第41話(累計 第88話) 魔の塔攻略戦その四:悪魔城の罠。どう攻め落とす?
「あれから、随分と大人しいですね、敵は。ユウマくん、どう見るの?」
「おそらく、先程の敵は威力偵察でござる、マモル殿。無人機だけでは勝てぬと、戦闘ヘリや有人機も投入したでござるが、我らを攻め殺すには少なすぎでござったし」
僕たちは一度しか妨害も受けず、敵が住まう魔の巣窟、悪魔城「ネオバビロンシティ」にまで到着した。
今はシティからは死角になるビルの元で待機中。
既に海保の特殊部隊のお兄さん方は、装備をチェック。
建物内に突入する準備をしている。
「情報通りなら、残り一機は攻撃ヘリがいる。俺らを教わなくても、船を襲いに来ると大変だが……」
「少尉殿、そこは安心するでござるよ。輸送船の周囲は海保の巡視艇で守っているでござるし、海上自衛隊もようやく動き出したでござる。横須賀から何隻かこちらに向かっているでござる」
……僕がミハイルだったら、どうするかな? せっかくのヘリを使って既に僕らが出た船を襲っても、僕らが怒るだけ。だったら、ビル内に引き付けておいて、外から攻撃ってのが効果あり。もしくは、今から特殊部隊を攻撃するかだけど?
「各員、よく聞け! 都内、各所において反乱軍の制圧に成功。飛行船は危険もあり放棄状態だが、通信体制も復旧しつつある。敵の居城を制圧すれば、俺達の勝ちだ。ただ、残念ながら前もって潜入した部隊の壊滅が確認された」
僕らの前に埋立地へ侵入した警察・自衛隊の混成部隊。
戦闘ヘリやバトルスーツ部隊の攻撃に会い、全滅をしていた。
僕らは、埋立地を移動中に煙を上げる戦闘跡を確認。
残念ながら、そこで生存者は発見できなかった。
……ミハイル、絶対に許さないぞ!
教導時にお世話したりお世話になった警察隊のお兄さん方。
弾痕だらけになった機体と彼らの顔を思い出し、僕はギリと奥歯を噛みしめた。
「これより塔内に侵入するが、民間人が人質になっている可能性も考慮せよ。なお内部にある核爆弾ではあるが、詳細はユウマから説明してもらう」
「では、説明するでござる。核爆弾でござるが、正確には兵器な爆弾ではござらん。設置されているのはロシア設計の小型モジュール原子炉でござるが、燃料にウラン235ではなくプルトニウム239を使用。更に最近塔内に納入されたものに科学研究用の水素化リチウムがあるでござるが、これが重水素化物なのでござった。また、基部重心安定用のアンカーに劣化ウランが大量に使用されていたでござる」
「ウチ、難しい事分からんけど、どういうことなん?」
「重水素、プルトニウム、劣化ウラン……あれ? まさか!?」
「マモル……。ええ、それは危険な組み合わせね」
ユウマくんの説明では何も変わらず、ちんぷんかんぷんなリナさん。
しかし、僕は3つの組み合わせを何処かで聞いたことがあるのを思い出し、ソフィアさんが肯定してくれた。
「ユウマ。俺にもちゃんと説明しろ、それは何を意味する?」
「係長殿。敵は手製で水爆、それも3F、強化水素爆弾を作ったでござるよ!」
ユウマくんの説明で、僕ら達だけでなく海保のお兄さん方も驚愕する。
「最初の爆発的核分裂をどうするかは不明でござるが、そこで超高熱・高圧を作り出して重水素を核融合、そこから出た高速中性子で劣化ウラン、ウラン238を核分裂させるでござる。これが爆発すれば、都内は死の街になるでござろう……」
プルトニウムの起爆には爆縮レンズという特殊な火薬が必要だが、潜水艦すら手に入れている『あの方』なら入手も不可能ではない。
……北の半島独裁国家でも開発できてるくらいだものね。
「小型モジュール炉でござるが、設計図によれば地下四階、最下層にあるでござる。そこを制圧し、起爆を阻止する組。最上階にいるであろう敵首魁の確保を行う組、二手に分かれる必要があるでござろう」
「……ということだ。ちょうど先程、二組に分けていたが、そのままで行く。ダニエルくん、リナくんと共に下層の制圧及び核爆弾処理を頼むぞ。マモル、アリサくんは、上を攻めてくれ。海保は、そちらの指揮者の指示に任す。生身だから、くれぐれも無理はしないでくれ」
「了解です。では、先行して僕とアーシャちゃんが先に出ます。ヘリが出たらリナさん、お願いします。海保の方はゆっくりでいいので、お気をつけて」
「マモルくん、背中は任せてね」
父さんからの命令を受け、僕らは行動を開始した。
「ミッション・スタート!」
僕とアーシャちゃんはステルスマントをなびかせつつ、ビルの陰から飛び出す。
路面に金属ローラーの後を付けながら、火花と共に疾走する僕ら。
そのうち、魔の塔から散発的に攻撃が開始された。
「ほいほいっと。リナさん、支援お願いね」
「はいな!」
ポンポンとビルの陰から、リナさんの機体がグレネードを撃ちだす。
また、少尉は25ミリチェーンガンを使って、遠距離狙撃をしてくれる。
グレネードや砲弾は僕らに射撃を行っているらしき部分に着弾、ドカンという音と爆炎を出して攻撃が沈黙していく。
「このままヘリが出てこなきゃね。とりあえず、砲台を全部潰すよ、アーシャちゃん!」
「うん、マモルくん」
僕らは激しい機動で攻撃を避けつつ、応射。
リナさんや少尉からの支援で、敵砲台を各個撃破していった。