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mother questions  作者: みつ
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追憶のピース


母、和子は回想していた。あの日のことを。


「生まれや、育ち、ハンディキャップで人が幸せになれないなんて、おかしいだろう!?」



確かに、あの子は、そんなことを言って、家を出て行った。



和子は、お見合い結婚で旦那と知り合い、結婚した。当時としては、珍しいことでもなかった。


旦那となった義雄は、至って普通の男性だった。少しだけ、当時、人気のあった俳優に似ていた。

和子は年齢的にも、婚期だったし、これが縁だと思った。



子どもが、欲しかったが、なかなか授からなかった。結婚して、大分経ってから、やっと子どもを授かった。


男の子だった。


義雄が、名前を一生懸命に考えてくれて義一と命名された。


和子は、それが嬉しかった。その後、すぐに妊娠して年子の女の子が生まれた。


義雄は、「女性の名づけは、うまく頭が働かないから、お前が命名してくれ」と言い、和子は、菜奈と名づけた。


それから、時代に景気に翻弄されながら、義雄の仕事が、うまくいかない時もあったが、和子は必死に支えて、四人の家族は人並みに、生活してきた。


義一は、妹の菜奈の面倒を良くみてくれたし、菜奈は、小学生くらいになった時に、和子の手伝いを積極的に手伝ってくれるようになった。


どの家庭にも、色々とある中で、和子は日々を大事に過ごして、そして、幸せというものを感じていた。


少し歯車が狂いだしのは、義一が大学に入ってからだった。


義一は、実家を出て東京の大学に進学したのだが、帰省する度に雰囲気が変わっていくのだ。


それとは、逆に菜奈は、真っ直ぐに優しい女性になっていった。


和子は、旦那である義雄に、義一の変貌を相談するのだが、決まって義雄は、


「男には、そういう時期があるんだよ」


と楽観的な返事しか、しなかった。


女性の姉妹しか、いなかった和子には、男の子を小さい時から、見ていたのは自分の息子の義一しか、いなかった。


だから、義雄が、そう言う以上、それを鵜呑みにするしかなかった。


そんな心配を、よそに義一は、大学卒業後、自らの意志で地元に帰ってきて地元の企業に就職した。


その結果に、和子は、安心した。菜奈は実家から、専門学校に通学していて、また一家四人の生活が始まった。


和子は、義一の弁当を、たまに作ったりする時があった。


ふと、昔を思い出す。義一が小さいときのことを。


和子は、パートタイマーで働いていて、家事の全般をしていた。時が過ぎても、今も、一日の幸せを、その中で感じていた。


しかし、その頃から、やはり義一よりに、少しずつ歯車が狂い始める。仕事が、うまくないかない、人間関係に馴染めないと言った愚痴を、よく溢すようになったのだ。


和子は、それを聞いて、励ます。しかし、根本的な解決には至らなかった。


そして、あの日、義一は、自分の部屋で電話をしていて、誰かに大きな声で話していた。


その大きな声が、和子が聞く、義一の話す最後の声となった。




その電話の後に、義一は家を出て行方不明になったのだ。


後で分かったことだが、義一は、少し前に会社を自主退社していた。

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