幸せとは
「先生。相談したいことがあります」
私は誰もいなくなった放課後の教室で、受け持つクラスの生徒からそう言って相談を受けた
「うん。いいよ」
私の了承の言葉を聞いて、その生徒は扉から自分の席へとついた
私は教卓に手をつけ体重を預けて、相談の内容を待つ
教卓には私、そして一つの席を残して誰もいない教室内には沈黙が広がる
「先生。幸せとはなんですか」
少し硬い表情を覗かせている
「幸せかぁ。」
私はその単純ではある言葉の核心を考える
「何が幸せと思うかは人それぞれ違うんじゃないかな」
私なりの返答を出した
「、、、」
何か深い悩みを抱えていると見える途廻くんは俯いていた
そこに私は聞いてみた
「なんで聞いたの。なにかあった。」
そうしたら途廻くんは話してくれた
「僕は幸せなはずなんです。毎日ご飯も食べれて、こうやって学校にも来れていて。それなのにより幸せを求めようとする。それって僕が強欲であるからなんですかね」
「強欲であることは絶対的な悪ではないよ。本当の悪は、この世には存在しないから」
そしてさらに私は途廻くんへと質問をする
「どんなときにそれを強く感じたの。話せる範囲で話してくれていいんだけど」
途廻くんの表情は先ほどよりも少しほぐれたように思える
「事あるごとに落ち込んだりするんです。波があるって言うんですかね。例えば、その、なんか、仲良くなりたい人が他の人と仲良くしてると、落ち込んだりとか。そんなことでって思うかもしれないんですけど、そういう些細な事でも強く落ち込んでしまうことがあるんです。」
途廻くんはどこか恥ずかしさを抱きながら語ってくれた
私はゆっくりと歩いて教卓から途廻くんの隣の席へとついた
そして途廻くんと同じ方向を向いて私は答える
「私が思う幸せは『相対的落差』かな。
ずっと幸せな人はそれが当たり前になって幸せだとは感じない、客観的に見れば幸せのはずなのに。でもずっと不幸な人に幸せが舞い降りると強く幸せを感じる。その逆も一緒。普段幸せだから、ちょっとした些細なことで強く落ち込んだりする。」
横を向くと、途廻くんは考え込んでいるようだった
私はそこに付け加える
「まずは途廻くん自身の幸せが何なのかを一緒に考えてみよっか」




