幽霊屋敷(666文字の超ショートショート)
超ショートショート「幽霊屋敷」
薄暗い山道を歩き続けて、三十分。
青年は、最近巷で話題になっている心霊スポットに向かっていた。大学を卒業して就活する前に、未だに浮かれている気分を一新するため、刺激を求めてここまで旅をしてきたのだ。
鬱蒼とした茂みを抜けるとついに、目的地である山奥の屋敷に辿り着いた。あたりを見回すと庭で家主と思われる老人が、落ち葉を掃いていた。
「おや、こんなところに人が来るとは珍しいね。一体何をしに来たのだい?」
「はい。ここは最近、幽霊が出ると噂でして、それを嗅ぎつけここに来た次第です。」
すると、老人はニッコリと笑って言った。
「そうかい。今日はもう遅いし、ここに泊まりなさい。」
青年は空き部屋に案内された。屋敷は思いのほか広く、老人が一人で暮らすには大きすぎるほどだった。
夕食をすませた後、彼は寝る前に少し屋敷を探検してみることにした。
「話と違いあまり怖い印象はないな。どこもちゃんと掃除されている。」
そう独り言をしゃべって次は食堂を見に行こうとしたとき、見知らぬ小太りの男が廊下の奥からなにか怒った様子でこちらに向かってきた。
「なぜ、勝手に人の家にはいっているのだ!?」
「あぁ、良かった。お化けかと思ってびっくりしましたよ。勝手にと言われても、私はちゃんと家主さんに許可を取りましたよ! しかし幽霊が出ると聞きここまで来たものの、何も起こらなかったな。やはり、ネットの話なんて信じるべきではなかったのですね。」
そういうと、その男はサッと青ざめて言った。
「家主はこの俺だ。それに、この屋敷には確かに幽霊が出る。 俺は見たのだ。年老いた男の霊を、な…」
お読み頂き、ありがとうございます。
もし宜しければ、ブクマ、評価、いいね等、よろしくお願いします。