第42話(累計 第89話) 魔の塔攻略戦その五:塔内へ突入! 攻撃ヘリとの対決。
「皆の衆、ここからは敵地でござる。一瞬たりとも油断召さるなでござるよ?」
「了解。ユウマくん、周囲情報の提示をお願いね」
僕ら四機のパワードスーツ、そして海保SST部隊は無事、ネオバビロンシティ内に突入できた。
今、一階にあるショッピングモール玄関フロアーに待機、周囲を警戒中だ。
……非常灯以外は消えてるから、建物内は真っ暗。パワードスーツは赤外線視界に切り替えているんだ。特殊部隊の方も暗視装置付の多機能バイザーを装備してるね。
「ここから、僕が先行して上に行きます。アーシャちゃんは背後をお願い。リナさんと少尉は、別動隊をお願いします。では!」
「まかせてね、マモルくん」
「はいな!」
「マモル、気を付けろよ!」
僕は、動体センサーを含む頭部センサーを全開で稼働。
真っ暗なモール内を見回しながら、前にゆっくり進む。
背後には、警戒しつつも急ぎ足なSSTのお兄さん方。
更に最後尾では、アーシャちゃんが警戒をしてくれている。
「マモルくん、嫌な予感するの。上のフロアーに行くとき気を付けて」
「了解! では、このまま先行します」
スロープを昇り、どんどん上のフロアーに進む僕ら。
高くなるにつれ窓から見える景色が変わり、湾岸のビル群の灯りが見えてくる。
……夜景がきれいだよね。でも、今は集中しなきゃ……。ん? 今の気配は!
「敵襲! 壁の向こうに有人機含めて数機居る!」
僕は、センサーが反応する前に銃口をモールのショップ仕切り壁に向け、引き金を引いた。
「ぐあ! ど、どうして居るのが分かったかぁ。ち、ちきしょぉ! 無人機、いけぇ!」
簡単に崩れる合板の壁。
そこから倒れてくるステルスマントを被ったM3。
どうやら、裏切って『あの方』の手勢になった自衛隊員の様子。
彼の命令で機関銃を機体上部に装備した高さ一メートルくらいで蜘蛛型小型四足歩行機が、バタバタと沢山飛び出し、銃撃を開始した。
「くっ! 皆を守らなきゃ」
僕はマントを広げて小銃弾を弾きながら、特殊部隊の人達の盾になる。
そして銃撃と蹴りを繰り返して、足元の敵を倒していった。
「はぁはぁ。大丈夫ですか、皆さん?」
「あ、ああ。呼びかけが早かったので全員無事だ」
対応が早かったので、全員無事だったのは良かった。
僕は安心しながら、倒れているM3を転がして背部バッテリーを引き抜く。
うめき声が聞こえるから、中のオペレーターはまだ死んではないのだろう。
「マモルくん、凄いわ。わたしよりも早く、センサーが反応する前に分かるんだもの」
「無人機だけの待ち伏せだったら危なかったかもね。人の殺気は読める時もあるから」
……自分でも怖いなぁ。ステルスマント被ってて待機モードだったのに、分かったんだもん。
僕は、上手く対処出来た事で油断をしてしまった。
「じゃあ、先に行きま……! マモルくん、危ないの!」
僕はアーシャちゃんの大声で、油断して敵の接近を感知できなかった事に気が付き、後悔した。
「攻撃ヘリ、ここで来たのか!? 静音モード?」
窓の向こうから、サーチライトが薄暗いフロアーを照らす。
静音モードの攻撃ヘリは静かに迫る。
そのライト照射をする細長い機体は、機首下部に装備している三砲身ガトリング砲を僕たちに向ける。
そして無情な20ミリの弾丸の豪雨が、僕らを襲った。
「各自、緊急退避! 僕は、ヘリを引きつけます。アーシャちゃん、後はお願い!」
僕は、返事も待たずに動く。
無駄とは思いながらも12.7ミリライフルを、なおも銃撃を繰り返す戦闘ヘリに向かって撃つ。
そして、弾痕が僕に迫るのを感じながら高速機動を行った。
「おい、僕が相手だぁ!」
挑発するように外部スピーカーで問いかけながら逃げる僕。
ガラス扉を体当たりで吹き飛ばし、モールのベランダ―コートに飛び出る。
……これでも喰らえ!
僕はスーツ外部の装備ポケットからフラッシュバンを取り出し、攻撃ヘリの前に投げる。
ピカリと閃光が出たのと同時に、僕はベランダから空中に飛び出した。
「よいしょ!」
僕は、空中でパワードスーツの左機械腕からロケットアンカーを撃ちだす。
そしてアンカーは上手く攻撃ヘリの降着装置に絡まった。
「これで僕を狙えないだろ?」
ワイヤーに引っ張られ、がたんと衝撃が僕を襲う。
そして、僕の駆る機体は攻撃ヘリの下にぶら下がった形になった。
僕を見失ったヘリは慌てて機首を左右に振るが、ヘリの真下は完全に死角だ。
「思い知れ!」
最初の銃撃で何人か死んでるのが見えた。
全部、油断した僕が悪い。
……こいつは、必ずここで落とす!
頭上になる攻撃ヘリの小翼に吊り下げられたロケット弾ポッドとミサイル発射管を、僕は右機械腕のライフルで連射した。
「落ちろぉ!」
何発も銃撃を受けたロケット弾ポッドが爆発、攻撃ヘリは急にバランスを崩して墜落を開始した。
「ふ!」
僕は右機械腕のロケットアンカーをネオバビロンシティのベランダに向けて撃ちだす。
アンカーが引っかかったのを確認後、巻き取りながら左機械腕のアンカーを強制パージした。
「はぁ。多分、死んだんだろうなぁ……」
墜落して爆発する戦闘ヘリを見ながら、ビルにぶら下がる僕。
アーシャちゃんが心配して迎えに来るのを見上げ、ぶら下がっているワイヤーを巻き上げた。




