〜“聖女”になったら今度は政界の悪役どもが牙をむいてきた件〜
王宮会議、火蓋を切る
「まずは“聖女としての礼節”を――」
「はいはい、儀式用の指導書”なら読破済みよ。32ページ、5章に“沈黙の作法”とあるけど、
それって『女は黙ってろ』って意味かしら?」
「……っ!?」
王宮の大広間で、ざわめく老臣たち。
「エレノア様、それは少々――」
「様はいらないわ。私は“国民の下僕”だから」
(しれっと言ってるけど、今のめちゃくちゃ高等戦術じゃない!?)
元王子・アラン、口を開けたまま固まる。
「では、こちらが“従来の聖女枠”で処理された予算案になります」
「ふむふむ。……人件費が“神の御心”で処理されてるのは、何?」
「……え?」
「神って名前の官僚でもいるのかしら? この費用、去年は倍だったけど中身が書いてないわね」
(前世のOL時代、ブラック部署の帳簿精査で鍛えられた女の眼光が光る――!)
「あと、神殿経費の“祈祷石装飾費”が年間で一千金? 豪奢すぎない?」
「で、でもっ、神聖さの演出”のためにはっ……!」
「神聖さ”より“誠実さ”でしょ? 庶民にバレたら税反乱よ?」
(やばい、この人、たぶん神殿より神っぽい……)
新制度、即断即決
「――というわけで、聖女庁を新設します」
「……せ、聖女庁!?」
「うん、民間と王家の間に立つ“調整機関”よ。実務も法案起草もこなせる、前世で言う官房機能ね」
「何それ、怖……」
「しかも職員は“民間出身者”から登用。“実力主義”で行くわ」
「既存の貴族官僚、全否定ぃぃぃぃ!!」
「一応、教育プログラムは準備済み。半年で基礎から叩き込むスパルタ式よ」
地獄の研修マニュアル・完成済み!
そして――
エレノア式”新施策群
【聖女予算】:すべて成果報告義務付き。神託もレビュー対象。
【魔導ネットワーク構築】:魔石を使った通信網の拡張整備。
【民の声ポスト】:全国に設置。“愚痴でも投書してOK”の広報戦術。
【労働改善大計画】:魔法と道具で人力作業半減+労働時間削減!
「ねえセリウス、ちょっと実験してみたいんだけど――」
「またですか!? 昨日、魔導式パン焼き機が爆発したばかりですが!!」
「これはね“瞬間書類提出マジックポスト”よ。これがあれば、役所に並ばなくていいの」
「――未来、来すぎでは……?」
貴族派との心理戦
「エレノア聖女――! あなたの方針は急進的すぎる! 貴族制を軽んじておられるのでは!?」
「重んじてるわよ? ただ“中身のある貴族”が好きなだけ」
「……ッ!」
「貴族の仕事って、血筋じゃなくて“成果”で語られるべきでしょ?」
正論パンチ!効果はばつぐんだ!
そんな中、かつてエレノアを断罪した王族たちは……
「な、なんという手腕……あの時、我らが“断罪”したのは、聖女ではなく――女神では……?」
「もはや王家の方がエレノアの家臣なのでは……?」
(もはや“ざまぁ”を超え、“跪け案件”へ)
政務室にて
「今日はお疲れ様、エレノア」
「……ありがとう。アランも一緒にいてくれて」
「……なあ、最近、あんまり俺のこと“ただの元婚約者”って言わなくなったね?」
「……そう? まあ、元どころか“現在進行形で面倒な王子”だし?」
「褒め言葉として受け取るよ」
「どこがよ!? ……はあ、でも……昔よりは、信じてるかも」
「……君の隣に、俺がふさわしくなるよう、努力するよ」
「えっ、いまのちょっと良いセリフ……ちょっとドキッとしたんだけど……責任とってよね?」
「もちろん。責任も、未来も――全部、君と」
(この国の未来は、きっと“愛”と“効率化”でできている)