【1分小説】カメレオン
ソレはトカゲに話しかける。
「なぁトカゲよう。なんでお前さんはそんなに尾っぽが長いんだい」
「私の尻尾は、逃げる為にあるんです」
そう言うと、自ら尻尾を切り落とした。切れた尻尾はピクピク動き続けている。
「ほぉう。命の為に尾っぽがあるのか」
そう言うと、ソレは尻尾をニュルリと生やした。
トカゲはソレに驚き、尻尾を切って逃げてしまった。
「情けねぇなぁ。逃げずに生きていけってんだ。でもこの尻尾、気に入った」
ソレはカエルに話しかける。
「なぁカエルよぅ。なんでお前、体が青いんだ?」
「僕の肌はドンドン変わるんだ」
そう言うと、地面の色に肌の色を変える。動く度に変わる。
「ほぉう。命の為に肌があるのか」
そう言うと、ソレの肌は緑色になり、雲の動きに合わせて肌の色を変える。
カエルはソレに驚き、飛んで跳ねて逃げてしまった。
「情けねぇなぁ。隠れずに生きていけってんだ。でもこの肌、気に入った」
ソレは人間に話しかける。
「なぁ人間よぅ。なんでお前、嘘をつくんだ?」
「人と手を取り合う為にあるんだよ」
そう言うと、人間はソレを指差し、悪魔だと罵った。近くの人間が集まり、ソレを口々に罵った。
「ほぉう。命の為に嘘があるのか」
ソレは体の色を変え、尻尾を使って体を宙に浮かべる。
「俺は神なるぞ」
人間は恐れおののき、皆がへりくだった。
「情けねぇなぁ。でも、ああ、この嘘、気に入った」
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