第45話(累計 第92話) 魔の塔攻略戦その八:自衛隊の救援来る! 僕は勇気を取り戻し、魔城を昇る。
「警察庁第一機動強襲室の方々。ここまでの支援、ありがとうございました。おかげで敵の妨害も受けずに、無事塔内に部隊を侵入させることが出来ました」
ユウマくんが指示・支援してくれたおかげで、自衛隊のレンジャー部隊のお兄さん達が衛生兵込みで僕たちを助けに来てくれた。
……M3パワードスーツも一個小隊分四機、輸送ヘリで来てくれたんだ。敵側の攻撃ヘリは全部落としたし、航空自衛隊も活動し始めたからね。
「こちらこそ、ありがとうございました。このままでは、怪我した方々の命を助ける事が出来ませんでしたから」
僕は、衛生兵の方が海保のお兄さん方を手当をしたり、急ぎこちらにきてくれた自衛隊の病院施設付輸送艦へ重傷者をヘリ搬送しているのを見て安堵した。
「塔からの攻撃をほぼ阻止してくれた上に情報支援、これ以上無く助かってます。情報が無ければ短絡的に屋上のヘリポートに強襲して、我々は全滅してましたから」
……屋上のヘリポートには敵のヘリもいるけど、数機以上のパワードスーツやテロ兵が対空火器持って待機していたんだって。戦闘機で撃破ってのも人質いるから出来ないし。
陸上自衛隊第一空挺団、通称レンジャー部隊。
陸上自衛隊でも精鋭中の精鋭、ヘリボーンや非正規戦を得意とするお兄さん方。
ユウマくんがネットを回復させたおかげで、船橋市の習志野駐屯地はパニックから回復、反乱兵を撃破できて僕らに支援を送れるようになったそうだ。
また航空自衛隊も百里基地が復活、海上自衛隊も護衛艦を続々こちらに送ってくれている。
……潜水艦の存在は、既にユウマくんが知らせてくれているそう。そこも安心だね。
「ここから先は、自分達。第一空挺団に任せてください。貴方がたは……」
「いえ、僕らは直接最上階に向かい、敵のボスを叩きます。その隙に、皆さんは上層部までの制圧と地下の核爆弾の起爆解除をお願い致します」
僕はアーシャちゃんと機体越しに顔を見合わせ、ミハイルを倒しに行くと宣言した。
「そんな! 確かに貴方がたは、お強い。しかし、まだ未成年。子供を戦場に出すのは、我ら自衛隊の名折れです!」
「ふはあはは! マモル、お前らは何処までボクの気持ちを逆撫でするんだぁ! 自衛隊よ。もし、マモルが上に上がるのを邪魔したら、即時核爆弾を起動するぞ。マモル、そしてアーシャちゃん。二人だけで最上階に来なさい。それまでは爆破は待ってやろう!」
自衛隊のお兄さんが苦しそうな顔で僕とアーシャちゃんを制止するが、それを邪魔するようにミハイルは館内放送で僕たちだけを指定してきた。
「という事らしいので行ってきます。大丈夫、そう簡単には負けませんから」
「ええ、マモルくんとわたしは絶対に負けません!」
僕とアーシャちゃんはパワードスーツのコクピットを開けて顔を見合わせた後、自衛隊の方に笑顔で勝つと宣言した。
「ミハイル! お前は絶対にここで止める! 悲しい思い、苦しい思いをするのは僕らで最後にする。僕らは、オマエらみたいな人を人とも思わない奴らになんて絶対に負けはしない!」
◆ ◇ ◆ ◇
「おらおらおら。ウチ、もう怖くないでぇ!」
人を殺した事、殺されそうになった事で縮こまっていたウチ。
……コクピットの中で吐いてしもうたんは、ナイショやで。
マモルはんの啖呵で、すっかり振り切れた。
ウチは、続々と地下から湧き出てくる四脚無人ドローンを殲滅していく。
……そうや! もう、ウチらの後に殺し合いで悲しむ人なんて生み出させないんや!
「ちょ、リーちゃん。もう無理しなくても……」
「ダニー兄ちゃん。ウチはもう大丈夫や。ここでミハイルとやらを止めなんだら、多くの人が不幸になるんや。そしてウチは戦う力を持って、ココにおるんやで。それに怪我してはったおっちゃんらは、病院に送ってもろうて安心や。なら、手加減無しに暴れられるんや!」
ユウマはんの手引きで、ウチらんとこにも自衛隊の兄ちゃんらが来てくれて、命の危険があった海保のおっちゃんらを助けてくれはった。
また、ウチらを支援するためにパワードスーツまで二機も送ってくれた。
なら、後はウチが暴れるしかないんや。
「フォスター少尉。私達は、何をすれば宜しいのでしょうか?」
「と、とりあえず。今はリーちゃん、いや正木巡査の左右や背後から来る敵を排除で良いかと……」
自衛隊のパワードスーツを駆る兄ちゃんらが外部スピーカーを使いダニー兄ちゃんと話しているのが聞こえる。
どちらも困った感じの声だが、ウチの死角を守ってくれてるのなら一安心。
……兄ちゃん、後ろは頼むで! 自衛隊の兄ちゃんらは、後ろにいてくれはるだけで安心や。
「うぉぉぉ! 乙女、突撃やぁ!」
ウチは機体のサブアームに付けた盾を床スレスレにまで下げ、前に突撃する。
そして低い位置にあるドローンたちが機関銃を撃つのを盾で弾きながら、そいつらを除雪車のように吹き飛ばしていった。
「そんな豆鉄砲、ウチの盾は貫通せえへんでぇ」
吹き飛ばされた敵を脚部パイルを使って踏みつぶし。
少し離れたところまで飛んだ奴は、自衛隊さんに借りたライフルで撃ち倒す。
無人機相手にウチは、無双系のゲームをやる感じでどんどん殲滅していった。
「クソメスガキがぁ!」
ドローンの後ろから有人機、こいつはロシア製らしい機体が突っ込んでくる。
「闇バイトでテロリストになったアホやな。まったくいい大人が何やってんねん」
ウチは軽くツッコミ、敵の動きを見る。
……マモルはん、いつも言ってたな。戦場で平常心を保つのが大事やって。ウチ、もう暴走せーへんで。
敵は、大きなマシンガンを撃ってくる。
ウチは、左盾を射撃に対し斜めにして前に突撃する。
「く! 硬い。だが、そんな重い機体じゃ接近戦は出来まい。甘いぞ、クソメスガキが!」
ガンガンと弾が盾に弾かれていくので、敵は焦ってるみたい。
敵パワードスーツは腕の甲からナイフ、青く光るからたぶん高周波ナイフを出し、ウチに切り付けてくる。
「甘いんは、おっちゃんや。はいな!」
ウチは右盾を回転、シャベルの様にして敵機体の足元をすくった。
「ぎゃ!」
宙を舞う敵パワードスーツ。
「ほいや!」
ウチは、左盾もシャベル、というか爪付きの腕みたいにしてぶん殴った。
「トドメや、アホなおっさん! おらー!」
後は、ユウマはんに組んでもらった接近戦コマンドを起動。
ナックルガードを稼働させた両機械腕とシールドを使っての百裂パンチを、ふらつく敵に叩き込んだ。
「おらおらおら」
「や、やめ。やめてぇ!」
一撃一撃、敵機体の装甲が凹んでいく。
でも、今回は不殺モード。
コクピットは貫通しない程度に殴るのだ。
「アタタタタタ、あちょー! フィニーッシュ!」
「ぎゃぁぁぁ」
ドスンと床に転がる敵パワードスーツ。
機体の横腹から出ているオペレーター腕がぴくぴくしてるから、おそらく命に別状は無いと思う。
今度は敵をボロボロにしつつも、殺さずに無力化することにウチは成功した。
「ダニー兄ちゃん。ウチ、やったでぇ! あ、あかん。残心や」
おもわずガッツポーズをしてしまうウチ。
マモルはんに教わった残心を忘れてたから、急いで周囲をきょろきょろと警戒した。
「あ、ああ。俺、もうリーちゃん相手にふざけるのやめよう。うん、もう立派な乙女だからな……」
「少尉、わ、我々も同意です。金髪美少女、ばんざい!」
ダニー兄ちゃんや自衛隊の人達の声が震えているのはどうしてだろう?
ウチは不思議に思い、小首をかしげた。
「なんでや?」




