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2023年12月12日放送 フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日 八巻和行の七転び八巻 妄想【愛の劇場】#114 理想と現実


 サクソフォン奏者八巻和行(やまきかずゆき)さんのラジオ番組

 こうのすFM フラワーラジオ

 フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日(午後4時~午後6時)

   八巻和行の七転び八巻

 

 というラジオ番組の投稿コーナー

  妄想【愛の劇場】

 毎週パーソナリティ八巻さんから出題される【作品のテーマ】を小説風に書いた作品を投稿するコーナー。


 小説の書き方を知らないシロウトが投稿コーナーに参加。

 そのコーナーに投稿した作品をこちらに投稿しています。


 妄想【愛の劇場】のコーナーで、絶賛!妄想仲間を募集中!! 

 こんな感じで大丈夫なので、コーナー投稿に興味がある人がいてくれると嬉しいです! 

 《番組への参加方法》

 ①フラワーラジオが聴けるように、ListenRadioリスラジのアプリをダウンロード

 フラワーラジオを選局して、お気に入り登録

 ②パーソナリティ八巻さんのX(旧Twitter)をフォロー

 ③毎週日曜日の夜に、八巻さんのX(旧Twitter)から【作品のテーマ】が発表

 ④八巻さんのX(旧Twitter)のダイレクトメールから投稿

 ※番組放送当日の火曜日午後6時頃までに投稿できれば、コーナーの時間に間に合います。

 ※何故か八巻さんが初見で読むルールのようなので、漢字には「ふりがな」をふって下さい。



 サイト投稿回数 第66回目の今回は……

 2023年12月12日放送。

 妄想【愛の劇場】#114 理想と現実


 どうってことはないとずっと思っていた。

 オレを誰だと思っているのかとも。


 ヤーマキンは常に自信に満ち溢れていた。

 自分にできない事はないものだと自負していたし、信じていた。

 他人にも同じ思いを抱いていた。

 自分にできて、他人にできない事はないのだと。

 簡単ではないか。何故それをできない事だとすぐに弱音を吐くのか。

 ヤーマキンには理解できなかった。


 ある朝、ヤーマキンは目の前が真っ暗になった。

 身体が重く心もどんよりとしている。ヤーマキンはベッドから起き上がる事ができないでいた。

 ヤーマキンの部屋を3回ノックする音が聞こえた。

「ヤーマキン兄様、お時間ですわ。どうかされまして?」

 妹のヤマキーンが、外出の時間になっても部屋から出てこない事に疑問を抱き様子を見に来たようだ。

 妹とはいえ、自分の現状に助けを求める事はヤーマキンは恥だと思った。

「時間の事には気が付いている!」

 ヤーマキンは少し語気(ごき)を強めてヤマキーンに声をかけた。

「さすがはヤーマキン兄様、失礼をいたしました」

 ヤマキーンはヤーマキンにそう声をかけて部屋の前から離れた。

「時間の事には気が付いているのは事実だが、いかんせん身体が動かない」

 どうしたものかと思案するが、これといった策はない。


「バグが発生したようですわ」

 どこからか女性の声がした。

「動けないという事はそういう事なのでしょう?」

 ヤーマキンには、この女性が何を言っているのかさっぱり分からない。

「リセットしてもう一度やり直す」

 少ししゃがれた男性の声がした。ヤーマキンにはやはり誰の声なのか分からない。

「リセットしては、今までのプログラムが全て消えてしまいますわ」

「バックアップをとっておろうに」

「今日のバグが発生する辺りのバックアップがまだとれておりません。もう少し動かしてから保存いたしましょう」

 一体何の話しをしているのだろうか。ヤーマキンにはやはり分からない。

 ヤーマキンはだんだん意識が遠くなるのを感じた。

「ヤーマキン兄様、お加減(かげん)いかが?」

「ヤマキーン?何故お前が私の部屋の中にいるのか?」

「兄様が心配だからですよ」

 ヤーマキンはだんだんと遠くなる意識をかき集めながら意識を集中させと、ヤマキーンの方へ意識を傾ける。

「なんでもできる魅力的な兄様でも、プログラムにバグが現れては存在の意味すらありませんのね」

 プログラム?ヤマキーンは何を言っているのか?

「自信家の兄様。誰にでも自分と同じ能力を求める兄様。ワタクシはそんな兄様が大好きでしたわ」

 ヤマキーンはヤーマキンに近付きながら、優しい声で話す。

「でも、今の兄様は嫌いですわ。ベッドから起き上がる事もできない、バグだらけ兄様」

 ヤマキーンはヤーマキンの顎を掴む。ヤマキーンの握力だけでヤーマキンの上半身だけが浮き上がる。

 ヤマキーンのヒヤリとした指先が、ヤマキーンの心をうつしているようで薄気味悪く、ヤーマキンの背中を凍らせた。

「所詮兄様はお父様のロボット。ただのプログラムでしかありませんのね」

 ヤマキーンは掴んでいたヤーマキンの顎を、力いっぱいベッドに投げ落とした。

「やめなさい、はしたない」

「お父様」

「ヤマキーン、バックアップはいらぬ。すぐにリセットして再起動させなさい」

 しゃがれた声の男性をヤマキーンはお父様と呼んだ。ヤーマキンには聞き覚えのない声だった。

 意識が遠のく中で、ヤーマキンは自分の父親がどんな人間だったかを思い出しながら力尽き意識が飛んだ。


 ヤーマキンは目が覚めた。

 いつもよりもスッキリとした目覚めだった。身体も軽い。

 自分の部屋からリビングへと向かう。

「兄様、おはようございます。お加減いかが?」

 いつもの様に妹のヤマキーンが朝食の準備をして、あたたかいコーヒーを淹れていた。

「お父様はどちらかな?」

「兄様ったらなんのご冗談ですの?」

「昨日、私はお父様にお会いしたように思う」

「ふふふ、面白いご冗談ですわ。お父様なんて、随分前にお亡くなりになりましたでしょう」

「……?ああ、そうだった。私は夢を見ていたのだろうな」

「ふふふ、本当に面白い兄様」

 夢を見たのはいつ振りだろうか。

 ヤーマキンは少しふわりとあたたかい気持ちになった。


「またバグか?」

「プログラムをアップデートすれば、全てがクリアになりますわ。問題ありません、お父様」

 


 ありがとうございました。

 次回もラジオ番組の投稿コーナー

 妄想【愛の劇場】へ投稿した作品の投稿になります。


 妄想【愛の劇場】#115「綱渡り」

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