凍えるような日
“もう着くわ”
メッセージを見たトモカズは、家の鍵を開け、ゲーム機の電源を切る。何が食べるものがないか確認したとき、家のドアが空く。
「よーっ」
「うい、悪いけど出せる食べ物ないわ」
「えー、じゃあどっか食い行かね」
そう言ったシュウは、ドアを開けっ放しにしたまま、外を指さしている。12月の冷気が、狭い家の中に一気に入り込む。
「さむ、いや早く閉めろ」
「さっさと支度しないと凍え死ぬぞー」
近所のラーメン屋に着いた二人は、券売機で券を買い、空いているテーブル席に着き、注文を済ませる。
「食う量少なくね? 餃子だけって」
「金が無いの」
「いや、俺の前で言う? ワイ無職やぞ」
「ははっ」
「あ、生放送見た? 不倫で炎上したやつ」
「あー、あれね」
いつもと変わりない話をし終わり、二人はラーメン屋を出た。その後、バイトのシフトが入ったとトモカズが言い、二人はそのまま解散する。
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ほとんど知ってる人のいない教室で、トモカズは何とも言えない表情のまま一人で席に座り、隣の教室から聞こえる楽しそうな声を聞いて羨んでいた。
ふと自分の教室を見渡したトモカズは、自分と同じように一人佇む男子生徒を見つけ、意を決して話しかけに行く。
「でさ、あいつロクな返事しねーの、だから友達できねーんだよな」
「へー、ヤバ」
「てかさ、お前腕細くね、割り箸みたい……」
「おい、痛いって」
「いやいや、俺の周りだとこれが普通だから」
「やめろって」
「シュウって奴さ、昨日うちのクラスのやつと喧嘩になっててヤバかったわ」
「あ、そーなの? 昨日休んでたから知らなかった」
「カズと仲いいやつでしょ? なんか聞いてないん? あ、おれ次移動教室だわ、じゃあな」
「おう、また後で」
「あ、それ一口ちょーだい」
「一緒の班なろうぜ」
「明日遊ばん? 部活とか休んでさ」
「あいつウザいから関わるの辞めようぜ」
「俺ら卒業後も親友だよな」
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収納スペースの整理の途中、トモカズは中学、高校の卒業アルバムを見返していた。どの写真も、トモカズはシュウと一緒に写っている。
「お、卒アルじゃん、なつかしー」
「それな」
「あ、そのゲーム俺も持ってたわ、今日はそれ交代でやろうぜ」
シュウはゲーム機と充電器を手に取り、テーブルの上に置いた。そこには、シュウが持ってきた酒と食料が置かれていた。
「はあ、俺まじで実家追い出される寸前でさ、なんか仕事見つかるまで一緒に暮らさん? なんて」
トモカズはまた、何とも言えない表情のまま、ゆっくりと深呼吸をした。
「……もう遅いからさ、泊まってったら?」
「え、なんか珍しくね? まあいっか、じゃあ泊まってくわ」
シュウは嬉しそうにしながらトモカズのゲーム機を開く。
12月の夜、凍えるような寒さで酷く震えたでで、車のエンジンを掛けるトモカズ。
トランクにはずっしりとした黒いゴミ袋が詰め込まれており、ほんのり積もった雪道の上を、ゆっくりと走らせている。
「では、平野修さんとは、12月以降会っていないと」
「はい」
「寝ている間に家からお金を盗まれたとのことですが、警察には?」
「いえ……なんというか、少額でしたし……ああ、飛んだんだなって」
「そうですか、ご協力ありがとうございました」
バイトの後、家に戻ったトモカズは、大学入試対策の問題集を開き、勉強に励んでいる。
合間にふと、久々に開いたSNSアプリで昔の友人のアカウントを目にしたトモカズは、最新の投稿に一つだけいいねボタンを押し、また勉強の時間に戻った。




