第40話(累計 第87話) 魔の塔攻略戦その三:ヘリ撃破! このまま揚陸戦へ。
「いっけぇ!」
皆が乗る輸送船に機首を向けた攻撃ヘリに向けて、僕はロケットアンカーを二発胸部から撃った。
それは上手く、ぐるんとヘリのテール・ブーム部分に巻きつく。
「どっせーい!」
僕はワイヤーを巻き取りながら、無人機からの攻撃を避けつつ攻撃ヘリを引っ張った。
バシュンと、ヘリ横の小翼下に装備したランチャーから無誘導ロケット弾が一気に飛び出す。
しかし、僕が機体を無理やり引きずり降ろしたから、ロケット弾は船を逸れた。
「このままぁ!」
僕は無人機の射撃をかわしつつ、攻撃ヘリのテールローターを五十口径ライフルで狙い撃つ。
ガンガンと火花をだしてテール部分に着弾。
無理やりワイヤーで引っ張っていたからか、ワイヤーが巻きついたテール部分からヘリが真っ二つに折れた。
「やったか?」
僕は思わず、「お約束のフラグ」をつぶやいてしまった。
が、くるくる回るヘリは港湾クレーンにぶつかった後、海面に落ちて行った。
……ミサイル当たるよりは、パイロットが死ぬ可能性は低いけど……。でも、今はそれより戦わなきゃ!
僕は人を殺したかもしれない事を一旦忘れて、港中に溢れる無人機と戦った。
◆ ◇ ◆ ◇
「動体反応、無し。赤外線センサー及びレーダーにも感無し。周囲五百メートルの安全を確認したでござる。各員、補給に充電をするでござるよ。その間に海保船舶は周囲警戒を。SSTの方々は、上陸準備をお願いするでござる」
埋立地西側、コンテナ受け入れ港は、無人機が死屍累々と転がる。
ユウマくんの報告通り、見える範囲に敵は居ない。
「マモルはん、すっごいなぁ。攻撃ヘリに無人機、殆ど一人で撃破やもん。スーパーエースや!」
「いやいや。リナさんや少尉、それにアーシャちゃんが支援をしてくれたおかげだよ」
一端、船に戻った僕ら。
ソフィアさんや正木さん、そして海保の方々に手伝ってもらい、砲弾やスラスター推進剤の補給、そして稼働バッテリーの充電をしている。
……推進剤は亜酸化窒素とアセチレンを混ぜた一液型なんだ。
「マモルに吉報だ。撃墜したヘリだが海保でパイロットを二名、生かしたまま確保できたとの事。ただ、これからの敵を殺さずに倒せるとは限らん。自分と仲間の命を大事にするのが優先だぞ?」
「はい、係長!」
「今くらいは父さん呼びで良いぞ、マモル? 俺は、父親として情けない。マモルみたいに戦う力も無く、背後から声かけしか出来んからな。それはアリサちゃんやリナくん、ダニエルくんにも同じ。ダメな大人だよな」
半分泣きそうな声の父さん。
僕らを戦わせなきゃならない現状に悲しんでいるのだろう。
「父さん。僕は、もう迷わないからね。皆を守って戦うよ」
「お義父様、マモル君の事はわたしに任せてください。絶対に皆で帰ってきますから」
僕の覚悟、まだ甘いかもしれないけれど、戦うのはもう怖くない。
背中を守ってくれるアーシャちゃんと共に、絶対生き残る。
「おっちゃん、泣いたらあかんで。ウチらが全員無事に帰ってきてから泣くんやで」
「俺に任せておけ。かなり修行したらから、もうマモルには負けないぞ?」
リナさんや少尉さんも笑いながら、皆を鼓舞してくれる。
実にありがたい話だ。
「ああ。後始末は全部、俺に任せろ。さあ準備出来次第、出陣だ!」
「了解!」
◆ ◇ ◆ ◇
「このまま前に進むでござる。まもなくタワーが見えてくるはずでござるよ」
先頭をダニエル少尉、次を僕。
中間に海保の特殊部隊輸送トラック。
後方をリナさんとアーシャちゃん。
こんなフォーメーションで敵地を進行する僕ら。
……ユウマ君達は船から支援。敵から乗っ取ったレーザー通信ドローンを使って情報提供してくれているんだ。
「警告! 攻撃ヘリが接近中。リナ殿、攻撃を!」
「はいな、ユウマはん!」
リナさんの機体から、先手でSAMが撃ちだされ着弾。
遠くで爆炎が発生したのち、エンジンが止まった機体がゆっくり落ちてゆくのが見える。
「あら? ヘリって案外と丈夫なのね? ミサイル喰らってもバラバラにならないんだもの」
「ヘリって撃たれ弱いと言っても、それなりには装甲あるものね」
……今は敵兵の心配なんてするな! 僕の仕事は敵の排除だ。
僕は深呼吸をしながら、周囲を警戒する。
ここは敵地、いつ襲われるか分からないからだ。
「前方よりパワードスーツ、ドローン多数接近。有人機もいるでござる。各々がた、油断するでないでござるよ」
「了解! 僕が前に出ます。みんな、支援宜しく。少尉はトラックの護衛を」
「ウチ、先に撃つで!」
リナさんの機体からポンポンとグレネードが発射され、敵陣の真ん中で爆発的する。
僕は脚部ローラーの回転速度を一気にあげて、リナさんの攻撃で混乱状態になった敵機の真っただ中に突撃した。
「おらぁ!」
パワードスーツが纏っているマントの端を弾丸が貫く。
しかし、そこには僕はおらず敵機に接近、容赦なく至近距離から撃ち倒した。
「もいっちょ!」
高速機動しながら、両腕のロケットアンカーを射出。
どちらも敵パワードスーツに着弾したのを確認後、巻き取りながら両の機械腕を一気に振り回す。
「このまま、残りも!」
ワイヤーに引きずられて、モーニングスターの様に振り回される敵機。
僕は機体のパワーに任せて振り回す。
アンカー先の敵機を鈍器にして、ドカドカと敵を薙ぎ払った。
「バケモノめぇ!」
怯えた動きの有人機から声がするが、手加減なんてしてやらない。
ワイヤーを回収後、ジグザグ機動をして射撃を避ける。
その間にも、仲間達の支援攻撃で僕を襲おうとする無人機らは撃破されていく。
「ふん!」
「ぐわぁぁ」
間合いゼロまで一気に踏み込んで、コクピット部分に渾身の掌底を叩き込む。
脱力した敵機のべっこり凹んだ腹部装甲を横目に、僕は次のターゲットへ飛び掛かった。




