と学園長は周囲を見渡した。


「鉱石、線維、宝石……それぞれの質は高いが物質としてはありきたり過ぎて少しつまらんな。もう少し変わった物が出来ても……」


その台詞にアルベルト達は顔を引き攣らせた。何故ならまだ練成していないのはアルベルトと小春の班、即ちミスティなのだから。


「ふんふんふふ~ん♪」


「あ、あのミスティ?普通でいいのよ?普通で」


楽しそうに鼻歌を歌いながら準備するミスティに小春が若干青褪めた顔で進言する。


「やっぱ普通じゃつまんないよね!」


「やっぱりいいいいいいいい!?」


「可愛い顔してとんでもない事言いやがった……!」


慌てふためく仲間達とは対照的にミスティは楽しそうに練成を始めた。


「そぉれっ!」


「皆伏せろーーーーーーーーー!!」


織江が叫ぶ間でもなく全員(学園長含む)が床に伏せる。爆音と衝撃波が練成室を満たし、しばしの間収まる事はなかった。








「げほっ……皆無事か!?」


パラパラと天井から破片が落ちてくるのを左腕で庇いつつ、アルベルトは周囲を見渡した。


「おいミスティ!やるならやるでもう少し穏便にだなぁ……!」


「どうしたのアル?」


アルベルトが固まったのを怪訝に思ったのか、小春も頭や肩に降り積もった埃を払いながら起き上がった。


「何、これ……」


ミスティが練成を行っていた机の上には燦然と輝く石が鎮座していた。


(まさかこいつは……!)


アルベルトの中でリヴァイアサンが驚愕の声をあげる。


「知っているのか?」


(ええ。《古竜》のみが製法を知り、加工を行える竜の金属……名を《ドラゴニウム》)


《古竜》と来ると、バハムートでなくては加工を行えない事になる。折角作ってもこれでは……とアルベルトが頭を抱えるとミスティは興味深げに《ドラゴニウム》を持ち上げた。


「えーっと……ここをこうして……ふんふん、大丈夫。大体分かった」


(……バハムートが聞いたら卒倒しますね。いや、寧ろ暴れるか?)


「勘弁してくれ」


ヒューベリオンに関しては割り切る覚悟はついたものの、流石にまだ御せる自信がない状態でバハムートまで追加されたくはない。アルベルトは戦々恐々としながら《ドラゴニウム》を飴細工よろしく弄っているミスティを眺めた。


「最後の最後でとんでもない物が完成したな。これで一年の課題は全て終了となるんだが……」


学園長は少し言いよどんだ。


「皆にも話しておいたほうがいいと思ってな。私の懺悔でもある」


そう前置きし、学園長は全員を教室へ戻るよう促した。









「そもそもの起こりが何十年前なのかは分からない。もしかしたらもっと前かもしれないが、ある組織が持ち上がった」


教壇の前に立ち、学園長は溜息混じりに話し始めた。


「今の魔女に対する扱いは二十年前の七竜戦争があってこそだが、それ以前からも一部の人間は魔女を尊び崇拝していた。逆に魔女を恐れ、憎む連中がそれを作ったんだ。名は《ウロボロス》と言って、奴等は水面下で人が潜在的に抱く『力を持つ者への恐怖』を利用して着々とシンパを増やして勢力を拡大している」


学園長は小さく「もう始末したが、私の不出来な兄もその1人でな」と付け加えた。


「学園長、兄がいらしたんですか」


「セーラ、気にするところはそこか?まあいいが……私より5つ上だったんだが、兄は私と違い魔力に恵まれなかった」


学園長は苦笑気味に自分の銀髪を弄ってみせる。


「とはいえ私の家は魔力を持って生まれる事を望んでいたから、寧ろ冷遇されたのは兄のほうでな。魔力自体は少ないが、上手く魔法をやりくりする才能はあったから余計に腐った挙句に家を出奔。実家は探す事もなく私を次期当主として鍛え上げたよ」


自嘲するような笑みを浮かべて学園長は続けた。


「結果兄は《ウロボロス》の一員となり、どうもこの夏休みからちょこちょこ暗躍していたらしい」


「まさかエルフの森でエントが暴走したのも、女神像に呪いをかけたのも……!」


アルベルトの声に学園長は静かに頷いた。


「ついでに言えばリザードマンの里で傭兵を雇ったのも兄だろうな」


アルベルトはようやく合点が行った。それもこれも全てはケーナの覚醒を促す為だったのだろう。いや、正確には彼女の中にいたシルヴァーナだろうか。


「学園長は《ウロボロス》の本拠が何処にあるかは御存知なのですか?」


セーラが無意識なのか、腰の剣を掴みながら言った。


「現状で最も魔女を輩出していないのが何処の国かを考えれば、自ずとな」


その言葉でアルベルト達は少し決まりが悪い気分で互いの顔を見やった。魔女を輩出した数の合計はそのまま国のパワーバランスにも繋がる。《西国》は《サザンの悲劇》で少々発言力が弱くなってはいるが、魔女の数で言えば二番手とかなり多い。《東国》は数こそ少ないがその質はトップクラス。《南国》は魔女の数で言えば三番手に位置するも、卓越した商業の力で立場を保っていた。《中央》はそのまま魔女の数で一番手で歴史も深い。では《北国》はどうか。元々が工業国で、魔法よりも寧ろ科学を信望する国だ。あの国では小春やセーラのような戦う魔女よりもミスティのような錬金術師のほうが喜ばれる。


「だがそれも国内の話であり、国際社会ではそうも行かないのが現状だ」


良くも悪くも世界が求めるのは魔女であり、錬金術師は御呼びでないと言われる事も少なくない。鬱屈したものを溜め込んだであろう《北国》の人間がどう出るかなど火を見るよりも明らかだった。


「ミスティやアルト、オリーヴも同じ学校で勉強してんだし錬金術師も魔女に含めて良いと思うんだがなぁ。俺は」


「本当、つくづく貴方のように考えられたらどんなに幸せかって思うわ」


理解出来ないと頭を捻るアルベルトの肩をそっとセーラが叩いた。












それから数日後。ミスティに実家から手紙が届いた。


「帰る?」


「うん。学園長にも許可は貰って、往復込みで一ヶ月くらいかな」


何でも姉が病に倒れたとかで『すぐ戻れ』という事らしい。


「まあ確かに身内が危篤とあっちゃ戻らない訳には行かんよな」


既に案じる身内もないアルベルトは肩を竦めた。


「あ、そうだアル!」


船に乗る寸前でミスティは振り返った。


「帰ったら《ドラゴニウム》を使って《エクスピアティオ》を強化改良するから!それにあの金属ならアルの腕輪にも使えそうだし」


「そうか、楽しみにしてる」


出港の汽笛と共に船は港を離れ、徐々に小さくなっていく。姿が見えなくなるまでミスティは甲板から身を乗り出して手を振り続けていた。


「行っちまったな」


「そうね」


同じ班で共に戦い続けた小春も少し寂しいのか、目元を軽く擦って頷いた。


「すぐに帰って来るわよ。案外一ヶ月ってあっという間だし」


「それもそうか。よし、俺達も俺達で鍛錬に励むとしますか!」


アルベルトは気合を入れて肩を回し、小春とハイタッチを交わして学校へと戻って行った。












しかし、その後三ヶ月が経ち季節が冬になってもミスティは戻って来なかった。












             続く

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