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2つの作戦

 マトラ旧市街の夜に出現する、人の形をした物体には出血というやっかいな技がある様だ。


『他に出血してないか確認しましょう』

 わたし達は互いに出血がない事を確認した。

「どうやら他はないみたいだな

 あのやっかいな出血にだけは注意しなきゃな」

 わたしはルビーが救急袋を手にしてるのを見て言った。

『ルビーさんそれは後でいいですよ、

 作戦を立てましょう』

「そか」

「本当に大丈夫か? 出直すって手もあるが……」

『ラピスさん本当に大丈夫です、お心遣い感謝します』


 後退するのを心底嫌うラピスが、退却を提案したのはわたしを気遣っての事だろう。


『あの物体は、一度攻撃を与えた後の追従能力に優れている様です

 更に移動能力も見た目よりもありそうですね』

「あぁ、あれは間違いなくここを見つけてやって来たんだろうな

 部屋のドアも開いてないし、どうやってここまで来たのかはわからんが」

「瞬間移動でもしたのか?」

『どうでしょう?

 でも、石畳の間から出てきた事からしても、人間相手の戦法は捨てた様がいいでしょう』

「そうだな

 剣は恐らく効果がないだろう」

 外の様子を見ると、少し離れた道端にさっきの物体に似たものが何体も見えた。

「幸いなのは街灯には反応しない様だな」

『していたら今頃生きてはいないでしょうね』

「うひッ!」

 ルビーは胸を撫で下ろした。



『作戦ですが、ナイトの特性を生かしたものを考えています』

「ナイトの特性?」

『まず、ルビーさんが小細工魔法で乗り物を作ります』

「ルビーってそんな事も出来るのか?」

「へっへーッ! 小細工魔法に出来ない事は皆無に等しいのだ」

『それにラピスさんが乗ります』

「んむ? オレだけが乗るのか?

 お前やルビーは?」

『わたし達はその間にある場所へ移動しておきます』

「ふむ」

『そして、街をくまなく走ってもらって、

 道中の物体を聖なるオーラで全部引き寄せてください』

「ふむ、よく知ってるな聖なるオーラの事なんか」

「あたしだって知ってたぞッ!

 ナイトは聖なるオーラありきだからなッ!」

『全部引いた後、この街の悲劇を生み出した魔導士の所へ向かいます』

「なるほどな、全部一掃しようってのか

 だが魔導士がどこにいるかなんてわからんだろ?」

『それなら大丈夫です

 乗り物が最後に行き着く所がそこですから』

「ふむ、つまり乗り物は自動で動くって事か?

 ルビーってなんかスゲェな」

「あたしはスゲェのだ、見直したか?

 惚れたのかッ? 惚れちゃったのかッ!?」

「それはないな」

「オ~ノォ~!

 フラれたのかッ!? ネタ振りでフラれたのかッ!?」

「いや、そういう事じゃなくて……

 このオレにそんな資格がないって事だ」

「うむ、責任を感じてるのだな

 もしあたしが同じ事になっても同じ様に思うのか?」

「あぁ」

『わたしの手の事なら気にする事はないです

 こうなったのはわたしの不注意ですから』


 ラピスは黙ってわたしのなくなった左腕を見ていた。

 わたしはさっきまでこの左腕の先についていた物を手に取ると、空中に投げてプラズマで消去した。


『どうですか? こうなっていても戦闘力は変わっていませんよ』

「よし、わかった……作戦の最後を説明してくれ」


 そう言ってもラピスはきっと気にしているだろう。

 チラっとルビーを見ると、にんまりとしていた。


『続きを言いますね

 魔導士の元にたどり着いたら、

 物体達が来るまで乗り物は周囲をぐるぐると回りはじめます』

「オレはどうしていればいい?」

『そのまま乗っていて下さい

 魔導士は攻撃して来るかもしれませんが、それは放置でいいです』

「なぁ、攻撃とかって当たったりしないのか?」

『道中乗り物を破壊されそうなら阻止して下さい

 魔導士の元にたどり着いたなら破壊されても大丈夫です

 後は物体が全て集まるまで臨機応変に行動して下さい』

「『大丈夫です』って……

 乗り物だけじゃなく、オレに当たったりはしないのか? 出血のとか……」

『もちろん当たると思います

 むしろ乗り物ではなくラピスさんを狙うでしょうから』

「……だよな」

『続けますね、

 最終的に物体が全て集まった所で、魔導士と物体を全て焼却するのですが

 焼却する為のものはその時に投げてお渡ししますので受け取ってください』

「あ、あぁ……投げるんだな、わかった受け取る」

『これで今回の作戦は全てです

 皆さんがんばりましょう!』

「オーーーッ!」

「お、おぉーッ!」

 ルビーが叫ぶと、ラピスも仕方なく合わせた。


 マトラ旧市街で、わたし達はいよいよ作戦を開始する。


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