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羽化不全のナミアゲハを飼育してみた

作者: 瑞月風花

とある冬の日、さかさまにぶら下がってしまっているナミアゲハの蛹を見つけてしまった。

うーん……。さかさまブラブラだと羽化失敗しそうだよなぁ……。


そんなわけで、その蛹を持ち帰り、過去カブトムシの幼虫を育てていた水槽型の虫かごに蛹ポケットを作って、様子を見ることにした。


何日くらいさかさまだったのか、さかさまがそもそも蛹にどういう影響を与えるのか、それが分からないから、もしかしたらお亡くなりになっている可能性もあるかもしれない。


そんな風に思いながら、出かける前に「生きてるか?」と虫かごを覗きながら、玄関を出る日々が続いた。


そんな中、4月の二週目あたりだったろうか。


蛹の色が変わってきたのだ。


黒い色になってきている……。


黒色は、『死』か『羽化前』の変化である。


しかして、それは羽化前の前兆だったのだ。


しかし、羽化は失敗。

不思議なことに羽根はしっかり伸びているのに、虫かごの底で足をそろえて動かないナミアゲハが落ちていた。


叫びをあげて、そのアゲハをつまもうとすると、生きていた。

しかし、それはとても不思議な羽化失敗だった。


まず触角が右に歪んでいる。私の知る限り触角の羽化失敗はあまり見たことがない(あるのかなぁ?)

そして、翅。

伸びきった翅。それなのに、まるで振り下ろした瞬間のように下方へ綺麗に畳まれている状態。


本来、蝶の羽は背中の部分でぴたりとくっつく瞬間があり、そこからの羽ばたきからの翼圧?で空を飛んでいるはずなのだ。

それなのに、彼は(オスでした)それが出来ない。


これって、羽化失敗?

何かにぶつかったり、落ちたりするともっと翅ってもっとくちゃってならないかなぁ?


そんな風に思うのは、あれだ。


彼が落っこちている時に「もう少し早く帰ってきてあげていれば、なんとか無事に羽化させてあげられたんじゃないかなぁ」と思ったから。


不備はあったかもしれない。

蛹ポケットは作ってあげたけれど、それ以外に掴まれるようなものはなく、今までの経験則から勝手にそれだけでいいと思っていたところもあり、反省したからだ。


……とにかく、さかさま時期が長かったせい、も念頭に置き、彼をどうするのかにシフトチェンジした。


とりあえず、翅の根元が上まで上がれば飛べるだけの翅の伸び方である。

しばらく根元を持って、癖付けをすれば……。


……ダメだった。多少上に上がるようにはなったが、最上部でぴったりくっつくことはない。しかも飛ぼうとすると、翅は風を受けられるくらい伸びているため、下方へベタンと突撃してしまうという可哀そうさ。

最初のぴょんは飛び立てるけど、その後、振り下ろしが余計に激しいのだろう。

なんて可哀そうな……。


まぁ、さっきより羽根も上向きになって歩きやすそうになったかなぁ?

あんまりすると、鱗粉が傷つくし、ここまでか、と諦める。


飛べないということは、外に逃がしてもすぐに鳥に食べられる。

今までの子は、なんとなく飛べる羽化不全だったので、逃がしてはいたけれど……(汗)


とにかく水槽虫かごの中に雑草を敷いて、ポットに入った背の低いパンジーを入れてみた。

ご飯食べるかなぁ?

観察すること二日。

おなかがぺったんこになってきた。


砂糖水か……。ネットで調べると、濃度が濃いと内臓をやられるらしい(えっ、怖い)

そんなわけで、余っていた昆虫ゼリーを水に溶かして飲むか実験してみた。でもストローが伸びない。

やっぱりネットで、もう一度調べてみる。本当に便利な世の中だ。


なんと、爪楊枝でストローを伸ばしてあげると飲むらしい、とある。

早速やってみる。


なんと、飲んだではないか!


※※※


ストローを伸ばすと、こくこくと頭が動く。

飲んでる!!が見て分かるなんて。

と、虫に感動する私。


うーん……そうだなぁ。

ナミアゲハの男の子。

ナミヘイ?

そんなことを思いながら、意外と毛深いその頭部を見てしまう。


そして、今日も私はナミアゲハに餌をやる。

まったく手を怖がらずに乗ってきてくれるようになったので、なんだかかわいく思えてくるから不思議である。


※※※


蝶にとって何が幸せなのかはわかりません。空を飛ぶ、子孫繁栄が彼らの宿命かもしれません。

だけど、野外には野鳥がたくさんいます。

スズメバチも、アリだって。

羽化するまでの生存率もかなり低いです。


逃がして飛んで行ったと考えられない彼を外に出すという選択が出来ませんでした。


でも、これが懐いているのだとすれば、蝶の体毛までじっくり観察できるチャンスです。ナミアゲハはもふもふしていて、ほ乳類みたいでした。

もし蝶の羽化不全に出会ったら、外に逃がすのではなく、飼って観察するのもいいかもしれません。ちょうど、GWも近くお子様と一緒にいかがですか?


ちなみに、はちみつも砂糖水と同じように、ほんの少しの濃度で十分だそうです。

調べると濃度も出てきましたが、本当にちょろっとでいいみたいですね。

スポーツドリンクを薄めても良いそうです(感想欄で教えていただきました)

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…そうか、みんなで廊下に立たされてるとき瑞月様だけ帰ったのは、このコのためだったのね(笑) 今も? いる? の? いつだったか息子が小学生のとき捕まえてきたバッタ、キャベツとかあげてたけど3か月後くら…
さかさまにぶら下がってしまっている蛹を見つけて、放っておけず持ち帰られたこと、その後も日々丁寧に観察され、砂糖水をあげたりされたことからも、やさしさの溢れるエッセイですね。ストローで飲んでいる様子を想…
拝読しました。 とても興味深く読ませていただきました。 昆虫を飼うということをしたことがありません。どちらかと言うと、苦手なのです。(o^^o)汗 昆虫を飼うといえば、カブトムシやクワガタのイメージ…
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