36.メディの薬屋に弟子入り(3) 薬屋見学
メディの薬屋に戻ると、もう閉店の準備をしていた。
「ちょうど良い時間ですわ」
少し閉店の作業を手伝い、店を閉める。
「あれからどちらへ?」
「ああ、店を見て回った。ドラゴンズ・ロイとタイアップしているのか?」
「はい、ロイ様の指示だそうで」
そうなの?ままあいか
「あと、客層を分けたのは良いな」
「ありがとうございます、ある程度規模がないと出来ないですが、素材は大量に入手出来たのでそれが可能になりました。それに魔道具の品揃えも良くて助かります」
「順調なようでなによりだ」
さて、これから仕込みの作業だそうだ、見学させてもらう。
基本は、素材を粉砕して水につけて、撹拌しながら煮出す、寝かして、ろ過する。
素材ごとに若干条件が異なるのと、作る薬の種類によって配合が異なるし、魔力を込める者もある。
同じ素材でも、水出ししたもの、お湯につけたもの、煮出したものなど、条件によって抽出される成分が異なるので薬効によって作り方が異なる。それらの条件を頭の中に入れて、使う機材の段取りを組み立てて効率よく薬を仕上げていく。プロの仕事だ。
「ものすごく手際が良いです」
「お褒め頂いて嬉しいですわ、ポーション類はあとはひと晩寝かせて、明日の早朝からろ過作業と瓶詰めです。数日分づつ作って様々な薬を仕上げていきます。丸薬類はこれから形にしていき、乾燥させます。
こうやって数十種類の薬を常時確保しているんです」
こういった段取りが出来ることが薬師にとって必須の能力らしい。
薬師課程の試験では
・体力
・レシピの記憶力
・クリティカルパス(段取り最適解を求める)
・魔力を込める場合の魔力制御
が試されるそうだ。俺には無理だな。
更に、マスタークラス認定では、新薬の開発又は新レシピの開発が必須となっている。
マスタークラスは弟子を取ることが出来るらしい。
なんとメディはマスタークラスらしい。
俺は見学だけだな。全ての能力が足りない。
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「あっそれと、アルガロイという甘味処も行ったなぁ」
「えっ!あの噂の店に? でも予約が必要だったと思うんですが?」
「なんか俺専用の客室があった」
「?」
「アルガロイってアルガ皇女とロイの合成語らしい」
「今度一緒に行きましょう、是非是非是ーー非、甘味も食べすぎては駄目ですけど、薬なんですよ、ホント。普通に予約を取ろうと思っても3ヶ月待ちなんですよぉ。やったぁ~」
「ああ、でも忙しいんじゃ?」
「マスタークラスを甘く見てはいけません、瞬間的にクリティカルパスを見つけました」
そういう能力ね。




