41.辺境伯城完成(1)
メディの店で弟子にはなれなかったけど有意義な休暇を過ごせた。
そして、遂に完成したようだ。
我が城。
母艦で城に向かう。
「着陸場がある、そうかドラゴンも行き来するので広い場所は必要だな
あっ、バジルはそのままね。絶対に人化を解いちゃ駄目だからね。色々潰れちゃうから
この惑星に降りられる場所なんて無いから」
ノイシュバンシュタイン城みたいに、高いところにある。ホワイトドラゴンの外れにある山を切り開いた。
現在は建設のための資材置場や、作業員の仮宿泊所とかはそのままだが、内装までは既に完成している。
母艦は資材運搬作業のじゃまになりそうなので、荷物を降ろした後マイワールド『格納庫』に収納した。
入口に向かうと、フォーズンが待っていた。内装をお願いしたんだっけ。
「ようこそいらっしゃいました、と言うのもおかしいですね、ロイ様の城ですから」
「いやあ、完成を心待ちにしてたよ。」
「まだ、すこし片付けが終わっていませんが、設備・内装などは完了しております
ロイ様は、建築計画の段階から関わっているのでご存知かと思いますが、お連れの方にもお披露目したいと存じております」
メンバーを連れて、ぞろぞろと入っていく。
1階は、広間、女神像の間、会議室、厨房、食堂などだ
2階は、客室、従者の部屋、従魔たちの部屋、大浴場
3階は、執務室、図書室、俺の部屋
4階は、展望・観測室
そして地下には、シェルター、龍脈発電所、食料庫
従業員用の通路は常用通路は隔離されている
別棟に洗濯場、従業員用大浴場、従業員部屋、などが有り、渡り廊下でつながっている。
広間には、各領地の特産物紹介のための展示コーナーがある。
来訪者は山道を登って来なければならない。
エレベーター要るかな
まあ、あんまり来てほしくないけど。
空いてる土地がなかったから仕方ないよね。
まあ重要人物は母艦で送り迎えするから良いか。
威嚇のために、砲門が設置されている。要塞ではないので、通常武器だ。
山の周囲は罠エリアが広がり、山の麓からの出入り口は、正面と背面の2箇所の城門だけだ。
上空は結界で守られている。離着陸許可がないと出入り出来ない。
敵対関係にあるところは無いので、どこからも攻撃を受けることは無いだろうが、威厳を持たせるために必要との事だ。
襲われるとしたら盗賊団だろうが、盗賊団はほとんど刑務所村に収容されているので大丈夫だろう。
奴らも捕らえられて自由を奪われはしたが、快適で健康的な暮らしに慣れてきたようだ。そもそも自由だったわけではない、当然追われる身でストレスが溜まって凶暴化していたらしいので、刑務所の暮らしは最初は苦痛だっかかもしれないが、慣れてきたらその健全な生活環境から心の安寧を得る様になっているらしい。それでも何人かは抵抗していたので、彼らには片道切符で「鉱山」というもっと厳しい環境の所に移動してもらった。ここが気に入らないと言うのだから仕方ない。優しい気持ちで送り出した。
問題があるとすれば、俺があまりここに居ない事だろうか。
個人所有なので公費の無駄遣いとは言われないので良いか。
ーーーーー
「あにきぃ、やめときましょうや、あんなとこ絶対に入れやしませんぜ」
「ふん、おめえもまだまだだな、あんな広い山の全域に侵入者対策してるわけがないだろ」
「そうですかぃ? じゃあ行ってみます?」
「柵があるが大した事ない、越えるぞ」
ひょい
「ほんとだ、大丈夫ですねぇあにきぃ」
「さあ行くぞ」
ズボッ
「「うわぁ~」」
「イテテ、落とし穴か、甘いな、こんなのよじ登れば」
ズボッ
「「うわぁ~」」
「あっイテテテ、二重落とし穴か、ん?人がいるなぁ」
何十人か人が居た
「お前らもか、アホだな」
「なんだとぉー、ここはどこだぁ?」
「ほんとアホだな、まあ他人のことは言えんがな、ここは牢屋だよ。
何十人か落ちてきたら纏めて刑務所村に送るんだと」
「そんなぁ、裁判は?」
「そんなのあるかよ、此処は領主邸だぞ、領主権限で即有罪さ」
「うちには帰りを待っている家族がぁ」
「大丈夫だぞ、家族も一緒に連れて行ってくれるってさ。
まあ、刑務所村ってそんなに悪いところじゃないらしいぜ、全寮制の仕事を得たと思えば天国さ」
「拷問とかされないかな」
「あるわけ無いだろ、大切な労働力を潰しはしないさ、逆らわなかったら大丈夫だろ」
「逆らったら?」
「よく知らんが、噂だと鉱山行きだとよ、そこは地獄らしいぜ」
「逃げたら?」
「絶対逃げれねえし、ハイリスク・ノーリターンだぜ、やめとけ。
従順にして刑期満了を待つのが正解だぞ。
あっ、またアホが落ちてきた」
「それにしても、やけに詳しいなあ」
「俺が一番最初に落ちて、得た最初の仕事だよ。説明係さ」
新たに落ちてきたバカ
「おれはぁ、貴族の息子だぞ、こんな事してただで済まさないぞ」
「また面倒なのが来た。
なあお前、此処では地位とか差別とかは無い場所だ、みんな公平だとよ」
「うるさい、平民が、この高貴な..」
「高貴なアホ。ここに居るやつは全員単なるアホだってさ、
それ言わないほうが良いぜ、ここの領主は興味のないことに対してめんどくさがり屋だから。」
「話せば分かるさ、高貴な血の一族なら」
「領主は平民出だぞぉー」
「そんな奴が私を捕らえるなんて許せない」
「貴族なら面倒だから保釈金で解決出来るかもよ」
「本当か?」
「保釈金最低で10億ゼニで出られるらしいぜ。高貴なやつほど高くなるらしい」
「そんな金があったら来るか」
「では、我々と同じ扱いだな、まっよろしくな」
「くそぉ親を呼んで懲らしめてもらおう」
「それもやめとけ、少しでも面倒だと思われたら一番嫌な結果をくらってしまうぞ
というか、皇帝でも連れてこない限り駄目だろうなぁ
あと、家族は居ませんって言うんだぞ、そうしないと家族まで巻き込んでしまうぞ」
「そっそんなぁ」
「ここはまだましだぞ、領主は以前バウンティハンターやってて、面倒だからといって盗賊は全て冷凍睡眠保存してたそうだ
我々はこうして喋ったり動いたりすることが出来る。幸せだと思え。」
「悪魔か」
「いや、優しさだろうな、少なくとも本人はそう思っているらしい。暴れれば切り捨てないといけないし。引きずって護送すれば傷つくだろうし。冷凍睡眠しとけば本人は眠っているので苦痛もない。護送する側からしても、面倒がなくWinWinだとか言ってたな」
「いや、我々は負けてるだろ」
「彼の考えは違うな、これ以上罪を重ねることがなくなり、魂が穢れるのを止めてあげた。と
お前たちは、運命に勝ったんだと」
「なんか、言いくるめられてない?」
「そうかもしれんが、間違っているとも言えん。俺はやり直すチャンスを貰ったと考えている。
そもそも、なんでこんな押し込み強盗みたいな事をする事になったか考えてみろ。」
「金が無いから?」
「その原因は?」
「働かなくなったから?」
「なぜ?」
「クビになったから」
「理由は?」
「お金を使い込んで」
「なぜ使い込んだ?」
「遊ぶお金が欲しくて」
「そうだ、自分の欲を抑えきれなかったのが原因だ。
色々要因はあるが、その根本原因は自分自身にある。そう、自分の運命だ。
そこに一つのピリオドが打たれた。そして次の章へと進むことが出来る、
すなわち勝だ。我々は自らの運命に勝ったのだ」
「お前さ、偉そうに言ってるけど、俺達と一緒じゃん」
「面目ない。強がってみたかっただけだ、気にするな」




