第6話 予言はまだ終わらない
翌朝。
エルはやや慎重な手つきで、机の上の予言書を開いた。
白紙だったらどうしようという期待と不安が半々だったが、そこにはちゃんと文字が浮かび上がっていた。
――《自由行動◎ 貢献度〇 次回:応用編に進級》
「……なにこれ、ゲームのミッションか何か?」
寝ぼけ顔のまま苦笑しつつ、ページをめくると、さらに一文が続いていた。
――《エル&セリナ 本日もよろしく》
「……連名で来るとは思わなかった」
「なになに?」
背後から現れたセリナが、ひょいと覗き込む。
そして無言で数秒固まった後、ぼそっと呟く。
「私まで巻き込まれるとか、聞いてない」
「俺も聞いてない!」
二人の声が、朝の村に響いた。
そしてセリナは、くるりと踵を返しながら一言。
「……仕方ないな、今日も付き合ってあげますか」
その声には、昨日より少しだけ柔らかい笑みが乗っていた。
そして今日も、予言と共に一日が始まる――けれど、もうエルは少しも慌てなかった。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!
本作『俺の予言書だけ不具合。』は、現在構想中の中長編ファンタジーの“パイロット版”として書き下ろした短編です。
予言が当たり前になった社会の中で、「自分で選ぶ」という一歩を踏み出す物語――その導入を、軽やかに楽しんでいただけたなら何よりです。
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