『聖女と呼ばれし少女、登場。そして私の理性は崩壊寸前。』
風邪が治ってから数日。
私はようやく日常を取り戻し――なんとか恋愛修羅場も落ち着いた(ことにして)いた。
しかし。
平穏とは、嵐の前触れだった。
「ご報告申し上げます。
魔神封印の地にて“新たなる聖女”の兆候を持つ少女が確認されました」
「…………は?」
唐突すぎるその報告に、王宮会議室は騒然とした。
魔導師長であるセリウスと、第一王子であるアラン、そして私・エレノアもその場に同席していた。
「名はミレイユ・クレア嬢。公爵令嬢で、癒しの魔法と光属性の加護を持ち――」
「それって、完全に“聖女テンプレ”じゃない」
私が思わずつぶやくと、セリウスが静かに頷いた。
「ただの光魔法ではなく、“浄化の息吹”という特殊なスキルを確認している」
「はあああ……またややこしい展開……」
そしてその日。
ミレイユ嬢は王宮へ、公式に招かれた。
運命の出会い(という名の戦場)
「はじめまして、皆さま。……ミレイユ・クレアと申します」
やってきた彼女は、絵に描いたような“癒し系ヒロイン”。
ふんわりとした桃色の髪。潤んだ瞳。うっすら微笑んだまま話す、柔らかな物腰。
そして――
「アラン様……お噂はかねがね。どうか、よろしくお願いいたしますね?」
「……ああ、こちらこそ」
王子の隣で、自然な仕草で距離を詰めるその様子に、
私の胸が――モヤッ……からの、ギリッ……!! となった。
(……なんかイライラするっ!!)
私、別にアランのことをどうこうってわけじゃ――
ないはずだった。
だけど。
「アラン様の剣さばき、本当に凛々しいですのね……」
「今度、わたくしにもご指南いただけませんか?」
「…………」
(なにその「男の腕を借りる」系天然小悪魔!!!)
セリウスが冷静に見守っているかと思えば、
「ミレイユ嬢、貴女の力は“本物”かもしれない。ただし、我々の聖女とは異なるようだ」
「まあ……ご丁寧にありがとうございます、セリウス様」
(妙に女の武器を感じる言い方したー!!)
私は――私、エレノア・グランディールは――
この時、ようやく認めたのだった。
「私、嫉妬してる」と!!
乙女ゲーム的修羅場・勃発!
そして数日後。
ミレイユ嬢が“王宮魔法院”の視察に来た時、事件は起きた。
「アラン様……お手を取っても、よろしいですか?」
「……ああ、構わないが……」
「ちょっと待ったァ!!」
私が叫びながら飛び込んでいた。
「その手、私のじゃないけど勝手に取らないでくださらない!?」
「まぁ……エレノア様、何かご不満でも?」
「ご不満も何も!! “公共の場で距離が近すぎる女”に文句を言うのは常識です!!」
アランは焦って私を制止し、セリウスは後ろで腕を組んで観察モード。
ミレイユはくすくすと笑って、こう言った。
「では……私の笑顔、アラン様の心を奪ってしまいました?」
(やばいこいつ、ただの天然じゃなくて確信犯系だ!!)
エレノア・暴走モードON
その夜。
「エレノア、落ち着け」
「落ち着いてるわよ!? これが私のデフォルトよ!!」
「いや、さっき椅子を真っ二つにしてたじゃないか」
「それは筋力スキルのせいですっ!!」
アランが焦ったように私を追ってくる。
「……まさか、嫉妬してくれてたのか?」
「はぁ!? そんなわけ――ないでしょバカ王子!!」
セリウスもやってきて、静かに囁く。
「エレノア。君の嫉妬、正直……可愛かった」
「うるさいうるさいうるさい!! 近づくな全員!!!」
登場人物詳細
【ミレイユ・クレア】
第二聖女候補。公爵家の令嬢。17歳。
ふんわり系の外見と天然を装った“確信犯あざと系”。しかし、内面はかなりしたたかで野心家。
プロフィール
髪色:桜色がかった明るいピンク。腰まで届くロングヘアを緩く結んでいる。
瞳:金と銀のグラデーションが混じる珍しい「聖女の虹彩」と呼ばれるもの。
服装:聖女の清廉さを意識した白と水色のドレス、ふわっと広がるスカートで「庶民的可憐さ」を演出。
声:高めでやわらかい。語尾に「ですわ」「~していただけますか?」など丁寧で上品な言葉遣い。
スキル・魔法
スキル名効果説明
浄化の息吹傷・毒・呪いを清める上級聖属性魔法。発動時、周囲に桜色の光が舞い、癒し効果あり。
光環結界聖域を作り、物理・魔力攻撃を無効化する。数秒だけだが、大規模な攻撃も防ぐ。
微笑みの恩寵周囲の人間に安心感を与えるバフスキル。効果範囲内の異性の判断力をほんの少し鈍らせる(隠し効果)。
天使の涙涙を流すと、自動的に“かわいそう”判定が発動。周囲の人物が「守らなきゃ」という感情に。
※ なお、魔導師セリウスは「この最後の2つ、明らかにバグってる」と分析しているが、王族側は“運命の乙女”として重宝している。
性格・本質
表面:控えめ・優しげ・おっとり・ちょっと天然。誰にでも好かれるタイプの完璧なお嬢様。
内面:冷静で計算高い。貴族社会の権力構造をよく理解しており、「自分が王妃になる未来」を当然視している。
特徴的な性格:
自分の価値をわかっていて、意図的に“守ってあげたくなる空気”を醸し出す天才。
ライバルを直接否定しないが、相対的に“自分の方が上”だと感じさせる会話術を持つ。
目標は“王妃としての座”。アラン王子に向けて着実に攻略を進めてくる。
恋愛傾向とライバル視
エレノアに対して:
直接的に攻撃せず、“清楚・品格・癒し”という真逆のベクトルからマウントを取りにくる。
「あら、エレノア様は強くて素敵ですね。わたくし、そういうのに憧れちゃいます」など、褒めてるようで対立軸を印象づける発言が多い。
アランに対して:
「幼い頃、父上に“王妃になりなさい”と育てられてきましたの」
→王子の隣に立つのが当然と考えているが、乙女ゲーム系恋愛知識がゼロなので若干ズレている。
→しかし“天然のような無防備さ”と“計算された距離感”で、男たちをじわじわ落としていく。
セリウスに対して:
「貴方のような方が、わたくしに興味を持つとは……まさか運命かしら」
→一度無視されてもめげない。逆に興味を持たれないほど燃えるタイプ。
セリウスから「まるでバグのような女」と呼ばれる。